健太の姿が見えなくなると、
「ちょっとちょっとなによこれーっ!」
優香は腹を抱えて笑い始める。
一方、花純はホッとした様子だった。これでもう二度と健太はこの店に来ないだろう。
花純はすぐに壮馬にお礼を言った。
「ありがとうございました。助かりました」
「いや、困っていたようだったから…」
壮馬はぼそっと言った。そこへ優斗が入って来た。
優斗は今目の前で繰り広げられた光景を全て見ていたようだ。
「あいつかー、花純ちゃんが左遷される事になった原因の男は…」
優斗が全てを知っている様子だったので、花純は驚いた。
そして真っ先に優香を見る。
「ううん、私は何も言ってないわよ。っていうか私も知らなかったし」
そこで花純は今度は壮馬を見たが、壮馬は無言で微笑んでいるだけだった。
そこで優斗が説明を始めた。
「前に花純ちゃんがお友達と隣のカフェで話してたろう? あの時俺達も近くにいてさ、で、聞こえちゃったんだよね」
優斗の説明を聞いた花純は、そういう事かと納得した。
「それにしても、自分が原因なのによく図々しく会いに来られるよなぁ」
優斗が口を開くと優香も続く。
「ほんとよねー、迷惑だって分からないのかな?」
その言葉に優斗がうんうんと頷く。
その時、壮馬が口を開いた。
「それだけ彼女の事が好きなんだろう。ただ相手の立場を考えずに自分の気持ち優先で動くのもどうかとは思うが」
壮馬の重みのある言葉に優斗と優香は頷く。
その時花純は、
(この人、私の気持ちをよく分かってる…)
そう思った。
「あの、本当にありがとうございました。でも、今からお出かけだったのでは?」
そこで優斗が「アッ」と叫んだ。
「ヤバい、遅刻するところだった。花純ちゃんサンキュ! じゃあ壮馬行くぞっ」
「ああ」
壮馬はそう言って優斗の後に続く。
しかしすぐに足を止めると、花純の方を振り返って言った。
「今日の晩御飯は家で食べるから」
壮馬が意外な事を口走ったので、優香と優斗が目を丸くする。
しかし花純は落ち着いた様子で、
「わかりました。ご用意しておきます」
と答えた。
すると壮馬は満足気にうんと頷いてから店を後にした。
二人がいなくなると優香が言った。
「なんか新婚さんみたい―♡」
「なっ、何を言ってるんですかっ優香さんっ」
花純は顔を真っ赤にして言う。
「だって、壮馬さん『花純』って呼び捨てにしてたしーすごく自然だったじゃない? そう思わない?」
花純はそこで初めて壮馬が自分を呼び捨てにしていた事を知る。
「呼び捨てだったなんて、全然気づきませんでした」
「そうなの? でもきっと嫌じゃなかったから気付かなかったのよ」
優香はそう言ってフフッと笑った。
「そっ、そんな事ないですっ」
真っ赤な顔の花純がムキになって言ったので優香は声を出して笑った。
そこで花純は先ほどの事をふと思い出して言った。
「優香さん、さっきは助け舟を出して下さりありがとうございました」
「ううん、当然の事をしたまでよ。だって花純ちゃん困っているようだったから。でも私なんかより、壮馬さんの方が一気に花
純ちゃんの不安を取り除いてくれたわよね。良かったー」
優香は微笑む。
(確かに…副社長は坂上先輩に関する憂鬱を一気に解決してくれたわ)
花純はしみじみとそう思う。
その時、パートの寺田洋子が出勤して来た。
「おはよーございまーす! 今日もよろしくねー!」
すると優香がすぐに洋子に駆け寄り、今目の前で繰り広げられた大事件についてを話し始めた。
「ちょっとちょっと洋子さん、あのね、今凄い事があったのよ…」
花純はなんだか恥ずかしくてそそくさと店の表に出た。
そして入荷したばかりのハーブの苗を並べ始めた。
コメント
3件
ほのぼの新婚さんみたいな花純ン&壮馬さんのやりとり🥰 優香&優斗の酒席🍺の仲間に入れてほしい🤭 無自覚な花純ンを壮馬さんはどうやって攻略するのかしら?
本当に、新婚さんみたい~👩❤️👨💕( 〃▽〃)キャアー 花純ちゃん スキスキ~😍❤️を隠しきれない壮馬さんと、天然無自覚の花純ちゃんとの対比が面白い🤭 また 優香さんと優斗さんの 格好の酒の肴になるんだろうなぁ~✨🍻🎶🤣🤣🤣
優優コンビの思うことは同じなのね🤭なんかお似合いでいいわ〜🌼 それにしても壮馬さんが花純ンを守ってくれて花純ンも自然に受け入れてて😊👍💕 花純ンはまだ気づいてないだけで壮馬さんにほのかに恋心が芽生えそうな雰囲気🤭💞🌼