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あさごはんを食べたあと、お母さんが洗いものをしているすきに、
わたしはとなりのおばあさんの家へ行った。
おばあさんは、いつもあまいジャムを作ってくれる人。
「おはよう、ミナちゃん。今日はなんのご用?」って、
にっこり笑ったけど、その笑顔がなんだかうらやましく見えた。
「おかあさんがね、あんまり笑わないの。
だから、笑ってもらえるお花を探したいの」って言ったら、
おばあさんは少しびっくりして、
それから、ゆっくり話しはじめた。
「むかしから森の奥に、“笑顔花”って呼ばれる花があるんだよ。
花びらが小さく光って、人のこころをあたためてくれるんだってさ。
でもね、見つけられるのは、やさしい心を持っている子だけ」
その言葉を聞いて、わたしは胸をぎゅっと握った。
──やさしい心、あるかな、わたし。
でも、おかあさんを笑わせたい気持ちは、誰にも負けない。
「ありがとう、おばあさん!あした、森へ行ってみる!」
おばあさんは、わたしの髪をなでて言った。
「気をつけてお行き。森は広いけど、花はきっと、君を待っているよ」