TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

~~~


 俺の目の前には、昨日までのヘンリー達が住んでいた家とは違う景色が広がっている。部屋の隅に置かれている鏡にはルイスの体が映し出されていた。

その様子は、昨日見たヘンリーとローズの未来に期待を乗せていた時とはガラリと変わり、何だかひどく疲れている様に見える。


俺(ルイス)は受話器を取り、誰かに電話をし始めた。

「おはようヘンリーくん。ちょっと2人きりで話したいことがあるんだ。今日の夜、例のバーにこれるか?」

電話の相手、ヘンリーはこう返した。

「もちろんです。声に元気が無いようですが、大丈夫ですか?」

ルイスは「夜に話す」と言い、電話を切った瞬間目の前にモヤがかかった。


モヤが開けると昨日のバーにヘンリーと一緒にいた。正面に座っているヘンリーがルイスに話しかける。

「話とはなんです?やはり元気が無いように感じますが。まさか、あのジャケットの件ですか。」

ルイスはこう返す。

「あぁ、そうだ。俺も夢を見たよ。スクールに通っている、多分君の見ていた青年と一緒だ。」

ヘンリーはこう返す。

「泣き虫の青年ですね。ルイス課長も同じ景色を見たなんて。彼、些細なことで泣き出してしまうでしょう?なかなか大変そうですよね。」

ヘンリーの言葉を聞き、ため息をついたルイスはこう返した。


「彼、首を吊ったよ。鏡の前で、泣きながら、笑顔で。」


2人の間に静寂が訪れる。そして目の前にモヤがかかり、モヤが開けるとルイスの自宅の景色が広がった。

1人で飲み直しているのか、テーブルには空き瓶が転がっている。そしてルイスは独り言をこぼしていた。

「ヘンリーのやろう!とんでもないものを俺にくれやがって!俺が呪われたらどうするんだ!」

すると電話機から電話がかかってきた。ルイスは乱暴に受話器をとる。

「どちら様ですか!?こんな夜遅くに!」

電話の相手は弱々しくこう答えた。


「ローズよ、パパ…。殺される。助けて。」


一気に酔いが覚めたルイスは電話に向かってこう叫ぶ。

「何があったんだローズ!?今どこにいる!?」

ローズはこう答える。

「ヘンリーと私の家…。ヘンリーも撃たれた…。私、死にたくないよ…。」

ルイスは「ローズ!」と叫ぶが、これを最後にローズの声は途切れてしまった。 

ルイスはバッドと銃を持ち、ヘンリー達の住む家に向かうため車に乗り込んだ。ここでまたモヤがかかり、開けるとヘンリー達の家の前にいた。


家に入りルイスがリビングに駆け込むと、そこにはすでに頭を撃ち抜かれ、絶命しているであろうヘンリーが血溜まりの上に倒れていた。

「そんな馬鹿な、ヘンリー…」

そう呟くルイスの後ろから男が近づいてきて、ルイスに話しかける。


「ルイス課長のせいですよ。あなたが勝手に、強引にヘンリーとローズをくっつけたから。俺はローズのことが好きだったのに!」 


ルイスが振り向くと、そこには涙を流しつつも笑いながらこちらに銃を構えている、ヘンリーの同僚、ロイの姿があった。 


~~~

 

「うわぁぁああ!!!」 


 俺は飛び起きた。何だ今のは。ヘンリーとローズ、そしてルイスがロイに撃たれたのか。なんて夢だ。 


もう、とても俺の想像の中の夢だとは思えない。あれは目の前のクローゼットにかかっている、あのジャケットの前の持ち主達が実際に見た現実なんだ。

あのジャケットはきっと、夢の中でヘンリー達が言ってた泣き虫の青年の呪いがかかっている。そうなれば、俺も誰かに殺される?

俺が考えていると横で寝ていたマナミが、目を擦りながら驚いた様子でこう聞いた。

「どうしたのタカト?変な夢でも見た?」

どうやら俺の叫びで起きてしまったらしい。俺はこう返した。

「ごめん。ちょっと怖い夢を見てた。大丈夫だから気にしないで。」

そうだこれは単なる夢だ。呪いなんてあるわけない。俺は心配そうにしているマナミをもう一度寝かせつけると、仕事の支度をして家を出た。

 


 現場に着くと、何やら人が集まり騒いでいる。何かあったのか。俺はタカハシさんの元へ行き、事情を聞いた。

どうやら昨晩、現場周辺から男の遺体が見つかったそうだ。身元はすでに割れており、なんとあのジーンズが見つかった空きスペースに店舗を持っていた店の店主らしい。

彼は生前借金の影響でヤクザと揉めており、返さなければ資産を没収すると脅されていたそうで、そのうちの一つが現場から見つかったあのジーンズだったそうだ。そしてタカハシさんはこんな話も聞いたらしい。 

「死因の詳細とかはまだ分からないんだが、遺体はズボンを履いてなかったらしい。ヤクザに殺された後脱がされたのか、はたまた自死をする際にジーンズだけ空きスペースに隠したのか。前者なら何故押収されずに空きスペースにジーンズがあったんだろうな。」 


確かにおかしな話である。俺たちが遺体について話していると、エンドウさんが近づいてきてこう言った。

「あのジーンズを貰わなくて良かったよ。きっと遺体で見つかったやつの怨念が憑いているだろうからな。」


いつもならこんな話されても流すだろうが、今回ばかりはそうはいかなかった。例のジャケットが頭をよぎるからである。  

何でこのタイミングでこんなことに巻き込まれるんだよ。誰かに相談したいが、マナミに相談するのはなんか違う。適当に流されてしまいそうだ。

ならばミズキか。そもそもあのジャケットはミズキに勧められて買ったものなのだから、俺の相談相手になる義理があるはずだ。


俺はミズキに連絡し、今日の夜にミズキの家で話を聞いてもらうことにした。


loading

この作品はいかがでしたか?

35

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚