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数日ほど前に送られてきた純からのメッセージで、奈美が大分窶れた事を知り、豪は彼女の身体を気遣った。
「この暑さで……体調崩してないか?」
『大丈夫です。今は……普通に食事できるので……』
(今は、って事は…………それまで食事が摂れなかったという事……なのか?)
大丈夫との事だったので、彼も少しホッとした。
「……何回か電話してくれたんだな。ありがとう」
純からメモを貰い、電話をかけてくれた奈美の表情を浮かべる。
『すみません……着信履歴、けっこう残してしまって……迷惑ではなかったですか……?』
「迷惑だなんて全く思ってない。俺が……君からの電話を待っていたのに、折り返しすらできなくて申し訳ない」
夏季連休明けの仕事は、初日から精神的にキツかった。
向陽商会ホームページの問い合わせ欄に、豪に対する誹謗中傷の書き込みがあり、事実確認で上層部からの呼び出し。
書き込み発覚当日、駅の改札前に、元カノの優子が待ち伏せしていた事。
捜査の立ち会いと、警察署で事情聴取。
かつての恋人の逮捕。
滞ってしまった業務をこなすための残業。
全てにケリを付けたら奈美に必ず電話する、と何度も言い聞かせてきた。
やっと身の回りが落ち着き、いざ電話をしても何を話せばいいのか分からず、互いに沈黙する。
電話口の向こう側から、鼻を啜る音が僅かに聞こえた気がした。
(奈美は……泣いてるのか?)
豪は堪らず、
「……奈美? 大丈夫か?」
と聞くと、彼女は、
『だっ……大丈夫…………です』
と、心なしか声が震えているようだ。
明日は金曜日。
早く奈美に会いたい気持ちが募り、豪は思わず口走っていた。