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静香さんと暮らし始めて、早いこと3週間。
私は、何事もなく平穏な毎日を過ごしている。といっても、大学のレポートやらバイトやらで毎日が忙しい。
そんな私の癒しといえば、たまの休みと毎日の夕食だった。
静香さんは毎日欠かさずに夕食を作ってくれ、それを、必ず私と一緒に食べてくれる。 静香さん自身、一人で食べるのが寂しいという理由から。勿論それもあるけれど、私も一人では食べたくなかったので、どんなに遅くなっても静香さんが待っていてくれる事がとても嬉しかった。
静香さんの優しさが嬉しかった私は、待たせてはいけないと、友達と遊びに出掛けても必ず夕食前には帰宅するようにしていた。
(静香さんみたいな人が、彼氏だったら良かったのにな……)
そんな風に思ってしまう程に、私の中で静香さんの存在は大きくなっていた。
(静香さんて、恋人とか……いないのかな?)
3週間共に過ごしている内に、ふと疑問に思った事。私の見た限りでは、仕事へ行く以外毎日自宅にいる静香さん。
とはいえ、朝は私の方が早く家を出て帰りは私の方が遅いので、実際には家にいる静香さんしか私は知らなかった。
こんなに綺麗で優しい静香さん。恋人の1人や2人、いてもおかしくはない。
「静香さんて……。彼氏さんとか、いないんですか?」
食洗機に食器を入れながら、近くにいる静香さんにそう訊ねてみる。
「ん〜……。男の人は、好きじゃないかな」
「……え?」
その予想外の返事に、私はピタリとその場で動きを止めた。
(それって、つまり……。女性が好きってこと……?)
チラリと様子を伺うようにして静香さんの方へと視線を送ると、私を見つめていた静香さんと視線が絡まる。
「だって……。女の子の方が、プニプニしていて美味しそうでしょ?」
そう言った静香さんの表情はとても妖艶で、ドキリと鼓動を跳ねさせた私は手元を滑らせた。
——パリーン!
私の手から滑り落ちた食器が、床にあたって砕ける。
「っ……す、すみません!」
勢いよくその場に腰を下ろすと、砕けた食器を拾おうと欠片に手を伸ばす。
「っ……!」
ピリッとした痛みを指先に感じた——次の瞬間。
指先に薄っすらと滲《にじ》んだ真っ赤な液体。それは見る見るうちに濃さを増し、ついにその重さに耐えきれなくなると私の指先からポタリと床へと落ちた。
「——真紀ちゃん!」
焦った声音を上げる静香さんは、私の隣に腰を下ろすと傷付いた私の指を掴んで自分の口の中へと入れた。
———!?
驚いた私は、反射的にその手を引っ込める。そんな私の手をグッと引き戻すと、再び口に含んでピチャピチャと舐め始めた静香さん。
私は、そんな静香さんの姿から視線を逸らすことができなかった。
「真紀ちゃん……っ、真紀ちゃん」
そう何度も呟きながら、ピチャピチャと指を舐め続ける静香さん。
その姿は、やけに綺麗で色っぽくて——そして、何故かとても恐ろしかった。
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