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コメント
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読了したよ〜〜!!📚✨ 今回もめちゃくちゃ背筋ゾワゾワした…!!「本を読んだ記録が燃える」っていう発想、怖すぎて鳥肌立ったんだけど、それに対して「火葬に見えた」って表現する水瀬さんの感性がもうね……天才か??😭💕 篠田さんの電気料金の封筒を「保護した」って言い切る強引さ、ヤバいのに胸がギュッてなったよ。救いは本人の許可を待ってたら間に合わない、か…正しすぎて言葉が出ん。続き気になりすぎる!!!🫶✨
図書館では、人はよく消える。
本を借りる。 本を返す。 予約する。 延滞する。 そして記録から消される。
職員はそれを個人情報の保護と呼ぶ。 一定期間が過ぎれば、誰がどの本を借りたかは残らない。 正しい。 とても正しい。 正常な人間が作った、正常な仕組みだ。
だが私には、それが火葬に見えた。
この本を誰が読んだのか。 どのページで手を止めたのか。 どの一文を嫌ったのか。 どの挿絵を長く見たのか。 読み終えて、何を思ったのか。
すべて燃える。
紙は残る。 題名も残る。 著者名も、分類番号も、バーコードも残る。
読む人間だけが消える。
その日、返却棚に『海辺の町の記憶』があった。
私は手を止めた。
篠田さん。
三日前、私は篠田さんの部屋でその題名を見ていた。 畳の上。テレビ台の横。背表紙が少し日に焼けていた。 篠田さんは「昔の港に似とる」と言っていた。
私は貸出履歴を見た。
表示されない。
個人情報保護のため、返却後の貸出者情報は閲覧できません。
閲覧できません。
誰が決めた。
篠田さんが読んだ本だ。 篠田さんの目が文字を追った本だ。 篠田さんの中にあった海と、この本の海が少しだけ重なったはずだ。 それを、閲覧できません、で終わらせるのか。
私はカウンターの下で手帳を開いた。
篠田重吉。 『海辺の町の記憶』を読んだ。 昔の港に似ていると発言。 返却記録は消される。 危険。
同僚の川上が声をかけてきた。
「水瀬さん、またメモですか」
私は手帳を閉じた。
「業務です」
「最近、本当に大丈夫ですか」
大丈夫。
正常な人間は、すぐそれを聞く。 大丈夫か。 休んだ方がいい。 考えすぎだ。 無理しないで。
その言葉は優しい。 優しいが、何も見ていない。
「川上さん」
「はい?」
「あなたは、昨日返却された本を誰が読んだか、気になりませんか」
川上は困ったように笑った。
「まあ、仕事上は必要ないですから」
必要。
必要とは何だ。
誰かの私が一冊の本に触れて、何かを思い、それが跡形もなく消されることは、必要ではないのか。
私はその時、川上の名前も手帳に書こうと思った。 川上。 年齢不詳。 前髪が少し曲がっている。 他人の読書を必要ないと言った。 危険。
だが書かなかった。
まだ川上は薄い。 救うには、材料が足りない。
勤務後、私は三〇七号室へ向かった。
呼び鈴は押さなかった。
廊下の端から、篠田さんの部屋を見た。 表札。 篠田。 郵便受け。 玄関横の傘。 昨日と同じ位置。 傘の先に乾いた泥。 ドアノブの下に、白い封筒が挟まっていた。
電気料金のお知らせ。
私はそれを見た瞬間、喉が冷たくなった。
もしこのまま封筒が落ちたら。 風で飛んだら。 誰かに踏まれたら。 篠田さんが見ずに捨てたら。 その日の篠田さんの生活が、一つ欠ける。
欠けたものは戻らない。
私は封筒を抜いた。
盗んだのではない。
保護した。
封筒には、篠田重吉様、と印字されていた。 篠田重吉様。 様。 まだ彼ではない。 まだ呼ばれている。 まだこの世界のどこかから、篠田さんに向けて言葉が届いている。
私は封筒を鞄に入れた。
あとで写せばいい。 写したら戻せばいい。 正確に残すためだ。 救うためだ。 誰にも知られなくていい。 篠田さん本人にも知られなくていい。
救いは、本人の許可を待っていたら間に合わない。
階段を降りる途中、私は足を止めた。
いま、私は何を書いた。
救いは、本人の許可を待っていたら間に合わない。
その文は、私の中で妙に明るかった。
あまりに明るくて、黒に見えた。