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紫倉 紫
501
48
#再会
イツカ
1,188
#異能力
無事に挙式が終わると、続く披露宴は同じ会場内にある庭園でおこなわれた。挙式を挙げた場所とは違って屋根は無いが、大きな紅い和傘がそこかしこを飾る様に設置されていて、優しく日影を作ってくれている。それに披露宴会場自体が結界で守られているらしく、天候に左右される事も無い。椅子も用意してはいるけど、基本的には立食パーティー形式で行われるみたいだ。 こちらからも挙式の会場を華々しく飾っていた藤棚が鑑賞可能で、とても美しい。余裕があるのなら、近くのベンチに座って、時間の移ろいでその色合いを変えていく花々をずっと見ていたいくらいだが、今日の主役は私達なのでそうもいかないのが残念だ。
『管理者』に渡されている膨大な『資料』の中で見た様な、親族一同のカラオケタイムが続いたり、友人達による一発芸の披露みたいな余興の類が無く、普段の夜会の様子と大差なく披露宴が進行されていく。間が持たないなどの理由があるのかもだが、正直それらはいらないよなと思っていた側なのですごくありがたい。でもまぁ、サリアの選んだドレスに何度も着替えさせられていたので、余興タイムがあったとしても、見ている時間は殆ど無かっただろうけどな。
披露宴を終えると、やっと叶糸とゆったり出来る時間がやってきた。
ドレスを脱がされた後は、何故かメイド達にアホみたいに徹底的に体を磨かれ、林檎っぽい匂いの香水をかけられたり、薄手のナイトウェアを着せられたりとされたが、やっとベッドで休めるのかと思うと心底ホッとする。
剣家にこっそりと居た時とは違って、ふかふかな布団と高級ホテルででも使っていそうな最上級のマットレスにダイブするとか、ホントもう最高だ。
枕に顔を埋めていると、叶糸も寝室にやって来た。……デジャビュかな?腰にタオル、髪はまだ濡れていて、タオルでガシガシと拭いている。
今日は叶糸も朝イチからずっと式の関係でバタバタし続けて大変だったはずだ。衣装替えの為にと離席した回数が私よりは少なかったから、参列者との交流なんかもあって疲労度は私の比じゃないと思う。剣家一同からは嫌味を言われ、それを笑顔で受け流したりもしていたし、きっとストレスフルな状態なのは間違いないだろう。——という訳で、私はささっと横に移動し、叶糸が悠々と眠れるだけのスペースを空けて、ベッドをぽんぽんと叩いてみせた。
「今日は疲れただろう?しっかり休むといいぞ!」
「——は?」
……オ、オカシイな。
何故叶糸は、『何言ってんだ? コイツ』とでも思っていそうな顔を私に向けているんだ?疲れたら寝るは、普通の事では?
髪を風属性の魔術でサッと乾かし、でもまだ肌には水気が残っていて、叶糸もベッドに上がってくる。そんな姿を見て『やっぱり叶糸も眠たいんじゃないか』と思いながら掛け布団の中に潜り込もうとすると、その手を掴んで止められた。
「何寝ようとしてんの?」
「夜だから?」
「……まぁ、確かに今はもう『夜』だな。でも、結婚式を挙げた日の『夜』だぞ?」
「そう、だな?」
確かにそうだ。全てが終わったんだ。後は寝るだけ。しかも今までずっと抱えてきた不安要素がほぼ全て無くなり、『侯爵家』という大きな後ろ盾を得て、これでやっと安心して眠れるという記念すべき日だからこそ、ゆっくりと眠るべきだろう。
「あのなぁ……『花婿』と『花嫁』にとって一番大事な儀式である『初夜』はこれからだぞ?」
物凄く真剣な顔で言われたが……そう、だっけ?と疑問でならない。それにソレは私達の様な間柄には不要では?とは思うが、とてもじゃないが、なんだかそうと言える雰囲気じゃない。
「アルカナもこんな格好だっていうのに?」
「こ、これは、メイドさん達が勝手に用意して着替えさせられただけで」
と言い、布団で隠そうとしたが、あっさりと阻まれた。その上肩紐をつつっとずらされ、そのせいで肩紐がするりと肌に沿って落ちていく。
「だ、第一、この先の行為は、その、なんだ……もっと大事にした方がいいぞ?叶糸は男だが、貴族なんだし、身持ちは固くないと」
「……いや、まぁ、言いたいことはわかるけど、『初夜』に、ベッドで、『嫁』に言われてもなぁ」
ダメだ、なんかこっちの言葉が叶糸に伝わっている気がしない。距離を詰められ、もう片方の肩紐もするりと落とされてしまった。
「あのな、この先叶糸にはもっとちゃんと沢山の出会いがあるだろうから、きっと愛情を抱ける適切な相手と相見える事もあろう。そんな時に、愛情も無いまま欲望だけでそういう事をするのは、良くないと思うんだ」
叶糸の眉間に皺が出来る。口もへの字で、いつもは感情豊かな尻尾が微動だにもしていない。
「……で?アルカナの言う『愛情を抱ける相手』とやらにオレが相見えた場合、君はオレとはどうするつもりなんだ?基本的に一夫一婦制だぞ?だからって、愛人を囲うのは醜聞的にもやりたくないんだが?」
「大丈夫だ!その時は潔く離婚するから安心していいぞ!」
叶糸の顔から表情が完全に消え去った。
どうも私は一番踏み抜いちゃいけない場所を踏み、逆鱗に触れ、地雷原の中に自分から突入するに近い程、叶糸に対して言っちゃいけない言葉を吐き出してしまったみたいだ。
コメント
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いやあ、アルカナさん、結婚初夜に「離婚するから安心して」はないわww でも真面目で純粋すぎるがゆえの爆弾発言、めっちゃ愛おしいキャラだなって思った。 叶糸の顔から表情が消えるシーン、想像しただけで笑えるしちょっと切ない。 「逆鱗に触れた」自覚あるのに止まれない感じ、すごく伝わってきた。この後の展開、気になりすぎる🔥