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重怠い身体を起こし、瑠衣が周りを見渡すと、ワークキャップを被った見張り役の男が微動だにせず、鷹揚に脚を組みながらスマホを触っている。
彼女が起きた事に気付いたようで、男は立ち上がり、一度部屋から退出した後、バスタオルのようなものを手にして戻ってきた。
ゆっくりとした足取りで瑠衣に近付く。
「…………」
男は左手に巻かれた縄を解くと、バスタオルを瑠衣に手渡し、黙ったまま顔をフイっと上げる。
『立て』と言っているのだろうと思った瑠衣は、男から手渡されたそれを身体に巻きつけ、徐に立ち上がると、秘部に膨大な異物が埋め込まれているように感じ、上手く立てずにフラッとよろけた。
背後から瑠衣の身体を支えた後、彼女の手首を掴み部屋を出ると、シャワールームへと連れて行かされた。
ガラス戸の前で男が立ち止まり、先ほどと同じように顔を上げてシャワールームを指すと、男は脱衣所から退出する。
瑠衣はドアを開けてシャワーの蛇口を全開にして捻ると、頭と穢れ切った身体を洗い始めた。
中に指を入れ、白濁を掻き出してみるが出てくるはずもない。
(それにしても……一体誰がこんな事を……)
先ほど見せられた闇バイトの広告を思い出した瑠衣は、恐怖で背中が泡立った。
自分の無知と無防備な状態に情けなくなって呆れてしまう。
瑠衣はボディソープをたっぷり使い、汚されまくった身体をゴシゴシと洗う。
(こんなに洗っても……心と身体に染み付いた汚れなんて落ちはしないのに……)
不意に侑の事を思い出し、堪らずポツリと呟いた。
「きょ……うの…………せんせ……い……」
侑の声が聞きたい。侑の温もりに包まれたい。あの筋張った長い指先で頭を撫でられながら、髪に触れられたい……。
だけど彼は、かつての恋人が他の男を部屋に連れ込んでセックスしているのを目の当たりにした時、即別れを告げた人だ。
(この状況を先生に正直に話したら…………私も……即捨てられるに違いない……)
シャワーに打たれながら考えていると、涙が溢れて止まらない。
早くここから抜け出したい気持ちばかりが募っていく。
しかし、スマホの電源は黒いバンに押し込まれてからすぐに電源を切られ、貴重品は没収されている上に監視されている状況。
全てを絶望したように、瑠衣は虚ろな表情を浮かべながらシャワールームを出た。