テラーノベル
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「おりゃあああああ!」
地面が揺れる、いや、揺れているのは地面だけではない、空気そのものが震えていた、数十人の男達の足音が、まるで地響きのように境内を揺らす
東地区の青年団の紫色の神輿が、一糸乱れぬ動きで迫ってくる、その迫力に、ジンは息を呑んだ、これが——喧嘩祭りか?
ドォーーーーーン!
もう一度大きな衝撃で、ジンの体が宙に浮き、骨全部に衝撃が走った、側頭部を神輿に打ち付け、視界が白く弾けた、耳の奥で何かが鳴り響く、肩の骨が砕けたかと思った、いや、砕けていないのが不思議なくらいの衝撃だった
担ぎ棒が肩に食い込み、皮膚が裂けそうになる、耳が痛くなるような轟音!周りの男達が押し返す
「怯むなーーーー!!押せ押せ!」
「西の意地見せたれ!」
「いけいけいけ!!右の神輿棒へし折ったれ!」
怒号が飛び交う、誰が何を叫んでいるのかもはや区別がつかない、ただ、その声の全てが、ジンの体を奮い立たせた、気づけば、ジンも叫んでいた
「うおおおおおっ!!」
理性も知識も何もない、ただ、押す、前へ、前へ、進む、今やジンは晒と褌だけの男達と肩を組み、泥にまみれ、汗を流し、声を張り上げていた
今までの都会の清潔なオフィスにいた自分はもうどこにもいなかった、何でこうなったかはさっぱり分からないが、あるのは、泥と汗と血にまみれた、闘志そのものの自分だけだった
そこへまた東の神輿がぶつかって来た
ドカッ
「うおっ!!」
突然、顎に鋭い衝撃が走った、誰かに顎を蹴られ、ジンが神輿担ぎの輪から一人吹っ飛んで背中ごと石砂利に強打した
「がはっ…!」
息が止まる、肺から空気が一気に抜けた、背中に無数の砂利が食い込み、皮膚が切れた感触がする、視界がぐるぐると回り、空が地面になり、地面が空になる
「桜の婿さん!!大丈夫か!」
「離れるな!担げ!担げ!」
誰かが叫ぶ声が遠くに聞こえた、ジンは必死で体を起こした
―吹っ飛ばされた!戻らきゃ・・・―
口の中が鉄の味がする、血だ・・・唇が切れたのか、それとも舌を噛んだのか、霞む視界の向こうでジンがいなくなった西の神輿はバランスを崩して斜めになっている、その向こうで東の青年団の神輿が体当たりしている、紫の提灯が揺れ、太鼓が地を震わせる
「ワハハハハ!」
その時ジンの頭上に豪快な笑い声が響いた、なんと東の青年団の神輿に大股を広げて乗っているのは政宗だった、そしてジンの顎を蹴飛ばした張本人だ
ワハハハッ!「俺の初恋の人をかっさらったんだ!これぐらいやらせてもらってもバチは当たらないだろう!なぁ!ジンさん!」
政宗は酔っているのか顔は真っ赤で、目は獰猛に血走っている、その姿は、まるで戦国武将のようだった
いや、この瞬間、彼は武将そのものだった。神輿という戦車に乗り、部下を率いて敵陣に突撃する——
それでいてどこか爽やかさがあった、卑怯な手を使ったという罪悪感はまったくない様だ、それもそのはず、これは祭りだ、喧嘩祭りだ、何でもありなのだ
「政宗率いる東の青年団や!」
「東は荒くれ者の集まりじゃ!」
「政宗、やりすぎや!」
「いや、あれぐらいええやろ!祭りや祭り!」
「コイツらを倒さんことには宮入りできんぞ!」
次々にジンの神輿陣営の若い衆が叫ぶ
コメント
2件
くそぉー!政宗めーー!!! ジンさん負けるなー👊 勝利を祈ってます🙏
政宗おのれ〜💢 うぅぅジンさん😭 心配だけど…でも… ジンさんの底力見せたって〜✊️🚩