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🌙 Scene 31:返事を待つ時間
「こんばんは。」
送信ボタンを押した瞬間、
胸の奥がふっと軽くなる。
でもすぐに、
別の緊張が静かに押し寄せてくる。
“届いてしまった。”
スマホを伏せようとして、
結局できなくて、
画面を見つめたまま指先が止まる。
数十秒。
一分。
二分。
その短い時間が、
やけに長く感じられる。
“変じゃなかったかな……”
“もっと何か書いたほうがよかった……?”
そんな考えが浮かんでは消えていく。
そのとき──
スマホが小さく震えた。
画面に、
景兎先輩の名前が表示される。
心臓が、
一瞬だけ跳ねた。
メッセージを開く。
「こんばんは。
返してくれてありがとう。
作品、とても良かったです。
SNSで見たときも思ったけど、
あなたの絵、すごく丁寧で優しいですね。」
読み終えた瞬間、
胸の奥がじんわり温かくなる。
“優しいですね。”
その言葉が、
まるで直接声で聞いたみたいに
静かに響く。
私はゆっくりと指を動かした。
「ありがとうございます。
そんなふうに言ってもらえるなんて思ってませんでした。」
送信。
今度は、
指は震えなかった。