翌朝、美宇は朔也のキスで目を覚ました。
昨晩あれほど愛し合ったのに、朔也はまだ足りないようだ。
美宇の体は疲れ切っていたが、彼の求めに応じて受け入れた。
朝から熱烈に愛し合った後、二人はベッドに横たわりながら窓の外を眺めた。
外は風が強く、雪が激しく窓に打ち付けている。
「今日は風がすごい……」
「これからもっと激しくなるよ」
「もっと?」
「うん、真冬の北の海風はこんなもんじゃない」
「そうなんだ……」
美宇は風が吹きすさぶ海を思い描きながら、ふと気づいた。
「まだ波音が聞こえる……本当に流氷は来るの?」
「今年は黒潮大蛇行が解消されたみたいだから、来ると思うよ」
「いつ頃?」
「2月の始めかな。漁師が船を陸に揚げるのが合図だよ」
「そうなんですね……」
美宇は、まだ見ぬ景色に思いを馳せた。
この街に暮らすからには、流氷が接岸を一度は見てみたい。
だから、朔也が言う2月が待ち遠しくなった。
「美宇」
「なあに?」
「もう一度愛し合う? それともブランチにする?」
朔也の言葉に、美宇は思わず吹き出した。
「愛し合うのはもう十分です」
「そう? 僕はまだまだいけるけど?」
「ふふっ、だーめ。私はもうクタクタで歩けないわ」
「そりゃ大変だ。じゃあ、お姫様抱っこしてバスルームに連れて行かないと」
そう言って朔也は美宇の頬に軽くキスをし、ベッドから起き上がって下着を身につけた。
そしてシーツで美宇を包み込むと、抱き上げてバスルームへ向かった。
「きゃっ」
突然抱き上げられた美宇は驚いて声を上げ、慌てて朔也に言った。
「歩けるわ、自分で歩けるから……」
「無理しないで、任せて」
「冗談よ……本当に歩けるから」
「大丈夫だよ。美宇は軽いし、君をこれ以上疲れさせたくないんだ」
その言葉に、美宇は思わず笑みをこぼした。
「変なの……」
「君が僕を『変』にしたんだろ?」
朔也はそう言って笑いながら、もう一度美宇の頬に軽くキスをした。
二人でシャワーを浴びた後、朔也がブランチの準備をしてくれることになった。
ブランチと言っても、美宇の母が持たせてくれたお節を温めるだけだったが、その間美宇は室内を見て歩く。
大きな石油ストーブで暖められた室内は、とても居心地がいい。
置かれている家具やインテリアはどれもセンスがあり、さすが芸術家の家だと感じた。
「この素敵な家具は東京で買ったんですか?」
「いや、美大の同期が札幌の近くで家具職人をしていて、全部そこで注文したんだ」
「わぁ、そうなんだ……」
家具はどれも自然の木肌を生かした味わい深い造りで、手に馴染み、温かみがある。
使い込むほど風合いが増していきそうだ。
家具を一通り見た後、美宇は壁際の造りつけの本棚の前に行った。
棚に飾られた朔也の作品を眺めた後、美術書の一冊を手に取り、ソファに座って読み始めた。
「何を読んでるの?」
キッチンで作業をしていた朔也が声をかけた。
「美濃焼の本です」
「美濃は好き?」
「はい。昔から織部が好きでした」
美宇がそう答えると、朔也が微笑んで言った。
「それなら、いつか美濃焼を見に行く? 旅行も兼ねて」
「本当に?」
「うん。札幌の個展が終わったら、少し休もうと思ってるんだ。ずっと働きづめだったしね」
「まとまったお休みは、今まで取らなかったんですか?」
「うん。あまり取ってないかな」
朔也は穏やかに言った。
「じゃあ、今まで頑張ったご褒美に、休暇を取るのもいいかもしれませんね」
「うん。ようやく大切な恋人ができたんだ……少しくらい休んでも罰は当たらないだろう」
『大切な恋人』が自分のことだと気づいた美宇は、胸がドキッとした。
そして、少し不安を抱えながら朔也に尋ねた。
「あの……」
「ん? 何?」
「本当に、私とつき合ってくれるんですか?」
突然の問いに、朔也は目を見開き、作業していた手を止めた。
そしてキッチンを出て美宇のそばまで来ると、隣に腰を下ろした。
「僕が昨夜言ったことを信じられない?」
美宇は小さく頷いた。
「うーん、どうしたらいいんだ……長い間恋愛沙汰から離れていたせいで、うまく伝わらないのかなぁ……」
朔也は頭を掻きながら、困ったように言った。
「美宇、僕はたぶん君を一目見たときから恋に落ちた。ずっと君を自分のものにしたいと思っていた。その願いがようやく叶ったんだ。だから、もっと堂々と僕の愛を受け入れてほしい。そして信じてくれないか。僕は君が好きで大切に思っていることを」
真顔で語る朔也を前に、美宇はもう何も言えなかった。
こんなにも誠実に思いを打ち明けてくれているのに、なぜ不安になる必要があるのだろう。
美宇は浅はかな自分を恥じた。
「ごめんなさい。あまりにも夢みたいで、不安になってしまって……。でも、信じます。私も朔也さんのことが大好きだから」
美宇の言葉に、朔也は心からホッとした様子だった。
「ありがとう、美宇。絶対大事にする。だから、心配しないで僕についてきてほしい」
「はい」
二人は見つめ合い、再び熱いキスを交わした。
窓の外には、静寂に包まれた神秘的な銀世界が、果てしなく広がっていた。
コメント
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キャー💕 タフガイ朔ちゃん! まだまだいけそうな勢い! 羨ましい
甘ーい😍甘過ぎる(≧∇≦) 朔也さん、今まで抑えてた愛が爆発(∩ᵒ̴̶̷̤⌔ᵒ̴̶̷̤∩) 美宇ちゃんに一目惚れだったとは😍💘素敵ーーー✨ 美宇ちゃんすごーく愛されてる💕 自信もってね(*´˘`*)
朔也様 思いを打ち明けたらもう一途に愛を注ぐ感じなんですね 情熱的🩷 外は吹雪でこれからもっと強くなるのよね アパートから通うの大変だからこれからは一緒に住むのかな?二人一緒だと朔也様の作品ももっと違う素敵な物が出来そうね(*^▽^*)