そこからは楽しい宴会が始まった。
岳大は裕樹や恵子と酒を酌み交わし三人で新しい店やテレビ密着についての話題で盛り上がっていた。
話に夢中になっている三人の間に流星が割って入り必死に岳大に昆虫図鑑を見せる。岳大に一緒に見て欲しいようだ。
岳大は流星を抱え上げて膝の上に乗せると会話を中断して図鑑の説明文を読んであげていた。二人の様子は何も知らない人が見たら普通の親子のように見えた。
流星はまだ小さいので今日がどんな意味を持つ日かはわかっていないようだ。ただ岳大とずっと一緒にいられて嬉しいようだ。
キッチンには届いたばかりの寿司や優羽と舞子が作った唐揚げ、ポテトサラダ、酢の物などの料理が並んでいた。二人は料理をテーブルへ運び始める。
母の恵子は寿司の他に新鮮な刺身の盛り合わせも頼んでくれていた。優羽がわさびを出そうと冷蔵庫へ行くとわざびのチューブは空に近かった。
「あ、わさびが切れてる」
すると舞子が。
「私が買ってくるわ」
と言ったが優羽は自分が買いに行くから大丈夫よと言った。
ちょうどそこへトイレから戻って来た岳大が通りかかった。岳大には今の二人の会話が聞こえていたようだ。
「僕が買ってきますよ。ちょっと流星君をお借りしてもいいですか?」
「「えっ?」」
優羽と舞子は驚きて顔を見合わせた。
そこで岳大が流星に言った。
「流星君、アイスクリームを一緒に買いにいかないか?」
「いく! ぼくいきたい!」
流星は目を輝かせて岳大のところまで走って来た。
それを見ていた裕樹が、
「何もお客様に行かせなくても」
と言ったが岳大は裕樹にこう告げる。
「流星君と男同士話したい事があるんでちょっと行ってきます」
裕樹はそれを聞いて何かピンと来たようだ。
「そういう事なら。流星、ちゃんと上着を着て行くんだぞ」
裕樹は流星の上着を取りに行った。
優羽と舞子はまだ意味がわからずに二人並んでぼんやりと突っ立っていた。
優羽の実家を出た岳大は流星と手を繋いでコンビニへ向かった。
「アイスクリームだけかうの? あとは?」
「うん、わさびがないんだって。わさびも買わなきゃね」
「ふたりでおつかいだね」
流星は嬉しそうだ。
「流星君、前に僕がサンタさんの試験に落ちたって話をしたのを覚えているかい?」
急にサンタさんの話題になったので流星はキョトンとして岳大を見上げる。
「うん、おぼえてるよ。だからいまはまだしゅぎょうちゅうでサンタさんのでしなんだよね?」
流星が聞き返したので岳大が答える。
「うん、そうなんだけど実は違う試験を受けてみようかと思っているんだ」
「サンタさんにはならないの? どうして?」
流星は岳大がサンタの試験を受けないと聞き残念そうだ。
「実はね、流星君のお父さんになる試験を受けようかと思ってるんだ」
岳大は神妙な顔つきで答える。それを聞いた流星が驚いた顔をする。
「えっ? サンタさんをやめてぼくのおとうさんになるの?」
「うん。どう思う?」
すると流星は満面の笑みを浮かべて言った。
「いいよ! ぼくのおとうさんになるしゅぎょうをしても」
流星は岳大と手を繋いだまま嬉しそうにピョンピョンと飛び跳ねる。
「本当にいいのかい?」
「うん、だってぼくのほいくえんでおとうさんがいないのは、ぼくとなおきくんとみかちゃんだけなんだ。ほいくえんのちちのひにはひろちゃんがきてくれるけれどほんとうのおとうさんじゃないからね。たけちゃんがおとうさんのしけんにうかったらたけちゃんがちちのひにきてくれるんだよね?」
岳大が笑顔で頷くと流星は更に高くキャッキャと飛び跳ねる。
「じゃあそうするかな。でももしお父さんの試験に受かったら僕は流星君のママとも仲良くしなくちゃだけれどそれでもいい?」
「もちろんいいよ。ほいくえんのおともだちのママはおとうさんがいつもいっしょにいるけれどうちのママはいっつもひとりぼっちだからね。だからたけちゃんがいてくれたほうがママもたのしいとおもうよ。それにぼくもいつかはけっこんしちゃうからね」
流星は言い終えるとニッコリと微笑んだ。
「おっ? って事はゆりかちゃんとうまくいっているのかな?」
「まあね」
流星はニヤッと笑って得意気に言った。
岳大は良かったなーと言って流星の頭をくしゃっと撫でた。
それから二人はコンビ二で買い物を終えると再び皆が待つ家へ戻って行った。
コメント
5件
可愛くて、嬉しくて、またまた号泣😭🍀💕💕💕
流星くんホントに良い子🥹🥹🥹
ゆりかちゃんとうまくいってたんだ!りゅうせいくん!らぶらぶじゃーん💕いいなぁ〜😍 そしたら、ままとたけたちゃんもらぶらぶでおんなじだね💕 りゅうせいくん、たけちゃんしけんにうかるといいね〜😉