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ポートタワーを出た二人は、暗くなるまで、ハーバーランドで過ごす事にした。
優子は、お洒落な雑貨店で、折りたたみ式の晴雨兼用傘を買い、拓人は、有名ブランドのサングラスを購入。
「今年の夏は、ヤバいよな。俺、サングラスって、滅多にしないんだけどさ、この時期、日中に運転するとなると、やっぱグラサンは必要だよな」
男が、買ったばかりのサングラスを、首元に差し込み、手で顔を仰ぐ。
「アンタがグラサン掛けたら、ますます胡散臭い男に見えそうだけどね」
「何だよそれ」
「思った事を言ったまでだよ?」
優子がツンと顔を背けると、拓人がグイッと肩を抱き寄せる。
「…………俺をおちょくった罰として、今夜はお仕置き決定な?」
「もうっ! やめてよね!」
彼女の耳元に男が甘く囁くと、優子の顔の中心に熱が集まってくる。
関西に来てからも、夜になると優子は抱かれ続け、拓人の性欲の強さには、彼女も呆れるくらいだ。
けれど、女の悦ぶツボを知っている男に抱かれると、優子は我を忘れ、快感の坩堝へ吸い込まれてしまう。
(今夜も激しそう……)
彼女は拓人に対して、顔を引きつらせて笑みを浮かべるしかなかった。
夜の帷が降りた頃、ハーバーランドを出発した二人は、再びポートタワーへ戻ってきた。
色彩豊かな光を纏った神戸の街並みは、夜の装いに変化させ、煌々と輝く光の粒子は、ジュエリーボックスから宝石が溢れているよう。
拓人が、優子の手を取り、のんびりとタワー周辺を歩く。
「神戸の夜景は、横浜と違った美しさかも……」
言いながら思い出すのは、元上司の松山廉と、横浜で一夜を過ごした同伴の時の事。
胸がギュッと痛くなるような切ない時間を、優子の中では鮮やかな思い出として、残ったままだ。
(何を考えてるんだ、私……)
優子は、燻っている思いを振り切るように、かぶりを振った。