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第1話『赤い文字の警告』
その日、二十歳になった俺たちは、町外れの古びた学校へと再び集められた。
木造校舎の残り香だけが漂う体育館跡地。
その真ん中には、卒業前に自分達で埋めた「タイムカプセル」が、無機質な工事ライトに照らされてポツンと置かれていた。
五年前ー15歳のあの日
俺たちは笑いながら、未来への手紙や写真をカプセルへ放り込み
担任に見送られながら土の中へ埋めた。
明るくて、少し恥ずかしい未来への贈り物
贈り物になるはずだった。
しかし、
「なんだよ…これ?」
タイムカプセルを開けた瞬間、場の空気が凍った。
中には俺たちの手紙も、写真も、記念品も 何一つ入ってなかった。
代わりに入ってたのは――ただ一枚の白い紙
真っ赤なインクで荒々しい筆跡の跡。
『思い出せ。お前らの罪を』 と
紙を取り囲む元三年二組の面々は、誰も口を開けない。
目を伏せるもの 突然顔色を失うもの 無理な笑顔を作るもの
反応は様々なのに、共通しているのは沈黙だった。
「誰の悪戯?にしては悪質すぎない?」
そう呟いたのは、女子の中で一番明るかったはずの 一ノ瀬 七海
その声は震えていた。
そのとき元担任の佐伯先生が慌てて場を収めようとする
「み、みんな。これはきっと誰かの…悪ふざけだよ。そ、そろそろ片付けを」
だが、誰も動かなかった。
佐伯先生の声が上擦っているのが気になった。
ーいや、怯えているように見えた
沈黙の中、パキン、と木が割れるような音が鳴った。
驚いて振り返ると、ただただ廃校寸前の校舎がポツンと佇んでいた
嫌な予感がした。
誰も口にしないけれど、あの文字は確かに俺たちの中の誰かに突き刺さっていた。
ーそれから数か月後。
最初の事故が起きた
亡くなったのは、当時クラスでまとめ役だった
上原 昂輝
温厚で、リーダ気質で、誰からも頼られていた
ニュースでは階段からの転落死と報じられ、ただの不運に見えた。
その2日後上原 昂輝の葬儀がとり行われた。
だが、葬式の会場は元クラスメイトが死に悲しんでいるような場面では無かった。
参列する元三年二組のメンバーは
皆どこか怯え互いの顔色を伺っている そんな感じがした。
目を合わせようとしない者
落ち行き無くスマホを弄る者
涙一つ流さない者
まるで、何かを思い出したくないかのように。
そして、葬儀場の一角では、見知らぬ刑事がじっと俺たちの様子を観察していた。
鋭い視線
まるで俺たちの何かを知っているようなそんな目
刑事の胸元には名札には「黒瀬」と記されていた。
「…何か隠してるんですか?」
葬儀のあと、黒瀬刑事が俺たちに歩み寄る
周囲の空気が一瞬で張り詰めた
「な、なにを言って」
「いやね、あんたたちはクラスメイトが亡くなった
というのに
涙一つ流さないもんだから」
「あんたらの場の空気 表情。
まるでなにかを隠しているような気がしてね」
誰もなにも答えない
見透かされた気がして
「上原くんの死…とても偶然とは思えない」
心臓が一瞬だけ止まった気がした。
「教えてください。
──3年2組に、何があった?」
その言葉は、鋭い刃物のように胸へ突き刺さる。
けれど、俺たちは誰一人として答えようとしなかった。
答えられなかった。
五年前の“あの日”を思い出すだけで、胸がざわつく。
黒瀬刑事は言った。
「……あなたたちは、誰かを追い詰めたんじゃないんですか?」
その瞬間、七海が小さく息を飲む音が聞こえた。
やめてくれ。
その言葉は、思い出したくない記憶を掘り起こす。
けれど──
“赤い文字”
“不可解な死”
“怯えるクラスメイトたち”
すべてが一つの答えへ向かって、静かに繋がり始めていた。
五年前、3年2組は“誰か”を追い詰めた。
──その誰かが、帰ってきたのだ。
俺の背中を、冷たい汗がスーッと流れ落ちた。