テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
江藤ルミエール
195
111
#ミステリー
鬼霧宗作
61
コメント
1件
立花瞳子さん、本当に良かった……! アスリートとしての意地とプライドを胸に、それでも指先が震えちゃうところがすごくリアルで、胸が締めつけられました。「鉄の女」って呼ばれることに気づきながらも、弱さを見せられない彼女の強がりが切ないです。そして助かった後の周りの空気——希望と残酷さが同時に漂う描写、ゾクっとしました。菜々美さんが足元の震えを見つけるラスト、静かで深い余韻が残りますね…🌷
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】
立花瞳子の生徒ナンバーは、18。
関東エリアのトライアスロン大会で3位の記録を持ち、スポーツ全般をこなす抜群の運動神経の持ち主。
忍耐強い性格で、学校では“鉄の女”と陰で噂されていた。
本人も、それに気づいている。
爽やかなサラサラのショートヘアがトレードマーク。
定期的に日焼けサロンへ通い、肌は健康的な小麦色をしていた。
トライアスロンで鍛えた身体は筋肉質だが、無骨ではなく、引き締まった美しさがあった。
立花瞳子
立花瞳子
瞳子はそう言い聞かせ、毅然とテーブルの前まで進んだ。
背筋は伸び、足取りも乱れていない。
けれど、菜々美には見えていた。
瞳子の指先が、わずかに震えている。
立花瞳子
ロボットは、近くで見ると、離れた場所で見た時よりずっと大きかった。
メタリックシルバーの胴体。
異様に長い両腕。
胸部のモニター。
冷たい光を反射する姿は、人間の形をしているのに、人間から最も遠いものに見えた。
【SYSTEM】
ロボットの胸部モニターが点灯した。
“速い”。
“普通”。
“遅い”。
3つの文字が、目まぐるしく点滅する。
瞳子は、ほとんど迷わなかった。
考えるほど、指が動かなくなる気がした。
勢いよくボタンを押す。
モニターの文字が止まった。
表示されたのは――
“普通”。
立花瞳子
立花瞳子
ロボットの右腕がピンポン玉を摘まんだ。
中央のカップに入れ、そのまま伏せる。
3つのカップが、白いテーブルの上を左右に動き始めた。
1秒間に1、2回ほど。
凪津美の時ほど速くはない。
玖玖瑠の時と同じくらいだった。
それでも、命がかかっていると思うと、ただのカップの動きが異様に見えた。
右。
中央。
左。
瞳子は、瞬きすら惜しんで動きを追った。
立花瞳子
立花瞳子
カップの動きが止まった。
3つの銀色のカップが、横一列に並ぶ。
【SYSTEM】
声が聞こえた瞬間、瞳子の喉が鳴った。
失敗すれば、死ぬ。
その事実が、胸の奥で重く沈んでいる。
立花瞳子
立花瞳子
瞳子は、自分から見て左のカップを指さした。
立花瞳子
声は、思ったより落ち着いていた。
けれど、指先は正直だった。
細かく震えている。
【SYSTEM】
ロボットの右腕が、瞳子から見て左のカップをゆっくり持ち上げる。
その動きが、やけに遅く感じられた。
立花瞳子
表情は落ち着いて見えたが、心の中では叫んでいた。
カップが持ち上がる。
その下には――
レモン色のピンポン玉があった。
立花瞳子
緊張の呪縛から解き放たれ、瞳子は思わず“鉄の女”らしからぬ声を上げた。
その瞬間、室内の空気がわずかに揺れた。
誰かが、小さく息を吐く。
誰かが、泣きそうな顔で瞳子を見る。
誰かが、羨望とも嫉妬ともつかない目を向ける。
助かった者が出た。
その事実は、希望であると同時に残酷でもあった。
成功できる者がいる。
つまり、失敗した者は、本当に失敗したのだ。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
瞳子の頭部から、カチッと音が鳴った。
次の瞬間、月桂冠は頭から外れ、床に転がり落ちた。
立花瞳子
瞳子は胸を撫で下ろした。
その顔には、確かな安堵が浮かんでいる。
けれど、すぐに表情を引き締めた。
“鉄の女”と呼ばれてきた自分が、今さら泣き崩れるわけにはいかなかった。
瞳子は、床の月桂冠を見下ろす。
それはもう、ただの輪に見えた。
ついさっきまで命を握っていたとは思えないほど、無力に転がっている。
瞳子はゆっくりと生徒たちの方へ戻った。
誰も、すぐには声をかけなかった。
よかったね、と言える者はいない。
羨ましい、と言える者もいない。
菜々美だけは、瞳子の足元を見ていた。
そこには、震えが残っている。
毅然と歩いているように見える。
でも、彼女の脚はまだ、恐怖を覚えている。
瞳子は助かった。
けれど、この部屋の空気は少しも軽くならなかった。
【SYSTEM】
【SYSTEM】
【SYSTEM】