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#普通
野々さくら
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ありあ
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そして坪野は静かに手を打った。
──パン!
「さぁ・・無駄話はここまでです」
ゆっくりと怪異探求倶楽部へ視線を向ける。
「君たち・・やってください」
その合図を待っていたように、側近二人が一歩前へ出た。
「はい!」
懐から拳銃を抜き、一斉に皆へ銃口を向ける。
龍河が思わず声を上げた。
「なっ!!」
茜も顔を青ざめさせる。
「まじでか!?」
だが坪野は、落ち着き払った笑みを浮かべていた。
「大丈夫です・・安心してください
殺しはしませんよ・・・」
一拍置き、穏やかな口調のまま続ける。
「しかし、しばらく大人しくしていてもらいますよ」
信愛は唇を噛み締めた。
「こんな事をしたって──」
その瞳には怒りと悲しみが宿る。
「死んだ村民は帰ってこないんですよ?」
その言葉に、坪野は高らかに笑った。
「わはははは」
笑い終えると、静かに首を振る。
「私は別に村民を蘇らせたい訳ではありませんよ」
「ただ・・・浄化したいだけです」
信愛は目を見開いた。
「浄化?」
「そうです・・・」
坪野はゆっくりと信愛を見つめる。
「白縫信愛様、あなたは授かった特別な力を使い
数え切れないほどのものを視てきたはずです」
信愛は静かに頷く。
「そ、それは・・・」
坪野は穏やかに続けた。
「目を背けたくなるような
辛く悲しいものばかりだったでしょう?」
信愛は静かに息を吸い込んだ。
「確かに、あなたの言う通りです
私は色んな人や霊を視てきました」
ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「自分が死んだことにも気付かず
帰ってくるはずのない、たった一人の
母親を待ち続けた女の子の霊」
「自殺に見せかけて殺された女の子の霊」
「虐待の冤罪で、愛する息子と引き裂かれた女性」
「生まれた順番が遅かったという理由だけで
奴隷として生きることを義務付けられた子供の霊」
「バスジャック事件に巻き込まれ、自分の命と
引き換えに乗客を守り、英雄と称えられ
それに、長い間一人で苦しめられ続けた男性の霊」
信愛は拳を握り締めた。
「この目で・・・色々視てきました」
坪野は静かに頷く。
「そうです・・・君が視てきた人や霊は
本来なら手を取り合い、支え合って生きていけた
はずの同族によって、酷い仕打ちを
受けた者たちばかりだったでしょう?」
信愛は返す言葉を失う。
「そ、それは・・・」
坪野は低く言い放つ。
「霊は霊として生まれた存在ではありません
人が、人を霊にするんですよ・・・」
その声には確信が宿っていた。
「一番の戦犯は・・人間なんです」
部屋の空気が張り詰める。
坪野は全員へ視線を向けた。
「君らが視てきた人や霊も、新開村の村民たちも
人間がいなければ、失われなかった命だった!
今もなお、その足で立って歩き
生きていけるはずの命だったんです!!」
静寂が流れる。
坪野は静かに両腕を広げた。
「今、我々が暮らしている世界は失敗作なんです
ですからね・・リセットする必要があるんですよ」
その声は狂気ではなく、本気だった。
「修理固成は、今の日本を立て直す唯一の手段
恵まれすぎて、当たり前のことさえ
忘れてしまった人間は葬り去るべきなんですよ」
信愛は怒りを抑えきれず叫ぶ。
「だから修理固成って、そんな極論おかしい!」
坪野は静かに問い返した。
「本当にそうでしょうか?」
「え?」
「考えてみてください」
坪野は窓の外へ視線を向ける。
「我々が暮らすこの日本という国は
『スクラップ・アンド・ビルド』を何度も繰り返し
ここまで発展してきたと言っても過言ではありません」
再び部屋の中に向き直る。
「不要なものを壊し、新しく創り固め直す
それが、この日本という国なんですよ」
一拍置いて、静かに微笑む。
「言葉を変えるならば・・・この国は
『スクラップ・アンド・ビルド』という名の
修理固成を何度も繰り返してきたとも言えるのです」
坪野は静かに語り続ける。
「そんな修理固成が、古くより
根付いているこの国に生まれた人間が
修理固成という『発展』へ行き着く」
口元に薄い笑みを浮かべた。
「これは極めて普通なルートだと思いますがね?」
信愛は言葉を詰まらせる。
「そ、それは・・・」
坪野は畳み掛けるように続けた。
「村を潰してダムを造り、森林を伐採して街を築く
これまで散々、修理固成を繰り返して来ました」
静まり返った部屋に、坪野の声だけが響く。
「我々はそれを『発展』と呼んで正当化し
必要な犠牲なのだと受け入れてきた筈です
それによって生まれた『恩恵』を
少なからず受けている訳ですからね・・」
信愛は何も言えない。
ただ、唇を強く噛み締めるだけだった。
坪野はその沈黙さえ自分の理論を補強する材料に変えていく。
「しかし、いざそれが自分たちに向いた瞬間に
『おかしい』『間違ってる』と否定するのは
少々傲慢だとは思いませんか?」
信愛は必死に反論しようとする。
「でも、それを人に対してやるのは話が──」
坪野は言葉を遮った。
「では、お聞きします」
一同へ視線を巡らせる。
「牛や豚や鶏、魚や森の動物達
人類はこれまでに数え切れない程の
他種の命を犠牲にしてきたのでは?」
信愛はすぐに答えた。
「それは生きる為に──」
「違います」
坪野はきっぱりと言い切る。
「言いにくい様なら、私が代わりに言ってあげます」
一拍置く。
「それは『人間ではない』からです」
信愛は目を見開いた。
「え?」
坪野は淡々と語る。
「人間は人間ではない命を軽んじる生き物なんです
ですから、生きる為に必要な事だと自分勝手に
人間のエゴで命の線引きをし、何の躊躇いもなく命を奪うんです」
静かな声なのに、その一言一言が鋭く突き刺さる。
「それが、ついに我々人類へ向けられた
と言うだけの事。そうは思いませんか?」
信愛は俯いたまま、何も答えられなかった。
重苦しい沈黙が広間を支配する。
その様子を見た坪野は、小さく息を吐く。
「反論はない様ですね」
静かに踵を返す。
「それはすなわち、私の言葉を
受け入れたという事だと解釈いたします。
これ以上の問答は時間の無駄の様ですね」
そう言い残し、坪野はゆっくりと中庭へ向かって歩き出した。
信愛はなおも俯いたまま動けない。
その肩を、茜が強く叩いた。
「しっかりして、信愛」
さくらも力強く頷く。
「そうだよ!あんなヤツの言葉
真に受ける必要ないって!」
信愛は顔を上げ、小さく息を吸い込む。
「そ、そうだよね・・・」
瞳に再び決意の光が宿る。
「お、追いかけよう」
その声を合図に、一同は坪野の後を追って駆け出した。
コメント
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坪野の「修理固成」の理論、めちゃくちゃなようでいて、一つ一つの論理が綿密に組まれていてぞっとしました。人間のエゴを突きつけられて言葉を失う信愛の姿に、自分も同じように胸が詰まりました。でも、茜やさくらが肩を叩いて立ち直らせるシーン、ああいう仲間の存在が本当に救いですね。坪野の正体と、この先の決着が気になります。続き、楽しみにしています!