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そんな中、
元貴はやっぱり、すぐ気づいていた。
「今日、家来てよ」
帰り際、何気ない声で言われる。
「……いや、大丈夫」
反射的に断ろうとする。
ひとりでいた方がいい気がしたし、
これ以上、誰かに見られるのが少し怖かった。
でも、
「ダメ」
即答だった。
「来るの。決定」
いつもの軽さなのに、
逃がさないみたいな強さがあって。
「……」
言い返す隙もなくて、
結局、
僕は元貴の家に来ていた。
⸻
ご飯を食べ終わって、
他愛もない話も一通り終わって、
部屋に、少しだけ静かな時間が流れる。
僕はソファーに座って、
ただ、ぼーっとしていた。
テレビもついてない。
スマホも触る気にならない。
ただ、
頭の中だけが、ずっと動いてる。
「……」
そんな空気の中で、
カチッ、と小さな音がした。
顔を上げると、
元貴がCDプレイヤーの前にしゃがんでいる。
ディスクを入れて、
再生ボタンを押す。
ゆっくりと、
音楽が流れ始める。
静かで、
少しだけ柔らかい音。
部屋の空気が、
少しだけ変わる。
元貴は何も言わずに、
そのまま僕の隣に座る。
距離は近すぎないけど、
離れてもいない。
ちょうどいい距離。
「……こういうのさ」
ぽつりと、元貴が言う。
「考えすぎてるときに聴くと、ちょっと楽になる」
僕は、何も返さない。
でも、
音楽はちゃんと耳に入ってくる。
さっきまでぐるぐるしてた思考が、
少しずつ、ほどけていくみたいに。
「無理に話さなくていいから」
その一言が、
やけに優しくて。
僕は、少しだけ目を閉じる。
音楽と、
隣にいる気配に、
そっと寄りかかるみたいに。
「……ありがと」
小さく呟くと、
元貴は
「ん」
って、それだけ返した。
それ以上、何も言わない。
でも、
その沈黙が、
今の僕にはちょうどよかった。
#ご本人様には関係ありません
🙂
#🍏