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群馬に帰る日の午前中
私と蓮君達は 地元の商店街を歩いていた
シャッターの音、呼び込みの声、 揚げ物の匂い
私は少し懐かしそうに 周囲を見渡す
花
そう呟いた途端、 あちこちから声が飛んだ
お肉屋のおばさん
魚屋のおじさん
薬局のお姉さん
魚屋のおじさんが手を振り、
肉屋のおばちゃんが 笑顔で声をかけ、
薬局のお姉さんは 「相変わらず可愛いね」と 目を細める
蓮君達は目を丸くする
蓮
陽斗
龍次郎
そして商店街の人たちの 視線は三人に向く
お肉屋のおばさん
一斉に、蓮・瀬戸・龍次郎の顔が 赤くなる
蓮
陽斗
龍次郎
必死に訂正する三人に、 商店街の大人たちは「あらあら」と意味深な笑み
お肉屋のおばさん
薬局のお姉さん
魚屋のおじさん
花は困ったように 笑うだけだったが、 三人はどこか挙動不審だった
少し歩いて、 商店街の奥にあるクレープ屋
四人は並んでクレープを頬張る
蓮
龍次郎
陽斗
花
蓮
そんな他愛ない会話の最中──
一人の男が、ふいに近づいてきた
年齢は、私たちと同じくらい
落ち着いた雰囲気で、 どこか懐かしそうな目をしている
???
私は一瞬、首を傾げる
花
花
花
男は少しだけ苦笑した
???
???
そして彼は、 ちらりと蓮君達を見る
???
白崎&瀬戸&鬼塚
即座に被せる3人
男は少し驚いたように 目を瞬かせてから、 申し訳なさそうに私を見る
???
???
蓮
陽斗
龍次郎
???
花
???
???
男は私を連れて クレープ屋から 少し離れて歩き出す
それを見送った直後
陽斗
陽斗
蓮
蓮
龍次郎
3人は顔を見合わせ、 音を立てないように 2人の後を追う
私たちは路地を歩く
どうやら彼の名前は “森下悠真” らしい
悠真
悠真
花
私は黙って聞く
悠真
悠真
悠真
花
森下君は小さく笑った
悠真
悠真
彼は一度言葉を区切る
悠真
悠真
悠真
花ははっとして、 慌てて首を振った
花
花
花
花
悠馬は少し目を伏せる
悠真
それから彼は、自分の話をした
高校で環境が変わったこと
今は普通に学校に通って、 バイトをしていること
悠真
悠真
時計を見るともう午後
私が「帰ろう」と踵を 返した時だった
悠真
森下君が呼び止める
一瞬、間が空いて……
悠真
悠真
花
彼の声は低く、穏やかで、 逃げ場のないほど真っ直ぐだった
悠真
悠真
私は驚いたが、逃げなかった。
少し考えてから、ゆっくり答える
花
花
花
花
私は視線を上げて、はっきり言う
花
花
花
花
花
花
森下君は一瞬だけ目を閉じて、 それから、すっきりした笑顔を 見せた
悠真
悠真
悠真
花
森下君は振り返らず、 商店街の人混みに消えていった
その背中を見送ってから、 花は小さく息を吐いた
振り返ると、少し離れた場所で 蓮君達がいた
花
蓮
陽斗
龍次郎
群馬・K市
帰り道
夕方の空は、オレンジと藍色が ゆっくり混ざっていた
家まで花を送る途中、 陽斗君が口を開く
陽斗
私は一瞬だけ足を止めて、 首を横に振る
花
陽斗
龍次郎
私は困ったように、 でも少しだけ笑った
花
蓮君はその様子を見て、 ふっと息を吐き笑った
蓮
陽斗君と龍次郎君が蓮君を見る
陽斗
龍次郎
蓮君は私の背中を見つめたまま、 静かに言った
蓮
龍次郎
蓮
「“友達”ってもんだろ」
陽斗
蓮
蓮
蓮
龍次郎君が言葉を失う
陽斗君も一瞬だけ黙り、 照れ隠しのように鼻で笑った
龍次郎
陽斗
家に着き、私は振り返る
花
花
蓮
家に入るまで、 3人はその場を動かなかった
その帰り
龍次郎
瀬戸はポケットに手を突っ込み、 低く言う
陽斗
白崎は一歩前に出て、 空を見上げた
蓮
蓮
蓮
3人は何も言わず、うなずき合う
夕暮れ時、 それぞれの影が、 少しだけ重なっていた
4月
この町に来て、 ちょうど1年が経った
それと同時に、私たちは 2年に上がった
今日はクラスみんなでお花見
私は朝からキッチンに立ち、 卵とレタスとハムを挟んだ サンドイッチを作って、 かごに詰める
花
母
河川敷に着くと、 すでにみんな集まっていた
レジャーシートの上では笑い声が弾けていて、焼きそばの匂いが 風に乗って流れてくる
土手を降りながら、 その光景を見下ろす
去年の春は、 憂鬱で周りを見ていなかった
だけどその光景が 今は私の目に映っている
花
花
ぽつりとこぼした言葉は、 桜の花びらに紛れて 消えるはずだった
「できたよ」
隣を歩いていた蓮君が、 迷いなく言った
蓮
花
蓮
私は立ち止まって、蓮君を見る
少し照れたような、 でもまっすぐな目
花
私は自然と笑っていた
シートに向かうと、 誰かが私の名前を呼び、 誰かが手を振る
私が作ったサンドイッチを 置けば、すぐに「うまそう!」と声が上がる
ひとりだったはずの場所は、 いつの間にかなくなっていた
桜は今年も同じように 咲いているのに、 私は去年とは、まったく違う景色を見ている
風に舞う花びらが、 肩にそっと落ちる
それを払う前に、 また次の花びらが重なる
──大丈夫。
私はもう、ひとりじゃない
この先もきっと、何度転んでも、 立ち上がれる
満開の桜の下で、 私の新しい一年が、 静かに始まった
〜 END 〜