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公園内には四阿があり、疲れきった表情で、優子は座り込む。
ボーッとしながら周辺をぐるりと見渡すと、夕刻になろうとしているのか、空のブルーが深い色合いに染まっている。
少し離れた場所に、ダークネイビーのスーツに身を包んだ長身の男性がいた。
時間を確認しているのだろうか、左腕を上げ、チラリと腕時計を見やっている。
(そういえば、豪のスーツ姿は…………本当にカッコ良かったな……)
男性の横顔を見た瞬間、優子は目を見張り、おずおずと立ち上がると、ゆっくりと歩み寄っていった。
***
「あの…………もしかして、谷岡クン?」
谷岡と呼ばれた男性が、優子の声で振り返ると、垂れ気味の瞳を大きくさせた。
「…………え!? ゆ……優ちゃん!?」
そこに立っていたのは、かつての恋人、豪の中学校時代の親友、谷岡 純。
豪が紹介してくれた純は、一度だけ会った事があり、当時は三人で飲みに行った。
外見は若々しく、爽やかなスポーツマンタイプのイケメンである。
優子が近付いていくと、彼は彼女と距離を取るためなのか、一歩後ずさった。
「いやぁ…………久しぶりだなぁ。元気……だった?」
「うん…………何とか」
刑務所を出てから初めて会った知り合いに、彼女は眉尻を下げた。
「……いつ…………出所したの?」
引きつったような笑いを浮かばせている純は、遠慮がちに優子に質問する。
「実は…………今日……出所したんだ」
「マッ……マジか!」
純は、彼女の格好を爪先から頭まで視線を伝わせた。
刑務所から出たばかりの女とは思えないほど、オシャレな格好に、元恋人の親友は、苦笑を浮かべながら指先でこめかみに触れる。
しばらくの間、優子と純の間に、沈黙の壁が立ちはだかっていた。
彼女は考える。
彼なら、現在の豪を知っているかもしれない、と。
「あのさ…………豪……の事……なんだけど……」
優子は純の様子を伺いながら、途切れとぎれに言葉を置いていった。