テラーノベル
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信愛の話を聞きそれから少し考え込んでいた美沙が、ふと何かに気づいたように口を開いた。
「白縫さんだったら霊視が出来るのよね?」
「まあ、そうですね」
信愛が答えると、今度はさくらが不安そうに眉を寄せた。
「でもさ?信愛?千歳さんの時みたいに
霊圧拒否する可能性あるんじゃない?」
信愛の表情がわずかに曇る。
「そこなんだよね・・・
正直言って、その可能性はあると思う」
茜も大きく頷いた。
「確かに!とんでもない悪霊かもしれないもんね」
美沙は、聞き慣れない言葉に首を傾げる。
「その霊圧拒否?それって何の事?」
◇ ◇ ◇
信愛は少し考えてから、霊視のメカニズムについて説明する。
「霊気に霊圧・・・なんか漫画みたい」
美沙が思わず呟く。
信愛は苦笑しつつも、説明を続けた。
「ですので、その霊視は自分と同等か
それ以下の霊気を持ってる霊しか目視できないんです」
「なるほど・・・霊によって
霊気の量が違うって事ね?」
「はい・・・ですから、TAMAYAさんの
近くに居るかもしれない霊が、私以上の
霊気を有してる霊だった場合・・・」
信愛はそこで一度言葉を切った。
「私の霊気が潜在的に霊圧を拒否しちゃうんで
目視できない可能性があります」
「ああ、なるほど。自衛のために拒否するわけね」
「はい・・・」
信愛は静かに頷いた。
そして、少し申し訳なさそうに美沙を見る。
「なので、もし私が目視できない霊だった場合
私ではお役に立てないかもしれません」
それでも信愛の意思は変わらなかった。
「それでもよければ、TAMAYAさんの
霊視をさせてください」
美沙はしばらく信愛を見つめたあと、覚悟を決めたように頷いた。
「分かったわ・・・」
そして、その場にいる一同へ視線を向ける。
「なら、あなた達にお願いしようかしら」
その瞬間、茜の顔がぱっと明るくなった。
「やった〜♬これでTAMAYAに会えるぅ〜♬」
すると、すかさず美月の鋭い声が飛んでくる。
「コラ!遊びじゃないのよ?」
「わ、分かってるよ」
茜は慌てて取り繕う。
しかし、美月は呆れたように目を細めた。
「いいや、今の喜び方は分かってないわね」
#普通
野々さくら
543
805
44
ありあ
159
「ひっど~い!ちゃんと分かってるってば!」
緊張感のある話が続いていたファミレスの一角に、いつもの賑やかな空気が戻る。
こうして怪異探求倶楽部は、TAMAYAの周囲で起きている怪異の正体を突き止めるため、本人との接触を試みることになった。
◇ ◇ ◇
それから一同は改めて話し合い、週末にTAMAYAの所属事務所を訪ねる手筈を整えた。
話がまとまりかけたところで、美沙が少し真剣な表情を浮かべる。
「けどね?ひとつだけ約束してほしいの」
「約束?」
信愛が首を傾げると、美沙は静かに頷いた。
「TAMAYAは一連の現象を
重く受け止めてないみたいでね
何度かお祓いに行こうって言ってるんだけど
毎回考えすぎだって言って拒否するのよ」
「なるほど・・・」
「まあ、本人も20日にZappツアーの
最終日を控えてるから、余計な不安を
抱え込みたく無いんだろうけどね・・」
その言葉を聞いて、茜が思い出したように声を上げる。
「ああ、そういえばツアーしてましたね」
信愛は興味を示し、美沙へ尋ねた。
「ツアーってどのくらい回ってたんですか?」
「北海道、神奈川、愛知、大阪
福岡と回って、最終日が東京のお台場」
「かなり回ってたんですね」
美沙は頷いた。
「本人にとっては初のツアーライブで
更にこれが上手くいけば武道館も夢ないって
かなり前から気合い入れて準備してたからね」
その声には、TAMAYAを近くで見てきた者だからこその心配が滲んでいた。
「だからあまり刺激したく無いんだけど
やっぱり不安なのよね・・・」
「まあ、ですよね・・・」
信愛が神妙な面持ちで頷く。
美沙は改めて一同を見回した。
「だからあなた達にお願いしたの」
そして、念を押すように続ける。
「あなた達はあくまでも私の知り合いで
見学に来ただけってテイにしてほしいのよ」
「わかりました」
信愛は迷わず答えた。
「約束します」
その横で、さくらが期待に満ちた表情を浮かべる。
「て事はさ?関係者席からライブ見れたりするかな?」
「あなた達ね!!!」
美月の怒声が店内に響き渡った。
そのあまりの剣幕に、さくらが肩を跳ねさせる。
「あ、ごめんなさい。冗談じゃん
も〜ぅ、美月ちゃん怖いよぉ〜」
「はぁ~まったく・・アナタ達ときたら全くもう」
美月は深いため息をつき、額を押さえた。
それから申し訳なさそうに美沙へ向き直る。
「ごめんね?美沙・・この子達ったらホント・・」
しかし、美沙は気にした様子もなく、穏やかに微笑んだ。
「いいえ、大丈夫ですよ」
TAMAYAを取り巻く不可解な現象。
その真相を探るための準備は、こうして静かに整えられていった。
だが彼女達はまだ知らない。
この出会いが、華やかなステージの裏側に隠された、ある悲しい想いへと繋がっていくことを。
コメント
1件
×××さん、182話お疲れ様です!今回も世界観の設定がしっかりしてて面白かったです。信愛の霊視に「霊圧拒否」という制約があるのがすごくリアルで、単なる万能能力じゃないところがいいなと思いました。美沙の「刺激したくないけど不安」という心境も伝わってきて、TAMAYAの状況が気になります。ラストの一文で次の展開への期待がグッと高まりました!