イヴィ
破壊された金庫から紙の束を出して、イヴィが言った。
リエル
リエル
イヴィ
ロック
ディアベル
ディアベル
ディアベル
ディアベルの声につられてイヴィ達も振り返る。
……そこに、クランツはいない。
イヴィ
ロック
地下を調べたが、いるようには思えない。
ロック
リエル
リエル
イヴィ
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
ロック
イヴィ
イヴィはロック達と目を合わせる。
考えていることは同じだった。
前置きもなく、一斉に出口へ駆け出していく。
レーツェル
レーツェル
レーツェルが聞いたこともない言葉を口に出すと、
イヴィ
視界が、ぼやけて歪んだ。
目眩を起こしたように暗転し─────
全員が、出口から離れたところにいたのだった。
イヴィ
ロック
ディアベル
レーツェルも出口の前に移動したようだ。
レーツェル
リエル
レーツェル
レーツェル
イヴィ
レーツェル
イヴィ
イヴィ
レーツェル
そういうと、上品に微笑む。
レーツェル
レーツェル
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
カリゴ
カリゴ
カリゴ
エクレール
エクレール
エクレールが冷ややかな目を向けたのは、
拘束されたクランツであった。
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
手も動かすことができない。
パシッ
カリゴはそのような状態のクランツを軽く叩く。
クランツ
カリゴ
カリゴ
カリゴ
クランツ
カリゴ
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
カリゴ
クランツ
クランツ
カリゴ
鬼の形相でクランツに手を向けるが──
エクレール
オーダー
カリゴ
エクレール
カリゴ
オーダー
カリゴ
クランツ
クランツ
クランツ
オーダー
オーダー
オーダー
クランツ
オーダー
クランツ
拠点突入前
クランツ
ファーブラ
ファーブラ
クランツ
クランツ
ファーブラ
クランツ
クランツ
ファーブラ
クランツ
ファーブラ
ファーブラ
クランツ
クランツ
思わず大きな声を出してしまう。
ファーブラ
クランツ
ファーブラ
ファーブラ
クランツ
以前から感じていた。
団長は、優しい声をしている。
目が見えないのに、こちらを見て話してくれる。
だが、ふとした瞬間に現れる、
あの、冷徹さ。
それは魔術結社由来のものだったのか。
魔術結社の社員は皆、洗脳されていると聞いた。
簡単に解けるものではないはずだ。
どうやって解いたんだ?
クランツは、ファーブラの顔を見る。
生々しく、痛々しい傷跡が嫌に目に入る。
クランツ
ファーブラ
ファーブラ
そう小さく返事をする。
そしてどこか寂しげに微笑んでいた。
ファーブラ
ファーブラ
クランツ
ファーブラ
それまで言おうと迷っていたのか、何かを決心したような声で言った。
クランツ
何を言っているんだと、一番に思った。
確かに、今の王政は横暴で、乱雑である。
だが、大革命というと、どこか歴史的な言葉に感じてしまうのだ。
クランツ
クランツ
ファーブラ
心做しか、呼吸が荒く見える。
ファーブラ
ファーブラ
ファーブラ
クランツ
有り得るのだろうか。
だが、それを嘘だとは言えなかった。
そのようなことよりも。
連続して俺の脳に入ってきた真実に、
心が、追いつかなかった。
クランツ
この嘘はバレてもいい。
エクレール
オーダー
オーダー
オーダー
オーダー
言葉の割には、声に怒りは混じっていない。
寧ろ余裕すら感じる。
オーダー
エクレール
オーダー
エクレール
クランツ
エクレール
クランツ
オーダー
少し、間が空く。
オーダー
オーダー
クランツ
クランツ
オーダー
オーダー
オーダー
オーダー
クランツ
クランツ
当たり前だ。
先程あれだけ大胆に行動したのだから。
クランツ
オーダー
鼻で笑い、クランツを見下している。
クランツ
クランツ
オーダー
オーダー
オーダー
オーダー
クランツ
クランツ
オーダー
オーダー
声が少し低くなったように感じた。
だが、クランツはその凍てついた雰囲気に動じもしない。
カリゴ
クランツ
先程まで黙っていたカリゴに、髪を乱暴に掴まれる。
カリゴ
クランツ
カリゴ
カリゴ
オーダーとエクレールが、
やや呆れ顔で後方に下がったのが目に見えた。
その瞬間───
クランツ
辺りに霧が立ち込める。
カリゴ
カリゴ
クランツ
クランツ
クランツ
ピリッ
クランツ
静電気と、似たような感覚。
そして、首に手が当てられる。
クランツ
エクレール
バリバリッ
一方、地下室。
全員で攻めにかかるが、
未だ、レーツェルにはかすり傷すらつけられていない。
イヴィ
イヴィ
ロック
ディアベル
イヴィ
イヴィ
レーツェル
ロック
ロック
何度喰らったか分からない魔術がまた、襲いかかる。
イヴィも構えたが────
イヴィ
その入れ替え先の目の前には、レーツェルがいた。
攻撃は簡単に当たるだろう。
イヴィ
ナイフで彼女の腕を狙う──────
イヴィ
ロック
リエル
ディアベル
刹那、イヴィ、ロック、リエル、ディアベルから鮮血が舞う。
我に返って見れば、
イヴィがレーツェルに向かって振りかぶったそのナイフは、
ディアベルの腹部を斬りつけていた。
同様に、ロックはイヴィに蹴りを入れ、
リエルはロックの背中を槍で突き、
ディアベルはその巨大な斧で、
リエルの腕を切断しかけていた。
イヴィ
イヴィ
イヴィは勢いで後方へ吹き飛ぶ。
ロック
リエル
ロック
ロック
…そのおかげで大事には至らなかったものの、
イヴィ達は突然の出来事に頭が追いつかなかった。
ディアベル
珍しく、ディアベルの頬を冷や汗が伝う。
寸前のところで止めたが、それでもリエルの腕には血が滲んでいる。
リエル
リエル
そして、イヴィの方に目を向ける。
リエル
ロック
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
ロック
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
ロック
レーツェル
レーツェル
レーツェル
そう言い、ディアベルを見る。
ディアベルは、ただ呆然と、斧についた血を見ていた。
その目は大きく見開かれている。
レーツェル
レーツェル
ディアベル
ロック
リエル
レーツェル
レーツェル
イヴィ
思わず、復唱してしまった。
この世界には様々な種族がいる。
エルフ、魚人、獣人……各々住んでいる地域も異なる。
人狼は、「ヴァルク帝国」の民族だ。
ほとんどが狼の見た目だが、偶に人型の人狼も生まれるらしい。
アイツの祖先が人狼なのか?
イヴィ
レーツェル
リエル
ロック
イヴィ
イヴィ
それは一瞬の出来事で、
俺は、また後方に飛ばされていた。
手を動かすと、ハラハラと石壁が崩れ落ちる。
…壁に、めり込んでいるようだ。
イヴィ
イヴィ
イヴィ
バキッ
ロック
まるで木の枝を折るように、石柱が粉々に砕け散った。
煙と暗闇の中で、揺らぐ影がある。
イヴィ
イヴィ
ディアベル
そこには、ディアベルが立っていた。
だが、それはいつも見ていた、生意気な顔ではない。
髪色と同じ金色の毛並みや鋭く尖った黒く光る爪は、
完全な獣ではないものの、まさに「人狼」と呼ぶのには十分だった。
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
リエル
バキッ
ロック
リエル
リエル
辺りを見渡すが、もうレーツェルはいない。
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
リエル
リエル
イヴィ
イヴィ
イヴィ
その時、イヴィの顔を風が通り過ぎた。
と思っていたら、鋭い爪に唖然とした表情が写る。
イヴィ
(避け─────)
ロック
間一髪で、ロックがイヴィを突き飛ばす。
ビッ……
冷たい風は、頬をほんの少しだけ掠める。
その冷たさが、じんじんと疼く熱さに変わる。
生暖かい液体が、顎から垂れた。
イヴィ
イヴィ
ロック
イヴィ
ディアベル
ロック
ロック
ディアベルは攻撃を続けている。
その眼には、理性など宿っていなかった。
ロック
リエル
ロック
ロック
その猛攻を各自躱しながら、精一杯彼を傷つけないようにいなしている。
リエル
リエル
リエル
リエル
イヴィ
ロック
リエル
隙を見つけ、イヴィ、ロックが彼女の後方に回った。
当然の如く、ディアベルはリエルを空色の眼で捉え─────
鋭い爪を、振り下ろした。
…その頃。
一人の女が寂れた街並みを、ヒールの高い靴で歩いていた。
レーツェル
レーツェル
レーツェル
かつて、利用されたように。
ヴェナフルール王国。
薔薇が咲きほこる、気高く美しい国。
母は、私の鼓膜が腐り落ちるほどそう語っていた。
ヴェナフルール王室の人々は皆、それは綺麗な赤い髪であるらしい。
そのせいか、あの日天蓋ベッドで産まれた、
くすんで、炭のような黒髪の私は、
「隠し子」としてその記録が抹消された。
何処に行っても目立つ、ボサボサの髪。
幼い頃にいれられた、「下人」の刺青は、
今も呪いとして、私を蝕んでいる。
レーツェル
レーツェル
レーツェル
荒んだ家々に背を向けた所だった。
レーツェル
目を見開き、声の主を確認する。
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
レーツェル
クランツ
少し前の事。
エクレール
バリバリバリバリッ
耳を劈くような雷鳴が轟く。
視界が慣れると、床に平伏していたのは……
エクレールだった。
カリゴ
カリゴ
呼び掛けには応答しない。気絶しているようだ。
カリゴ
カリゴ
オーダー
クランツ
オーダー
クランツ
クランツ
カリゴ
カリゴ
クランツ
クランツ
クランツ
カリゴ
エクレール
巨大な血鎌が、クランツ目掛けて襲ってくる。
ドシュッ…
カリゴ
その刃は何故か、カリゴに深く突き刺さっていた。
カリゴ
オーダー
カリゴ
オーダー
カリゴ
カリゴ
オーダー
オーダー
オーダー
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
エクレール
クランツ
クランツ
カリゴ
カリゴ
カリゴ
クランツ
カリゴ
エクレール
半ば呆れながら、カリゴを静止する。
クランツ
クランツ
エクレール
エクレール
クランツ
クランツ
クランツ
クランツ
オーダー
腕時計に目をやる。
クランツ
そして───────
その場から、消え去る。
エクレール
カリゴ
カリゴ
オーダー
エクレール
カリゴ
カリゴ
カリゴ
エクレール
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツ
レーツェル
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
レーツェル
レーツェル
そう言いながら、レーツェルは自分の手に計画書をワープさせる。
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
クランツ
クランツの魔術は反射。
それは、魔術を受けないと発動できないものだ。
つまり、この状況において、
クランツは、彼女に何もできないのだ。
物理で押し切ることができても、結局は彼女にワープされて終わり。
そして、計画書を入手する命令は、王から出されたもの。
失敗でもすれば、連隊で責任を取らざるを得ない。
レーツェル
レーツェル
─────「待ちなァ!!」
刹那、雷鳴の如く轟音が鳴る。
見れば、地面が深くえぐれていた。
彼女の腹部から、鮮血が舞う。
レーツェル
レーツェル
ヒュッ
レーツェル
今度は風のように速い突きが飛んでくる。
リエル
レーツェル
ロック
ロック
ロック
クランツ
イヴィ
イヴィ
そして、雷鳴を轟かせた者が口を開く。
ディアベル
レーツェル
ディアベル
ディアベル
レーツェル
ディアベル
ガチャッ
レーツェル
クランツ
クランツ
クランツ
レーツェル
レーツェル
両手を上げ、観念したように言う。
レーツェル
イヴィ
クランツ
その手から、計画書を取り上げる。
ロック
イヴィ
クランツ
ロック
イヴィ
クランツ
ロック
イヴィ
イヴィ
イヴィ
ディアベル
イヴィ
ディアベル
イヴィ
ディアベルがイヴィの目の前に迫っていた。
イヴィ
ディアベル
イヴィ
イヴィ
などと、自分で自分にツッコミを入れてしまった。
少しは気が紛れたものの、まだモヤが残っている。
イヴィ
そういえば、ディアベルの腹を傷つけたことを、まだ謝っていなかった。
イヴィ
イヴィ
ディアベル
イヴィ
ディアベル
イヴィ
思わず素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
まさか、覚えていないのか?
イヴィ
イヴィ
イヴィは改めてディアベルの表情を見るが、
本当に覚えていないようだった。
ディアベル
ディアベル
ディアベル
ロック
ロック
イヴィ
リエル
リエル
ディアベル
ディアベル
イヴィ
ディアベル
イヴィ
クランツ
イヴィ
クランツ
イヴィ
レーツェル
イヴィ
レーツェル
「…もう痛いのは嫌なのよ」
そうか細く、だがハッキリと言った。
クランツ
クランツ
ロック
イヴィ
レーツェルとイヴィの目が合う。
レーツェル
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
レーツェル
イヴィ
レーツェル
イヴィ
一呼吸置いて、決心したように言う。
イヴィ
レーツェルとイヴィの空間を、静寂が支配した。
空気中の成分が棘となり、彼らの首元まで迫る。
そのように感じてしまう程の緊迫感だ。
レーツェル
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
イヴィ
レーツェル
レーツェル
イヴィ
レーツェル
レーツェル
レーツェル
レーツェル
イヴィ
この時、直感した。
戻らなければ。
伝えなければ。
命令に、背かなければ。
「未 来 は 無 い」と─