テラーノベル
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そこは、あまりにも普通すぎた。
オシャレな外観の集合住宅。
夕方になると、決まって灯る、
一つの部屋のあたたかい明かり。
——任務 〈黄昏〉の偽装家族。
資料にはそう書かれていたはずなのに。
「……本当に、ここなんですか?」
私は小さく息を吐き、インカムを押さえる。
『ああ。間違いない』
耳元で聞こえる、落ち着いた男の声。
WISEのエーススパイ、
〈黄昏〉——ロイド・フォージャー。
『今回の任務は単純だ。俺の行動確認と
周辺警戒。
表向きは“知人”として接触してくれ』
「了解です、先輩」
そう返しながら、私は自分の立場を
頭の中で整理する。
コードネーム〈IRIS〉。
WISE所属。
そして今は——
“リナ”という、ただの一般人。
インカムを切った直後だった。
「おねえさん!!」
勢いよく開いたドアから、小さな影が
飛び出してくる。
「わっ……!」
「りなのおねえさん! またきた!!」
ピンク色の髪。
大きな緑色の瞳。
——アーニャ・フォージャー。
「元気だね、アーニャちゃん」
そう言って頭を撫でると、彼女は満足そうに笑った。
……どうしてだろう。
この子の笑顔を見ると、胸の奥が
少しだけ痛む。
「ねぇねぇおねえさん!」
「ん?」
「おねえさん、すごいひとなんでしょ?」
「……え?」
「アーニャしってる。りなのおねえさん、
つよい」
心臓が、ほんの一拍遅れて鳴った。
「そんなことないよ。ただの会社員。」
笑って誤魔化す。
それが“リナ”の役目。
「リナさん、どうぞ」
家の中から声がする。
ロイド・フォージャー。
完璧な父親の顔で、私を迎え入れた。
「失礼します」
軽くお辞儀をし、リビングに
足を踏み入れる。
食卓には湯気の立つ料理。
キッチンを見ると、1人の女性が
人数分の飲み物を準備している。
「いらっしゃいませ、リナさん!
すみません、私何も用意できて
ないんですが…」
ヨル・フォージャー。
穏やかな笑顔。
——この時の私は、まだ知らなかった。
彼女が、どんな“顔”を持つ人間なのか。
「おじゃまします。ヨルさん」
何事もない、平凡な夕食。
会話も、笑い声も、どこまでも自然で。
——完璧すぎる。
スパイとしての直感が、微かに
警鐘を鳴らす。
この家は、
嘘で作られている。
それなのに。
「ねえ、りなのおねえさん」
食後、アーニャちゃんが私の袖を引いた。
「なあに?」
「……おねえさん、べつのなまえ
もってる?」
一瞬、世界が止まった。
「……どうして、急に?」
「あばば…ええと、… ええと…テレビ!
バンドマンが つよいひとは、かっこいい
なまえもってるっていってた!」
——違う。
この子は今明らか私のコードネームを
探っていた。…いや、ただの子供だ。
なのに、どうしてこの子は——
「アーニャさん、ダメですよ?
あまり人のプライベートにはーーー」
ヨルさんの声に、アーニャちゃんは慌てて口を塞ぐ。
「ち、ちがう! アーニャなにも
いってない!」
アーニャちゃんはそうごまかす。
誰も、深くは追及しない。
……私以外は。
〈IRIS〉。
その名を知っているのは、WISEの人間
だけのはず。
この家は、
思っていたよりずっと危うい。
そして私は——
知ってはいけない場所に、
一歩、踏み込んでしまったのかも
しれない。
本名:ミラ・ヴァイス
偽名:リナ・スターリング
コードネーム:〈IRIS〉アイリス
WISEでは〈IRIS〉、
フォージャー家では
「リナ・スターリング」、
そして誰にも呼ばれない
本当の名前——ミラ・ヴァイス。
⚠︎この夢小説は原作とは一切関係 なし。
⚠︎主、アニメ「SPY×FAMILY」
season3までの知識のみ。
⚠︎自己満足夢小説
コメント
6件
えっ、スパファの、夢小説!すっごぉぉぉ、!!いです! 神作の予感しかしない!
あばばば!神小説の予感!続き楽しみにしてます!

最高すぎますっ…😖💖 続き楽しみに待ってます!