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「奈美。明日、仕事の後に会えないか?」
『えっ? 明日……ですか!?』
唐突な誘いに、彼女は驚いているのか、声が上ずった。
「俺から奈美に、話したい事がたくさんある。できれば……明日の夜から日曜日まで……君と一緒に過ごしたい」
彼女に何も言わず、元カノの優子と会っていた事を謝りたかった。
「無理に、とは言わない。奈美も予定があるかもしれないだろうし……」
『…………』
奈美は無言だった。
(俺と会う事を、迷っているのだろうか……?)
豪は勘繰ってしまう。
彼女と最後に会った、というよりも見たのは山の日。
奈美とずっと一緒に過ごしたのは、互いの想いを通わせたあの日以来。
もう一ヶ月近く前の事だ。
今の電話もそうだが、二人の間に流れる空気は重く、気まずい。
この空気を、彼は一刻も早く取り除きたかった。
ダメもとで、もうひと押ししてみる。
「明日の夜から日曜日まで、奈美の時間を…………俺にくれないか……?」
やっぱりダメか? と半ば諦めた時。
『あの…………一度仕事から帰って準備してからでもいいですか? トナーで顔が汚れたまま、豪さんと会うのは恥ずかしいので……』
奈美がおずおずと答えると、何だ、そんな事を考えてたのか、と安堵した。
「全然いいよ。なら、明日は…………俺の家で過ごそう」
『え? 豪さんの自宅ですか? いいんですか?』
「もちろん。奈美は俺の彼女だろ? 違うか?」
『…………』
突然、彼女と言った事がまずかったのか、奈美をまた無言にさせてしまった。