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#魔道具職人
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第25話: 【育成】バズる能力、成長限界突破【ステータス】
朝から、村の通知が鳴っていた。
ぴこん。
ぴこん。
ぴこん。
ナギはスマホを見た。
バズる能力
投稿傾向
能力成長
拡散加速
制御不安定
ナギは顔をしかめた。
「能力そのものが成長するって、まずいだろ」
ロッカが短く言う。
「止める」
サヨは端末を見ていた。
「コメント欄も期待しています。強くなるところを見たい、という流れです」
レンヤが静かに言った。
「強くなることだけを求めると、本人が追いつかなくなります」
その時、受付場に光が落ちた。
黄色の上着。
通知型の腕輪。
茶色の髪。
落ちてきた青年は、立ち上がる前に腕輪を見た。
「通知、もう来てる……やばい、伸びてる」
ナギが近づく。
「名前は?」
青年は顔を上げた。
「拡散ハルです。バズ検証とか、伸びた投稿の分析とか、流行りに乗る動画を作ってました」
スマホが震えた。
能力名
バズブースト
効果
注目が集まるほど、能力が成長する。
派生
効果範囲拡大
速度上昇
自動強化
注意
本人の制御を超える場合があります。
ロッカが即座に言った。
「使うな」
ハルは苦笑した。
「もう、使わなくても始まってます」
腕輪が光った。
コメント欄が流れる。
見たい。
伸びそう。
強くなれ。
もっと派手に。
村を守って。
ハルの足元から、光の輪が広がった。
受付場の札が大きくなる。
矢印が増える。
案内線が勝手に伸びる。
ハヤテが目を輝かせた。
「案内ルートが自動で」
ロッカが叫ぶ。
「喜ぶな。勝手に伸びている」
カイが壁を押さえる。
「建物まで広がる」
ミチルが棚を見た。
「収納も増えています。でも置き場所が追いつきません」
ミレナは震える手で記録する。
「能力成長、周囲へ連鎖」
ハルは腕輪を押さえた。
「止まれ、止まれ……!」
けれど、光は止まらなかった。
ナギはスマホを握る。
「お題! バズった能力が、勝手に成長する前に必要だったものとは!」
答える。
「伸びる前に、本人の許可を確認する画面!」
ハルの前に小さな表示が出た。
成長しますか?
はい
あとで
今日は休む
ハルは迷わず押した。
今日は休む。
光の輪が小さくなった。
コメント欄が揺れる。
休むの?
見たかった。
でも大事。
本人の許可、大事。
無理しないで。
サヨが拾う。
本人の許可、大事。
無理しないで。
腕輪の光が落ち着いた。
ハルは膝に手をつき、息を吐いた。
「助かった……」
ロッカが言う。
「勝手に強くなる力は危険だ」
ハルはうなずいた。
「分かってます。でも、伸びると止めにくいんです。見てる人が増えるほど、自分でも止めたら悪い気がしてくる」
レンヤが静かに言った。
「その気持ちは分かります」
ハルはレンヤを見た。
「登録者1000万人の人に言われると重いですね」
レンヤは少し笑った。
「重いから、軽く持つ練習をしています」
午後。
村では、バズブーストを小さく試すことになった。
目的は、壊れた水くみ場の修理。
派手な技ではない。
村の暮らしに必要な作業。
ハルが手をかざす。
カイが柱を直す。
ミチルが道具を分ける。
ツクルが注意札を立てる。
トオルが危険度を見る。
サヨがコメント欄を整える。
ハルの能力は、ほんの少しだけ成長した。
柱の補修が早くなる。
道具が見つけやすくなる。
作業する人の手元が明るくなる。
ロッカがうなずいた。
「この程度ならいい」
ハルは笑った。
「小バズですね」
ナギは首をかしげる。
「小バズ」
ハルは腕輪を見た。
「大きく伸ばさなくても、届く人に届けばいいんです」
ミレナが帳面に書いた。
「能力成長は、大きさではなく適切さで見る」
その時、森の方で警告音が鳴った。
ゴブすけが門で声を上げる。
教官車が、ぴ、と鳴る。
小型魔物の群れが、村の外で暴れていた。
原因は、さっき伸びた案内線だった。
森の方まで光が届き、魔物達が驚いたのだ。
ハルの顔が曇る。
「僕のせいだ」
こよりが首を横に振る。
「今から落ち着かせよう」
ナギは前へ出た。
「お題! バズって伸びすぎた案内線が、魔物達を驚かせずに済んだ理由とは!」
答える。
「伸びる先に、必ず『ここまで』の札がついた!」
光の案内線の先に、札が現れた。
ここまで。
この先は森。
入らない。
驚かせない。
線の光がやわらかくなった。
こよりが魔物達へ声をかける。
リクが小さな音を鳴らす。
マヒロが短い歌を重ねる。
サヨがコメント欄を抑える。
ハルは腕輪を見て、深く息を吸った。
「成長停止。範囲縮小。目的、魔物を落ち着かせる」
光は小さくなった。
魔物達は少しずつ座った。
ゴブすけも胸を撫で下ろした。
ロッカはハルを見た。
「今の判断はよかった」
ハルは目を丸くした。
「褒められた?」
桶が言った。
「褒められてえらい!」
小桶も言った。
「止められてえらい!」
夕方。
広場に新しい札が立った。
バズる能力のルール。
伸びる前に本人の許可。
目的を決める。
範囲を決める。
やめるボタンを残す。
大きくするより、ちょうどよく使う。
ハルはその札を見て、小さく笑った。
「これ、現実でも欲しかった」
レンヤがうなずく。
「本当に」
サヨはコメント欄を見る。
流れは落ち着いていた。
大きくなくていい。
小バズいいね。
本人の許可、大事。
今日は休むボタンほしい。
村が少し便利になっただけで十分。
ナギは画面を見て、少し安心した。
夜。
転生タイムラインが開いた。
【バズる能力】
映像には、ハルの能力が勝手に成長しかける場面。
ナギの大喜利で許可画面が出る場面。
水くみ場を小さく直す場面。
伸びすぎた案内線に、ここまでの札をつける場面が映っていた。
コメント欄は、ゆっくり流れていた。
ハル、無理しないで。
伸びなくても見てる。
村の小さい改善好き。
ナギの今日は休む、助かった。
ロッカの判断いい。
桶と小桶、今日もえらい。
ハルは画面を見て、腕輪を外すように触れた。
「伸びてないと、不安だったんです」
ナギは隣に座った。
「今は?」
ハルは水くみ場を見た。
村人が、前より少し楽に水を運んでいる。
子ども達が、こぼさず歩けている。
誰も大騒ぎしていない。
でも、ちゃんと助かっている。
ハルは小さく笑った。
「これでも、届いてますね」
ナギはうなずいた。
スマホが震えた。
次の転生者を準備中。
投稿傾向
転生ランキング
救った人数
評価と順位
ナギは画面を見て、眉を下げた。
「次、ランキングか」
レンヤの顔が少し曇る。
「数字の話ですね」
ハルも腕輪を握った。
「順位は、荒れます」
サヨが端末を構える。
「コメント欄管理、強めにします」
ロッカが短く言う。
「人を順位で測るな」
ミレナが静かに帳面を閉じた。
「それを記録する回になりそうね」
桶が言った。
「順位がなくてもえらい!」
小桶も言った。
「助けた気持ちだけでもえらい!」
ナギは夜の村を見た。
バズること。
伸びること。
大きくなること。
それは力になる。
でも、大きくなるほど、端が見えなくなる。
誰を驚かせているのか。
何を踏んでいるのか。
本人が望んでいるのか。
だから、ここまでの札がいる。
今日は休むボタンがいる。
目的がいる。
ナギはスマホをしまった。
「明日は、数字と戦うのか」
ロッカが言った。
「数字ではなく、数字を見る人間とだ」
ナギは少し笑った。
「それ、難しいな」
桶が言った。
「難しくてもえらい!」
小桶も続いた。
「休んでから考えてえらい!」
夜風が、バズる能力のルール札を揺らした。
転生タイムラインは、次の順位を準備していた。
コメント
1件
第27話、めっちゃ良かった!「バズる能力」って現代っぽくて興味深いテーマだし、「成長=良いこと」じゃないって視点が刺さったわ。特にナギの大喜利で「本人の許可画面」を引き出した場面、あれ最高。拡散ハルが「伸びてないと不安」って言うシーン、めっちゃ分かる…。無理に伸ばさなくても、ちゃんと届く場所に届いてるって描写がじんわり来た。次回はランキング編か。数字とどう向き合うのか、楽しみにしてる🔥