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#衝撃のラスト
山根利広
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コウは遠くで由貴と亜美が話してる姿を見てこっちに来るなとさらに思った。「……コウさんはお写真でしか見たことなかったかと思いますがすごい良い筋肉で。憧れでした」
「たしかに、あなたも凄い筋肉ですが……まさか」
桐生は微笑んだ。
「コウさん、僕たちと同じぽそうだから言うけど同性愛者なんです。あ、女性も大丈夫なんでバイセクシャル」
「は、はぁ」
コウはギクリとした。彼自身はバイセクシャルというよりもホモセクシャル寄りの好きになってもらったら誰で好きになるパンセクシャルだけども性的ではないノンセクシャルも混ざっている。
藤澤と桐生は付き合っていたのだ。藤澤は亜美と付き合っていたし、桐生は亜美のことを気にしていた。
「藤澤くんが亜美の肉体……まさか筋肉に乗り移ってるなんて。しかも意識はない、ああ……」
落ち込む桐生にコウは
「でも亜美さんの中に藤澤さんがいますから、共に生きれますよ」
と先ほど亜美が言った言葉を投げかけた。
「……はい。でも僕はあくまでも知らない、というていにしてくださいね。僕はひっそりと藤澤くんのいる筋肉を愛します……聞こえますかねぇ」
コウはうーんと考える。とある筋肉系お笑い芸人が筋肉に話しかけてるネタをしているのを思い出したのだがそれをやってみるとか? なんて提案するのも……と躊躇した。
「……感じ取ってはくれるかもしれませんねぇ」
としかコウは言えなかった。
「それに僕は……バイセクシャルではない、それだけは伝えておきます」
とも付け加えて。
「……そうなんだ。あと体鍛えたらもっといいと思うけどジム紹介しましょうか?」
ニコッと笑う桐生。さっきよりも距離を詰められているがコウはなんとも思わない。
「まぁ考えておきますよ、お安くなるなら。……ではご依頼のお代を……」
ビジネスモードのコウに戻った。桐生はがっかりしている。コウはこういうのに疎い。桐生に惚れられていたことにまったく気づいていなかったのである。
その夜、桐生は亜美の全ての筋肉にキスをした。でも亜美にとっては複雑な気持ちで、その筋肉は自分でないのにキスをするだなんて、という。
2人のすれ違いは亜美が死ぬまで続くのだろう。
動画では桐生と藤澤のことは触れなかった。触れるものではなかったとも思っているし互いに墓場に持っていくレベルの話である。
コウはやっぱ除霊しても良かったのでは……とも思ったが流石に人の命は落とすわけにはいかなかった、と。
「にしてもびっくりだ」
由貴は動画を編集している。しかしアクティブな登山が体に来たのか全身湿布だらけである。部屋もツンとした湿布の匂いが漂う。
「あのまま除霊してたら亜美さんは死んでしまうところだった」
とバスローブを着たコウが風呂場から出てきた。毎晩塩風呂に入っているが流石に今日は疲れがとれるらしい炭酸の素を入れた風呂に入った。その匂いも相まってなんとも言えない匂いが部屋の中を漂う。
「生まれ変わりでなくて乗り移りかぁ。髪の毛だったら切られたらおしまいだし……皮膚とか、目玉とか」
「目玉に乗り移るケースはなんかで聞いたことあるけどさーそれの筋肉なのか……」
「いやー、筋肉に乗り移った藤澤さんは自分の声を聞いているのだろうかって言われた時は……『筋肉に声かけてみてください』って言おうとしたけど……さすがにねぇ」
すると由貴か腕を捲り
「おい、この筋肉! 筋肉痛いつまでなんだいっ!」
と筋肉に話しかける。コウはそれみて大笑いする。
「そう、それそれ! あそこでは言えなかったけど!」
「意識がないからなぁー、聞こえないだろうけど意思疎通……どうするんだろうなぁー」
と今までにないことで盛り上がった。
「それよりも由貴、湿布貼ってくれー」
とおもむろにバスローブを脱ぐコウ。すっぽんぽんである。由貴は驚いた。
「パンツくらい履け」
「炭酸風呂めっちゃ体暑くなるなぁーあれでも疲れ取れん! ふくらはぎパンパンだから早く!」
うつ伏せになるコウにハイハイと由貴は湿布を貼る。
「ついでに腰も揉んで」
「ハイハイ……てやるか! にしてもそのだらしない体なんとかしろよ」
とコウの体を見る由貴は笑った。
「除霊師もいつどこで何あるか分からないから筋トレ必要だなぁ。やるか、明日から。桐生さんからジム紹介してもらったら安く済むかもしれんぞ」
「がめついな。てか明日からか、お前の明日からははるか向こう何年先もないことだな……」
と由貴はいいつつも自分の体もダルダルでお腹も出ている。
そのお腹をコウにつままれた。
「お前も言えないじゃん」
「るせー! そういう家系だ」
たしかに、と幼馴染同士だから由貴の家族のことがすぐ思い浮かんで納得するコウ。
「残念だがあのお美しい亜美さんには不釣り合いだね」
由貴はムッとした。
「筋トレ好き元彼と、山岳救助隊のマッチョだもんな……婚約してるのなら諦めがつく」
どうやら由貴は亜美に一目惚れしていたようだ。だが亜美は桐生にぞっこんだし、結婚もすることだし無理。ついでに桐生からも目をつけられなかったようでもある。
「にしても筋肉に乗り移って今の彼氏と触れ合うって心中複雑だろーな」
「まぁ、知ったこっちゃない」
「キスする時もまだしも、ねぇ」
2人は見つめあった。筋肉はいろんなことに使われる。体全身。
「……」
2人はもう、深く考えないことにした。
コメント
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いやあ、今回も面白かったです!筋肉に乗り移った藤澤さんと、その筋肉にキスする桐生さんの切なさがたまらない…。コウが桐生の告白にまったく気づかないところ、らしさ全開で笑いました。由貴との湿布のやりとりもほっこりしますね。この奇妙なカップルの行く末、考えさせられるものがありました。麻木さんの設定のユニークさと人間味のバランス、いつも素敵です!