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coco🌹🫶
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#コメディ時々暗闇
奏音•*¨*•.¸¸♬︎💙
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#妖怪
百はな🍑
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イザリオたちを乗せたオルシオンが王都を目指して航海を続ける一方、王都では、奉祝に沸いていた街の様相が一変していた。夜空を鮮やかに彩っていた七色のエルフバリアの輝きが、ゆっくりと薄れていく。
つい先ほどまで街路にあふれていた人々の歓声も、リヴァンの緊急記者会見を境に、不安げなざわめきへと変わり始めていた。
そして、国王不在のまま執り行われた王位継承の儀式。その前に発令された非常事態宣言によって、王都を包んでいた祝賀ムードは、すっかり失われていた。人々は足早に家路を急ぎ、賑わっていた通りから次々と姿を消していく。代わって住宅街の上空を巡回し始めたのは、監視ドローンだった。
低い駆動音を響かせながら夜空を飛び交い、機体に搭載されたスピーカーから警告を繰り返している。
『非常事態宣言発令中。国民は不要不急の外出を控え、屋内にとどまってください』
『デマや虚偽情報の拡散に注意してください』
『政府の指示に従わない者は、状況に応じて身柄を拘束する場合があります』
冷たい警告が街に響くたび、王国の日常が少しずつ失われていくようだった。
王都リュカ街。とあるマンションの一室――。
王なき戴冠式が終わっても、スメラはソファーから立ち上がれずにいた。画面には、王国政府の紋章が映し出されていた。その下では、非常事態宣言を告げるテロップが繰り返し流れ、無機質な自動音声が国民に政府の指示に従うよう呼びかけ続けていた。つい先ほどまで、この画面にはイザリオ王子とエルファーナ王女が映し出されていた。国王陛下の姿はなく、王位譲渡の誓書が読み上げられ、首相官邸で戴冠式が執り行われた。その異様な光景が、今もスメラの脳裏に焼きついていた。そして、もう一つ。記者会見で目にした、リヴァンの眼。赤黒く揺らぐ、あまりにも異様な瞳だった。
(リヴァン……。あの赤黒い眼の侵食が、ここまで進んでいたなんて……)
胸の奥が締めつけられた。長年、誰よりも近くで彼を支えてきたスメラは、以前からその異変に気づいていた。それでも、彼の中には、まだ理性が残されていると信じていた。
戦争のない平和な世界を築く――。
かつて、そう熱く語っていた彼の理想も、完全には失われていないはずだった。だが、今夜の記者会見は違った。国民に安心を与えるどころか、恐怖を植え付け、政府に従わない者には拘束をちらつかせる。そして、国王不在のまま執り行われた戴冠式。
(あなたの中に、まだ本当のリヴァンは残っているの……?)
スメラは、そっと目を閉じた。脳裏によみがえるのは、穏やかな笑みを浮かべながら、王国の未来を語っていたあの頃のリヴァン。それなのに、今は、頬は痩せこけ、目つきは鋭く変わっていた。以前より明らかに筋肉質になった体には、どこか人ならざる禍々しさが漂っている。
(心だけじゃない。体まで変わり始めている……)
そのとき、かつて首相官邸の図書室で目にした禁書の一節が、脳裏によみがえった。
――《赤黒い眼》は、人の心の闇に寄生する意識体。
宿主の理性を徐々に侵食し、やがて力への渇望と、他者を支配しようとする衝動を生み出す。
そして、宿主を通じて世界に干渉するという。
(理性の侵食。そして、支配への欲望……)
スメラは目を開き、画面に映し出された王国政府の紋章を見つめた。今夜の記者会見。そして、国王不在のまま強行された戴冠式。そのどちらにも、禁書に記されていた赤黒い眼の特徴が重なっていた。だが、一つだけ、気になることがあった。リヴァンの身体に現れた変化だ。
(禁書には、肉体が変化するなんて書かれていなかったはず……)
スメラの背筋に冷たいものが走った。
(まさか……精神だけでなく、肉体まで侵食され始めているの……?)
もし、そうだとしたら。
この先、リヴァンはどうなってしまうのだろう。
(獣化……?)
その言葉が脳裏をよぎった瞬間、スメラは小さく首を振った。
(いいえ……まだ、そうと決まったわけじゃない)
禁書には、そんな記述はなかった。だが、目の前で起きている変化を、単なる思い過ごしとして片づけることもできなかった。もし、あの赤黒い眼がリヴァンの心も体も完全に支配してしまったら――。その先に待つものを想像するだけで、胸が苦しくなった。
(そんなこと、私は耐えられない……)
スメラは、ゆっくりと拳を握りしめた。
(いいえ……きっと、まだ間に合う)
彼の中には、まだわずかでも理性が残っているはずだ。
そう信じたかった。
(必ず、あなたをあの赤黒い眼から救い出す。そして、これまで犯してきた罪は、きちんと償ってもらう)
たとえ、再び彼と敵対することになろうとも。もう、見過ごすわけにはいかなかった。スメラは決意を固め、ソファーから立ち上がった。そしてクローゼットを開き、王宮付き護衛官時代の制服を取り出した。
かつて、イーサム王の側に仕え、王家を守るために身にまとっていた制服だった。スメラは、懐かしそうに袖を通した。
(陛下……)
記者会見で告げられた、国王が魔物に襲われたという知らせが、再び胸を締めつけた。
(どうか、ご無事でいてください……)
スメラは制服を強く握りしめた。かつて、王家を守るために誓った忠誠。
その思いは、今も変わっていなかった。
腰には護衛用ロッドを装着した。
そして、クローゼットの奥に収めていた愛用の弓を手に取った。
王宮護衛官時代、幾度となく訓練を重ね、腕を磨いてきた得意の武器だった。
スメラは弓の状態を確かめると、矢筒を背負い、弓を肩に掛けた。
鏡の前に立つ。
そこには、かつて王宮で任務に就いていた頃の自分が映っていた。
(私はもう、王宮護衛官でも、秘書官でもない)
スメラは、鏡に映る自分をまっすぐに見据えた。
(それでも、この弓を手にする理由は、今も変わらない)
「リヴァン。必ず、あなたをあの赤黒い眼から救い出してみせる」
そのときだった。
静まり返った部屋で、机の上のスマートフォンが震えた。
「ブルルッ――」
画面に表示された名前。
――ラッセル・ヴァイン。
スメラはすぐに通話をつないだ。
「スメラ。今すぐ地下組織のアジトへ来てくれ」
ラッセルの声には、いつになく緊迫した響きがあった。
「ラッセル! 私も今、動こうと思っていたところなの。早くリヴァンを止めないと! このままじゃ、彼は人間でなくなってしまうかもしれないわ!」
「落ち着け、スメラ」
ラッセルは低い声で制した。
「今、最優先すべきは王立科学アカデミー研究所だ。陛下の安否を確かめ、ジン博士の所在も確認しなければならない」
「でも、陛下は負傷されて、すでに王宮へ戻られているんじゃ……」
「それを、誰が保証する?」
スメラは言葉を詰まらせた。
「俺たちは知っている。リヴァンが赤黒い眼に侵されていることを。そんな状態のあいつが発表した情報を、そのまま信用するわけにはいかない」
「……それは、わかっているわ」
スメラは視線を落とした。
「でも、リヴァンはまだ完全に支配されたわけじゃない。あの人の中には、きっと……」
「そうかもしれない。だが、今のあいつが自分の意思で話しているのか、それとも赤黒い眼に操られているのか、俺たちには判断できない」
「それでも……!」
スメラは思わず声を強めた。
「私は信じている。あの人の中には、まだ人としての心が残っているって!」
通信の向こうで、ラッセルが沈黙した。
「……あの人は、誰よりも平和を願っていた。科学の力で戦争のない世界を築くんだって、何度も私に話してくれたのよ」
スメラの声が震えた。
「そんな人が、国王陛下を陥れたり、国民を恐怖で支配したりするなんて……本当のリヴァンが望むはずない!」
「……俺も、そう信じたい」
ラッセルは静かに答えた。
「だが、信じることと、今のあいつの言葉を信用することは別だ」
スメラは息を呑んだ。
「考えてもみろ。陛下は家政婦モンスター計画の視察で王研を訪れたんだ。研究対象のモンスターは、研究員たちによって厳重に管理されているはずだ。それなのに、なぜ陛下が魔物に襲われた? しかも、その直後に王位継承の儀式が執り行われている」
ラッセルの声が低くなった。
「偶然にしては、出来すぎていると思わないか?」
「……まさか、リヴァンが?」
「まだ何もわからない。だからこそ、調べる必要がある」
ラッセルは一度言葉を切った。
「それに、ジン博士のことも気になる」
「ああ。リヴァンは記者会見で、ジン博士が行方不明になったと発表していた。だが、俺にはどうにも腑に落ちない」
「どういうこと?」
「博士とは以前から連絡を取り合える間柄だ。研究について話を聞いたこともある。そんな博士が、陛下の視察に関わる時期に行方不明になったというんだ」
ラッセルの声が険しくなった。
「陛下が魔物に襲われたという発表といい、偶然とは思えない」
「博士の失踪と、陛下の襲撃が関係しているというの?」
「可能性はある。だからこそ、博士の所在を確かめたい。あの人なら、王研で何が起きているのか、何か知っているかもしれない」
スメラはしばらく黙り込んだ。
「博士には連絡してみたの?」
「ああ。だが、まだ本人とは話せていない」
ラッセルは低い声で続けた。
「博士の失踪が事実なのか、それとも政府が何かを隠しているのか。まずは、そこから確かめる必要がある」
「でも……その間にも、リヴァンの侵食が進んでしまったら?」
ラッセルはしばらく沈黙した。
「俺だって、あいつを救いたい……」
その声には、苦しげな響きがあった。
「だが、今のあいつは、一人で止められる相手じゃない。お前が官邸へ向かったところで、どうなるかわからない」
「私は、あの人を助けたいだけなのに……」
スメラの目に涙がにじんだ。
ラッセルは、少しだけ声を和らげた。
「その気持ちは、俺にも痛いほどわかる。だからこそ、まずはアジトへ来てくれ。仲間たちと情報を整理し、王研へ向かう方法を考える」
「リヴァンは?」
「必ず救い出す」
ラッセルは迷わず答えた。
「だが、そのためにも、まずはあいつが何をしようとしているのかを知らなければならない」
「もし、その間に、赤黒い眼がリヴァンの心を完全に奪ってしまったら?」
通信の向こうに、短い沈黙が流れた。
「信じよう。あいつの中に、まだ理性が残っていることを」
スメラは目を閉じた。
リヴァンを救いたい。
その思いは、少しも変わらない。
だが、国王陛下の身に何が起きたのかも、確かめなければならなかった。
かつて王宮付き護衛官として仕えた自分には、その責任がある。
「わかったわ。すぐにアジトへ向かう」
「ああ。待っている」
通話が切れた。
スメラはスマートフォンを机に置き、制服の襟元を正した。鏡に映るのは、かつて王家の護衛を任されていた頃の自分だった。だが、あの頃とは違う。今、守るべきものは、王家だけではない。王国に暮らす人々の命。そして、赤黒い眼に侵されながらも、まだ人としての心を失っていないと信じるリヴァン。
(リヴァン……。必ず、あなたを救い出す)
スメラは静かに拳を握りしめた。
(そして、あなた自身の意思で、これまで犯してきた罪と向き合ってもらうから)
彼女は護衛用の装備を確かめ、部屋の扉へと歩き出した。窓の外では、監視ドローンの冷たい警告が、今も夜の王都に響き続けていた。
コメント
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お疲れさま、62話読み終えたわ! スメラが旧制服を身にまとうシーン、めっちゃグッときた。かつて王家を守った誇りが今また蘇る感じ、熱いわ…。リヴァンを信じたい気持ちと、現実を受け止める覚悟の狭間で揺れる心情描写が丁寧で、読んでて胸が苦しくなった。 ラッセルとの通話もテンポ良くて、それぞれの立場の違いがくっきり見えたのがよかった。次、どう動くのか楽しみ!