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美月は少し俯き、ゆっくりと口を開いた。
「実はね・・私には大学生の弟が居るの」
「あ、そうだったんだ」
信愛が小さく頷く。
「初めて知った」
茜も意外そうに目を丸くした。
美月は寂しそうに微笑む。
「でも最近、連絡があまりつかなくなっててね」
一度言葉を切り、続けた。
「気になって家まで様子を見に行ったの」
その時の光景を思い出したのか、表情がさらに曇る。
「そしたらアイツ、私が知らない内に
大学もバイトも全部辞めてて・・・」
「え?」
焔垂が思わず声を漏らす。
朝陽も信じられないという表情で尋ねた。
「なんでなんですか?」
美月は重く息を吐く。
「それを問いただしたら霊貴冥孤が理由だったの」
「霊貴冥孤が?」
信愛が聞き返す。
「どういう意味?」
茜も首を傾げた。
美月は静かに語り始める。
「弟には幼馴染の女の子が居たんだけど
高校の時に交通事故に遭ってずっと植物状態だったの」
「植物状態・・・」
焔垂が小さく呟く。
「弟ね・・・高校の頃からずっと
病院にお見舞いに行ってたんだけど
去年亡くなっちゃってね・・・」
「なるほど・・・」
信愛は静かに相槌を打つ。
「それに弟ったら、その交通事故は
自分のせいだって言ってるのよね」
「え? なんで?」
さくらが驚きの声を上げる。
「弟さんがその子を轢いちゃったとか?」
「いいえ、違うわ・・そもそも
車の免許持ってないしね」
美月はきっぱりと否定した。
「でも何度聞いても、なんで自分のせいって
言うのか答えてくれないのよね・・・」
部室に重い沈黙が流れる。
「なるほど・・・」
茜も今度は真面目な表情で頷いた。
「それで思い悩んだ挙句
霊貴冥孤を知ったらしいの」
「何で弟さんは霊貴冥孤に?」
「なんでも死者の声を代弁しますって
誘い文句に縋ったみたいなのよね」
「なるほどね」
さくらは納得したように呟く。
「その霊視に今まで300万以上払ってるらしいわ」
その瞬間。
「さ、さんびゃくまん!?」
茜はあまりの金額に声が裏返る。
部室の空気が一気に凍りつく。
信愛も思わず息を呑んだ。
「300万・・・」
美月は苦しそうに続ける。
「貯金切り崩しても足りなかったらしくて
いろんな消費者金融で借金してまで
霊貴冥孤の所に通ってたそうなの」
「でも何でそんなに大金が必要な訳?
死者の声を代弁するだけでしょ?」
茜は信じられないというように眉をひそめる。
「霊貴冥孤が言うには、死者との
交信には時間制限があるらしいの」
「時間制限・・・」
信愛が静かに復唱する。
「一人に対して一日これだけって
決められた時間があって──」
その説明に、茜は皮肉っぽく肩をすくめた。
「もしかして、肝心な事を聞こうとしたら
『制限時間です!』みたいな感じ?」
「そうらしいの・・・」
美月は力なく答える。
「毎回、時間が来てしまいましたとか言って
結論を先延ばしにされるそうなの・・・」
焔垂は呆れたように鼻で笑った。
「胡散臭いな・・・それ」
「ですね・・・」
朝陽も静かに頷く。
「肝心なところを言わないって辺りが
怪しさムンムンですよね・・・」
さくらは信愛へ視線を向けた。
「信愛?どう思う?」
信愛は少し考え込み、慎重に言葉を選ぶ。
「限りなく黒に近いと思う」
部室の全員が信愛の次の言葉に耳を傾ける。
「そもそも霊との交信に時間制限
なんて話・・・ 聞いたことないしね」
その言葉を聞いた美月は、力なく視線を落とす。
「じゃあやっぱり霊貴冥孤は・・・」
信愛は静かに言い切った。
「詐欺師の可能性があると思います」
その一言は、部室の空気をさらに重くした。
美月は拳をぎゅっと握り締め、小さく呟く。
「やっぱり・・・」
俯く美月に信愛は美月へ静かに問いかけた。
「先生は、その霊貴冥孤の
居場所は知ってるんですか?」
美月は少し迷うような表情を浮かべる。
「まあ、弟から聞いて店の場所くらいは」
そして、不思議そうに首を傾げた。
「でも、なんでそんな事聞くの?」
その瞬間、茜が勢いよく身を乗り出した。
「なんでって決まってるでしょ!」
さくらも拳を握りしめる。
「その詐欺師の化けの皮を剥がしてやるんだよ!」
美月は顔色を変え、慌てて両手を振った。
「ダ、ダメよ!そんな危険な事!」
「いや、ダメって──」
茜は納得できない様子で眉をひそめる。
「美月ちゃんはそれを頼みたくて来たんでしょ?」
「違うわよ!」
美月はきっぱりと言い切った。
信愛は目を丸くする。
「あ、違うんですか?」
美月はゆっくりと首を横に振った。
「霊貴冥孤が言ってる死者の声を
代弁するなんて事が本当に可能なのか」
一呼吸置き、真っ直ぐ信愛を見つめる。
「そして詐欺の可能性はあるのか
それを白縫さんに聞きたくて来たのよ」
「あ、そうだったんだ」
茜は照れ笑いを浮かべる。
さくらは苦笑しながら肩をすくめた。
「私はてっきり・・・」
美月は寂しそうに微笑む。
「教え子に詐欺師を捕まえてくれなんて
そんな事頼む教師がどこに居るのよ」
「まあ、確かに・・・」
信愛も苦笑して頷いた。
美月は立ち上がると、鞄を手に取った。
「とりあえず今日はありがとうね
話聞いてくれて」
少しだけ優しい笑みを浮かべる。
「今の話は忘れて、それじゃあね」
そう言い残し、美月は足早に部室を後にした。
閉まる扉を見つめながら、信愛は小さく呟く。
「美月先生・・・」
静まり返った部室で、茜が信愛へ声を掛けた。
「どうする? 信愛?」
信愛は困ったように視線を落とす。
「どうするって言ったって・・美月先生から
ああ言われちゃったら無理強いできないよ」
「だよね・・・」
さくらも小さく頷く。
しかし次の瞬間、信愛の表情が変わった。
「でも、本当にその霊貴冥孤が
詐欺師だったとしたら──」
信愛は下唇をぎゅっと噛み締め、怒りを押し殺すように拳を握る。
「私は許せない」
その真剣な横顔に、朝陽は思わず息を呑んだ。
「信愛先輩・・・」
#普通
野々さくら
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ありあ
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コメント
1件
うわっ、今回めっちゃ重い話きたな…美月先生の弟が300万も霊貴冥孤に突っ込んでるって、もう完全に詐欺の匂いしかしないわ。死者の声代弁に時間制限とか、胡散臭すぎるでしょ笑 「肝心なとこ言わない」って古典的だけど確実な手口だよな。 でも信愛が「許せない」って言ったとこ、グッときた。先生に止められても動こうとするその正義感、カッコよすぎる🔥 次どうなるんだろ、めっちゃ気になるわ!