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──そして、ついに。

いつものように、席につく遥と日下部を囲むように、クラスの空気がねじれる。


その日は、「声出しゲーム」と名づけられた新たな“遊び”が始まった。


「じゃあさ、今日は“順番に、自分の思ってること言ってく”っての、どう?」


蓮司が、笑顔のまま、黒板の前で言う。教師は不在。誰も止める者はいない。


「最初は遥からな。“思ってること”、本音。ぜーんぶ。言ってみ?」


静まり返る空間で、遥は立たされ、皆の前に引き出される。後ろには日下部。彼も一緒に立たされている。ペアとして。


「……何を言えば」


「なんでもいいよ? たとえば、今、誰が嫌い、とか。あ、じゃあさ――『死にたい』って思ったこと、ある?」


蓮司の声が甘く、残酷な棘を含んでいる。


「言ってみなよ。『死にたい』って思ったこと、ある? ない? どっち?」


その場が静まり返る。遥の喉が動くが、声は出ない。


「言えよ。なあ、遥。クラスのみんなに伝えてみろよ。『死にたい』って」


蓮司の手が、背後から遥の肩を叩く。優しく、けれど命令のように。


日下部が一歩、前に出る。だが何も言わない。ただ、遥の隣に立つだけだ。


「……死にたいって思ったことなんて……ずっと……あるよ」


遥の声は掠れ、でもはっきりと聞こえた。


その瞬間、拍手が起きた。笑い声すら混じって。


「はーい、合格ー! じゃあ次は、日下部の番な。『遥と一緒にいたら、最悪なことばっかり起きる』って、言ってみ?」


誰も止めない。


日下部は、遥を見た。そして、クラスを一瞥する。


「……それでも、俺は一緒にいる」


その声には怒りも叫びもない。ただ、鈍く、沈んだ決意だけがあった。


静寂の中、蓮司だけが、笑っていた。


「そっか。じゃあ、次は“罰”な。また明日、続きしよっか。今日の反省、ちゃんと書いてきてね。“自分のダメなところ100個”、それが宿題」


──こうして、反省ショーは日常に組み込まれ、遥と日下部は、否定される声の中でなお、壊されていく日々に立ち尽くしていた。



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