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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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次の日、東京の大手アパレル会社の本社ビルの一室で、西村が難しい顔をしていた。

この部屋は優羽の元恋人、そして流星の父親である西村隆が社長を勤める『mountain top7』の社長室だった。


西村は深刻な顔をして部下の長谷部の報告を聞いていた。話を聞き終わると、


「じゃあ、大和翔真はブランドイメージキャラクターの話を断ってきたというのか?」

「はい、事務所を通して先程断りの電話を入れてきました」

「チッ、この仕事は翔真にとっても願ってもない話だと思ったんだがな」

「ですよね。大手のうちを敵に回すような事をしたら、ただじゃすまないのに。そこの所をわかっているんですかね?」


長谷部が言うと西村が言った。


「偶然売れたポッと出の俳優を起用しようとした俺達が馬鹿だったな。至急他の俳優を当たってくれ! 見かけだけじゃだめだぞ。ちゃんと本格的に登山やアウトドアをやっている有名人に絞ってくれ!」

「かしこまりました」


長谷部はそう言って頭を下げると社長室を後にした。


長谷部が出て行った後、西村は大きな革張りの椅子をくるりと後ろに向けて窓から外を眺めた。


東京の一等地にある高層ビルから見下ろす景色は、華やかで活気に溢れている。こんな景色が身近にある事を許されているのは自分ような地位の人間にのみ与えられる特権だと西村は思っていた。

そんな西村からのオファーを断るとは浅はかとしか思えない。


西村は椅子を正面に戻すと携帯で電話をかけ始めた。


「もしもし、父さん? 俺だけれど『Eエージェンシー』っていう芸能プロダクションを知ってる? 今度紹介して欲しいんだ。ああ、あと広告代理店の電広にも知り合いがいたよね? うん、そう。じゃあ近いうちによろしくお願いします」


西村はそう言って電話を切った。今西村が電話をかけた相手は、西村の実の父であり『mountain top7』の親会社でもある大手アパレルメーカーの会長の西村博だった。

先程までの不機嫌さはすっかり消え失せて満足気な表情を浮かべた西村は、今度は机の引き出しから大きな茶封筒を取り出した。

その封筒には『武田興信所』という名が印字がされていた。


西村はその封筒から二枚の写真を取り出した。

そしてその写真を思いつめたような表情でじっと見つめる。


西村が見ていたのは、優羽と流星が並んで歩く様子を隠し撮りした写真だった。

一枚は優羽が買い物途中に笑顔で流星に話しかけている写真、そしてもう一枚は保育園から優羽と流星が手を繋いで出て来る写真だった。


西村はしばらくその写真をじっと見つめた後、おもむろに椅子から立ち上がると窓辺へ近づいてビル群をじっと見下ろした。



それから二週間が経ち『peak hunt5』のカタログの見本が完成した。

見本はすぐに優羽の元に送られ、商品の色の映り具合や説明文の校正、そして表示金額等に間違いがないかをチェックする。


四カ所ほど間違いを見つけたので、訂正箇所を井上に報告しすぐに訂正してもらうようお願いした。

訂正後は岳大と井上に最終チェックをしてもらい、それでOKが出れば本刷りの印刷となりカタログが完成する。


この日優羽は昼休みにフロントのソファーで見本のカタログを見ていた。すると舞子と山岸夫妻が噂を聞きつけてやって来た。


「優羽ちゃん、カタログの見本が届いたそうね。私達にも見せてちょうだい!」


舞子が待ちきれないという様子で言ったので、優羽はどうぞと言い、カタログを手渡した。


舞子がパンフレットをめくり始める。その横で山岸夫妻も一緒に見ていた。

すると紗子が、


「優羽ちゃんと流星君がモデルになったと聞いた時は驚いたけれど、すごく素敵に撮れているわねー! 笑顔もとっても自然! さすが岳大さんだわ」


と言った。すると横で一緒に見ていた山岸も、


「本当だね。まさかこれが素人モデルだなんて誰も思わないんじゃないのか? 流ちゃんもとてもいい表情だ。それに夏樹君もイケメンでなかなか格好良く撮れているじゃないか」


と感心したように言った。パンフレットを次々とめくっていた舞子も、


「本当! 優羽ちゃんとっても可愛く写っているわ! なんか本当にモデルのスカウトが来そうね!」


と褒めたので、優羽は顔を真っ赤にしながら、


「やめてくださいよー。もうこの時は緊張でがちがちだったんですから」


と言って苦笑いをした。


優羽が改めてパンフレットを見ると、どの写真も素人モデルがやっているとは思えないような仕上がりになっていた。


優羽も、岳大の写真の腕前は本当に凄いものなんだなとこの時改めて思った。


以前岳大が見せてくれた『peak hunt5』のホームページで、厚化粧をして不自然に笑う都会派風モデルに違和感のようなものを覚えたが、このカタログには違和感は全く感じない。

どれもナチュラルな動きの中から写し取った写真ばかりなので、商品のコンセプトや趣旨に沿った自然な写真に仕上がっている。

だからハプニングが色々あった割には、まずまずの出来なのではないだろうか?

優羽は三人の反応を見て、何か手応えのようなものを感じていた。

水面に落ちた星屑

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コメント

5

ユーザー

西村結局自分の力では無く実父頼みなのね,情けな

ユーザー

やっぱり…(‾᷄ㅁ‾᷅ꐦ) ほんと、今更2人を調べてどうするつもり? そして次に何を企んでるの?岳大さんを潰そうしてる?あり得ない!自分の力じゃどうせなんにも出来ないんじゃないの?フンッ!!!

ユーザー

西村のブランドイメージキャラクターを大和翔真に依頼して断られたんだ🤭当然でしょ、だって岳大さんのファンなのに🆗しないよ‼️ それと今更優羽ちゃんと流星くんのことを調べてどうしたいんだか⁉️ 無い物ねだりか??過去に別れた時に切ったんでしょ⁉️西村から!! 不倫しててどの口がほざくんだか🙅 それにpeak hunt5に厚化粧のモデルなんて合わないしダメダメ❌❌ 素人モデルのカタログにみんな興味津々✨

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