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瑠衣が拉致され行方不明になった翌日、侑と奏は警察署へ向かった。
奏の恋人、怜も一緒に来て、今は侑の自宅で待機している。
侑と奏が取り調べ室に入り、捜査員から多くの質問をされ答えていくと、後方に控えた警察官がパソコンで調査内容を打ち込んでいく。
ネット犯罪の可能性が高いと見た捜査員が特殊な機械を持ち込み、瑠衣の携帯番号を入力して居場所を検索している。
機械を睨むように見やった捜査員が顔を顰めながら答えた。
「ふむ……もしかしたら、被害者の居場所が特定できにくいアプリを、犯人が被害者のスマホに仕込んでいるかもしれませんね。ですが、我々も全力で捜査させて頂きます」
事情聴取は二時間ほど続き、捜査員が『動きがあり次第、すぐに連絡させて頂きます』と言い、会釈する。
「お願いします。何としてでも彼女を見つけ出して下さい……!」
「瑠衣ちゃんを……見つけて下さい。よろしくお願いします……!」
侑に続き、奏も頭を下げて捜査員に一礼すると、侑と奏は取り調べ室を後にした。
外へ出ると、自宅にいるはずの怜が、警察署の前でスマホを触りながら待っていた。
「気になったから来てみた。九條さんの件で何か進展はあったのか?」
怜の問いに奏は肩を落とし首を横に振るが、侑は気丈に振る舞っているのか、いつも通りの淡々とした面差しのままだ。
「どうやら瑠衣のスマホに、居場所を特定しにくいスマホアプリを入れられた可能性があるようだ。どこにいるのか分からなかった……」
「瑠衣ちゃん……無事だといいんだけど……」
「…………そうか」
重苦しい空気の中、三人は東新宿の侑の自宅へ徒歩で戻るが、足取りは鉛のように重たい。
「とにかく……瑠衣が無事に戻ってきて欲しい。それだけだ」
「あとは警察の方に任せるしかないだろうな……」
「瑠衣ちゃん……」
それ以降、三人は沈黙を保ったまま、侑の自宅へ戻ると、怜と奏はガレージに停めてあった白のセダンに乗り込んだ。
「侑、気を落とすなよ。九條さん、きっと見つかる。何かあったらすぐに連絡してくれ」
「ああ。今日はわざわざすまなかった。気を付けて帰れよ」
「響野先生、お疲れ様でした。失礼します」
怜の愛車が滑らかに発進したのを侑は見送ると、大きなため息を吐き、自宅へと入っていった。