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つかさは鼻息を荒くさせ、こずえに対しての怒りを露わにする。
「何すんのよ!」こずえも負けじとつかさを平手打ちする。
「ちょっと母親が帰ってこないだけ?ふざけないでください!」つかさは再びこずえに平手打ちしようとするが、駿から止められる。
「だめです!雛形先生!堪えてください!」
「離してください!皆川先生!この人は性根が腐ってるんです!叩き直してやる!」
つかさは怒りを爆発させる。
「雛形先生?あはは!呆れた!だれかと思えばアンタ教師だったの?最近の教師はなに?人に暴力振るうわけ?ありえないんだけど!」
「ありえないのはあなたですよ!」つかさは駿の静止を振り解いてこずえに近づく。
「はぁ?私のどこがありえないってのよ!え?」
「あなた今・・母親がちょっと母親が帰ってこないだけでって・・そう言いましたよね?」
「だから何よ!本当の事じゃない!」
「どこに居るかのか、何をしているのか、生きているのか死んでいるのかすらも分からない状態で、あなたは娘の前から姿を消していたんですよ?それがどれだけ辛くて悲しくて不安か・・どうして分からないんですか?どうして相手の立場に立って物事を考えれないんですか!?」
つかさは思いの丈をこずえにぶつける。
「雛形先生・・」梓は自分のためにこずえに真っ向からぶつかるつかさを、涙を浮かべながら見つめる。
そんな梓の手を聖奈と沙月が黙って握る。
「みんな・・ぐすっ」梓は親友の温かさに涙を流す。
「けっ!アンタみたいな若い女にとやかく言われる筋合いなんてないわよ!!」
つかさの言葉は響かなかったようで、こずえはアスファルトの上に唾を吐き捨てる!
「アンタはどうなのよ!梓!私と一緒に居たいの?別に1人でも生きていけるわよね?」
「わ、私は・・その・・・」こずえからのいきなりの言葉に梓は動揺しているようで、言葉を詰まらせる。
「なに?少し見ないウチに言葉も喋れなくなったの?」
「ぐすっ・・私は・・」梓の目から絶え間なく涙が溢れ出る。
「ほら!すぐ泣く!そういう甘えたガキっぽい所がもう!うんざりなんだよ!!」
こずえは怒りに任せて、持っていたバッグを梓に投げつける。
「ふざけんなよ!ババア!」聖奈がそのバッグをこずえに投げ返す。
「アンタそれでも母親かよ!梓がどれだけアンタの事を待ち焦がれてたか、何で分かってやんねーだよ!」
「秋根・・・」駿は親友のためにこずえに怒りをぶつける聖奈を見つめる。
「ガキが何しゃしゃってんのよ!さっきも言ってでしょ?私はもう母親じゃないの!」
「アンタ・・仮にもここまで梓を育ててたんでしょ?愛情とか無いわけ?」
沙月がこずえに詰め寄る。
「あはは!愛情?あはは!んなもんあるわけないでしょ?あはは!」
こずえは高笑いをしながら手を叩く。
「な・・なんて事を・・・」駿はこずえの発言に絶句する。
「さっさと死んでくれりゃ良かったのにさ!デカくなればデカくなる程に金がかかって仕方ないわ!」
こずえは呆れた様子でタバコに火をつけ
「これ以上面倒が増えるのは嫌だったのよ!だから母親なんて面倒な事辞めたのにさ!それなのにどこで調べてきたのか知らないけど、こんな所までわざわざ来やがって!おかげで見たくもないヤツの顔を見る羽目になったじゃない!」と続け、口から濁った煙を吐きだす。
「ふざけんなぁー!!!」駿は拳を握り、こずえに向かって走り、殴りかかる。
「もういいよ!!!」梓が声を張り上げる。
そんな言葉に皆が固まる。
「な、何言ってんだよ!だって、この人は・・梓のお母さん・・・」駿は目に涙を浮かべながら、梓を見つめる。
「こんなヤツ・・こっちから願い下げよ!」
梓は涙を浮かべ、うつむきながら言う。
「あはは!そうよ!そうよ梓!よく言ったわね!その言葉を聞きたかったのよ!これで私たちは晴れて赤の他人ね!今日からは互いに好きな事やって生きて行くわよ!いいわね?梓?」
こずえの問いかけに梓は黙ったままうつむく。
「ああ!そうだったわね!言葉話せなかったのよね!まぁ、いいわ!私には関係ないから!まだ飲み足りないから、戻ろ〜っと」
こずえがバーに戻ろうとするが「待てよ!」駿がそんなこずえの腕を掴む。
「何よ?アンタだって梓の言葉聞いたでしょ?私も母親じゃないそうよ?あはは!無駄足だったわね!残念でした!」
こずえは呆れた様子で駿にタバコの空き箱を投げつけ「それ捨てといてね❤︎」と捨て台詞を吐き、その場から立ち去る。
「あ、梓・・本当にこのままでいいのか?」
駿はうつむく梓にゆっくりと近づく。
そんな駿に梓は黙って抱きつく。
「ぐすっ・・いいの・・もう・・いいの」
梓は駿の体に顔を埋めて声を殺して泣き叫ぶ。
そんな梓にどんな言葉をかければいいのか、皆はわからず、黙って見守るしかできなかった。
「龍彦さん・・まだ居るかな?」こずえは、実の娘に何をしたかなど忘れてしまったように、時折笑みを浮かべながら、RAMに向かって裏路地を歩いていた。
しかし、こずえの足が急に止まる。
「なに・・あれ?」こずえの視線の先にはRAMの周りを取り囲む、無数の人々が居た。
「何かあったのかしら?」
こずえは小走りでRAMの中に入る。
中には、数名の警察官の姿があり、カウンター席ではバーテンダーの周りに警官が群がり、どうやら事情聴取をしているようだった。
「では、あなたは売春については何も知らなかったという事ですか?」
「はい!もちろんです!私はただバーテンダーとしてこの店で働いてただけなんです・・まさかオーナーが売春の斡旋をやっていなたんて・・」
バーテンダーはショックだったようで、顔を両手で覆ってうつむいている。
「ちょっとどいて!通してよ!」こずえが無数の警官を掻き分けて、バーテンダーに近づく。
「何があったの?これは何の騒ぎ?」
うつむくバーテンダーにこずえに問いかける。
「ああ・・こずえ様・・オーナーが警察に逮捕されんです・・」
「え?龍彦さんが?」こずえは焦った様子で冷や汗をかく。
「はい・・オーナーは実は、このバー経営者の裏で売春の斡旋をしていたらしいんです・・」
「まさか・・・」こずえはいきなりの事態に困惑していると、ひとりの刑事が近づいてくる。
「あなたはもしや金森こずえさんじゃないですか?」
「え?あなた誰?それになんで私の名前を知ってるの?」
「申し遅れました・・私はこういう者です」
刑事は懐から警察手帳を取り出してこずえに見せる。
「け、刑事?刑事が私に何の用よ?」
「話を元に戻しますが、なぜあなたがココに居るんですか?あなたは今、皆川さんと、それに娘の金森梓さんと一緒に居る筈ではないんですか?」
「は?なんて刑事の口から、その名前が出てくるわけ?あんたらどんな関係よ!」
刑事の口から駿と梓の名前が出てきた事に、こずえは動揺する。
「実は皆川さんには、梶橋龍彦逮捕の為の潜入捜査に協力してもらっていたんですよ」
「潜入調査ですって!?」
「ええ!我々は梶橋を逮捕する為、皆川さんは行方不明である教え子の母親を連れ戻す為!互いの目的の為に協力してもらっていたんです」
刑事の口から語られた予想だにしない事実に、こずえは絶句する。
「じゃあ・・龍彦さんが逮捕されたのは・・アイツらのせいって訳ね・・・」こずえは憎悪に満ちた顔で呟く。
「まぁ、皆川さんと一緒ではないなら、あなたも我々と共に警察署にご同行願いますよ?あなたには売春に加担していた疑いがあります!いまからパトカーで」
刑事の言葉を遮るように、こずえは刑事を押し退けて、カウンター席のテーブルの上にあった何かを手にし、その場から立ち去る。
「ま、待て!金森こずえ!」
刑事が駆け寄るがこずえは「離して!」刑事を突き飛ばして逃走する。
「ま、まずい!」刑事は座り込むバーテンダーを無理矢理起き上がらせる。
「今、金森こずえは、テーブルにあった何を持って逃走した!何を持って行った?テーブルの上から何が無くなってる?」
刑事はテーブルをドンドンと叩いてバーテンダーに詰め寄る。
「えっ・・・と・・・」バーテンダーはテーブルを見て記憶を探るように考え込む。
「思い出せ!何が無くなってる?」
「あ!」バーテンダーが声を張り上げる。
「なんだ?何が無くなってるか分かったか?」
「ア、アイスピックが無くなってます・・お酒を提供する時に使う氷を砕く用のアイスピックが・・」
「何?アイスピックだと?これはまずい・・」
刑事はスマホを取り出して警察署へ電話をする。
「俺だ!いいか?よく聞いてくれ!今から俺が言う事を全警察官に伝えてくれ!」刑事は深呼吸をし
「バーRAMでの売春に加担した容疑をかけられている金森こずえが、現場よりアイスピックを持ち去り逃亡した!もしかしたら皆川さんを狙っているのかもしれない!この地域全体に緊急配備だ!わかったな?頼んだぞ?」
刑事はそう言って通話を終えると、RAMを後にしてパトカーに乗り込む。
するとスピーカーから警察署からの入電が響き渡る。
「バーRAMでの売春に加担した容疑をかけられている金森こずえが、現場よりアイスピックを持ち去り逃亡。潜入調査の協力者である皆川駿さんを狙っていると思われる !近くの警察官は直ちに現場周辺へ急行せよ!繰り返す」
「皆川さん・・無事でいてくれ」
刑事はそう祈りながら、パトカーを走らせる。