テラーノベル
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「ねぇ〜話しかけてきなって!(笑)」
「ムリムリ! お前が行けって」
「ええ?! 絶対イヤだ(笑)」
くすくすと笑い声が聞こえる教室。聞いた感じで言うならば、いい笑みではない。 その笑みが誰に向けられているかなんて、自分にはよく分かりきっている。
教室の端で分厚い小説を読む自分───クロノアに向けられているのだ。
「はぁ……」
誰にも聞こえないような小さなため息を出してから、椅子から立ち上がる。
くすくすと笑う彼らの声が、足を進めるたびに小さくなるのを聞きながら。
……………
「……」
ピ、と音を鳴らしながら落下するおつりの音が激しく聞こえる。静かな校舎裏には人気がなく、自分1人だけで少し清々しい。
頬を掠める風は心地よい。
「……ふぅ」
背中を伸ばしてから、息を一つついてベンチに座った。手の中に収められているのはあたたかなココアだ。
プルタブを勢いよく開け───
「…………」
いき、おいよく………開けて………!!!
「ぐぬぬ……」
指が痛い!!!!プルタブ!!指が痛くなる!!!
いつも悪戦苦闘をするこのココア缶との決着は未だにつかない。一応高校三年生をやっているが、1年から勝てたことはない。0勝690敗中で、一回でプルタブを開けるという偉業をこなせない自分の握力に呆れる。
「ぐはあ……!」
考えると項垂れてくる。1人だからこそこの姿を見られないからいいのだが、クラスでは絶対こんなにリラックス状態ではいられないだろう。
「───開けましょうか?」
「!!!」
ふと聞こえた声に、慌てて体勢を直す。声の聞こえた方向に視線を向ければ、そこにいたのは背の低い男の子だった。
どうやら後輩らしく、名札には”1年C組 しにがみ”とかかれている。
「えっと、じゃあ、お言葉に甘えて……」
どもりながらも相手にココア缶を差し出すと、相手は受け取ってすぐにカコッ、とプルタブを開けた。
「はい、どうぞ」
「……」
空いた口が塞がらないとはこういうことなのか。まさかプルタブを1発で開けれる人をこの目で見られるなんて。
「……あのー?」
呆れた顔に、困惑した顔。相手はまさに困ったような顔をしており、それに気づいた自分はすぐさま立ち上がり、ココア缶だけを奪うように取る。
「───ありがとう。凄いね、握力強くて!」
「え、あ、は、はあ……。あ、ありがとうございます……??」
自身はすぐに立ち去り、相手は固まったまま困惑していた。側から見たら、会話とも呼べない謎の交流だっただろう。
ただ、心臓がバクバクと鳴り響いていたからこそ冷静な目でこの状況を見れなかったのだ。今更だが、相手に申し訳ないとは思っている。
これもまた今更の話になるが……今まで校舎裏に来なかった彼は何なのだろう。あと2ヶ月ほどしてしまえば、進級するだろうに。
「───何か悩み事でもあったのかなあ」
先輩として、それは聞いておきたかったかもしれない。何か助言ができたかもしれない。それでいて仲良くなれたら、プルタブの開け方だってわかったのに。
…………あの子はプルタブに何勝したんd───違うよね!!知ってる!!そういう話じゃなくて…。
「……難しいな」
『 』と同様、それはすごく難しい。
また会えることを願ったばかりの今日、まさか明日すぐに会えるなんて思いもしなかっただろう。
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