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平然と人々を殺める僕を、ある組織が捜しているなんて、まったく知らなかった。
以前は誰にも見つからないように、悪人だけ殺していた僕が、殺人鬼に変貌してからは、人目を気にせずに手をかけていたので、組織としては見つけやすかったに違いない。
組織から放たれた刺客は殺気を完璧に消して、僕の背後に近づき、いとも簡単に拉致して、組織の根城に連れ去った。
寒々とした空間の中、目隠しされた状態で、椅子に括りつけられた僕。周囲を取り囲むように、人の気配がたくさんある。当然だが、赤い石のチョーカーも取りあげられた。武器のない丸腰で、いつ殺されるかわからず、不安が体を支配しているせいで、ガクガク震えてしまう。
「こっ、ここはどこですか?」
人の気配がありすぎて、どこに向かって喋ったらいいのかわからず、首を動かしながら話しかけた。
「君はどうして、たくさんの人を殺してるの?」
男性にしては、やけに高い声質だった。正面から聞こえてきたそれに反応し、顔をしっかり向ける。
「この世の中に、心底絶望しているからさ。病院にもかかれない貧乏人を殺したところで、悲しむヤツらはいないだろう?」
虚勢を張るために笑いながら答えると、周囲から大きなため息が漏れ聞こえた。
「あー、それわかるな。私も今現在の国々の情勢については、とても絶望しているよ。力のないものは、自動的に淘汰されていくしね」
「国々の情勢?」
「私たちの組織は依頼人に頼まれたら、国をまたいで仕事をしているからね。あちこち飛び回ってる関係で、嫌でもその国の情勢を知ることになる」
「私たちの組織とは?」
僕の周りを取り囲む人の気配で、かなりの人数がここにいるのがわかるのだが、誰も物音をたてずにその場にいるせいで、ハッキリした人数の把握ができない。組織と言っているんだから、それなりの人数がいるだろう。
「依頼された人物を確実に抹殺する、殺し屋集団とでも言っておこうか」
「そんな殺し屋集団が僕を捕らえて、どうしようというのです?」
殺し屋集団というセリフで、背中に嫌な汗が伝う。どうあがいたって、逃げられる気がしない。
「今言ったろう? 依頼された人物を、絶対に殺さなきゃいけないって。これが結構大変なんだ。計画通りにいかないのが常だから」
「…………」
(計画通りにいかないのは、理解できる。悪人に狙いを定めて手をかけようとしたら、かなりの確率で邪魔が入ったっけ)
「君が貧乏人を殺すところを、影から見させてもらった。この赤い石は、君の言うことしかきかないこともわかってる。ウチのメンバーに持たせて使ってみたけど、さっぱりだったからねぇ」
「……だから、なんだって言うんですか?」
僕を組織に取り込もうとしているのがわかったが、交渉の仕方が普通じゃない。
「君がこの石を見るように、相手に言ったとき、君の目が赤い色に光ると、この石が反応して光り輝き、目の前の人物の命を奪ってるんだ」
「自分の目が光ってるなんて、全然知りませんでした」
己の顔を見ることなんて、鏡やガラスでもない限り、無理な話だった。