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28話 ダンジョンの掃除
薄暗い通路に
ふっくらの足音がひびく
丸い体
短い脚
ゆっくり揺れながら進む
手には
小さな布
後ろから
琶がついてくる
大きな体
長い首
重なった鱗
畳まれた翼は動かず
尾が
床をかすかになでる
ふっくらは
まず埃を取る
天井のすみ
壁の割れ目
石の段差
布が
すぐに真っ灰になる
「……ここ、ぜったい誰も来てない」
ふっくらの声は小さい
琶は答えず
通路の奥を見ている
影が長くのび
空気が少し冷たい
ふっくらは
通路を拭き始める
ごしごし
ごしごし
丸い体が前後に揺れて
腹が地面でふよっと動く
足元には
古い石の模様
誰が作ったか
わからないまま
ひびだけが増えていく
琶は
ゆっくり歩きながら
散らばった石片を
端へよせる
爪は大きいのに
動きは静か
ふっくらは
息をつく
「……ここって、ほんとに
ダンジョンとして成立してる…?」
琶は
首をわずかに傾けるだけ
通路を拭ききっても
誰も来ない
何も起きない
ふっくらは
布を置き
丸い体を伸ばす
静かな空気が
そのまま沈む
琶は通路を見渡し
小さくうなずく
掃除は終わった
来るはずの誰かは
今日も
来なかった