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賽原保育園 階段の踊り場

えと、まずは……

勝手に声聞いてごめん!

歌声とか聞かれたくないって、知らなかったんだ!

僕は陽子さんにペコリと頭を下げた。

陽子

……

少しうつむいてフルフルと頭を振る陽子さん。

やっぱり声を聞かないと、どういう意味か分かりづらい。

でもね?聞いて欲しいんだ

陽子さんの歌声、とっても綺麗だった

信じてもらえないかもしれないけど

陽子

……

こちらをじっと見つめる陽子さん。

陽子

……ん。

腕を引いてその場から離れた。

陽子

……

教室の黒板の前に立ち、チョークをもって僕の方を見る陽子さん。

そうか、チョークで文字を書いたら

陽子さんの言いたいことがわかる

陽子

陽子さんの手で、黒板に文字が書かれていく。

 

私の声、本当に嫌じゃなかった?

……

陽子

……

陽子

ごめん、かんじだとわからないよね

わたしのこえ、ほんとうにいやじゃなかった?

もちろん!

先生も「妖精みたい」ってほめてたよ

陽子

……

陽子

ほめてくれてありがとう

でも、じぶんではどうしてもそうおもえないの

どうしてなのかな?

わたしのおかあさん、すごくナイーブなひとで

わたしがわらうたび、なくたびにおこって

「だまれ」ってどなってきた

だから、わたしはなにもはなせなくなった

いまでもおかあさんがおこるすがたが

わたしが人のまえではなそうとするたび

うたおうとするたびにうかんでくるの

……大変だったんだね

もとのせかいにもどるためにも、はやくなおそうとはおもってるけど

じぶんでもどうしたらいいかわからないの

……戻る?

陽子

……!

そうか、いってなかったっけ

わたし、ほんとうはしんでないの

……そうなんだ

ぐあいがわるくてもかぞくにいえなくて

それでびょうきがおもくなって、からだじゅういたくなって

そしてきがついたら、たましいだけここにいたの

いつまでもここにいたら体がしんじゃうから

もどるなら早めにしなさいっていわれてるけど

……陽子さんは、帰りたい?

陽子

……

 

おかあさんがこわくなくなったら、かえりたい

 

ザック先生

……なるほどね

陽子

……!?

突然教室の外から声がして、陽子さんはビクッと振り返った。

ザック先生

正体のわからないものは怖く感じる

ザック先生

そういうケースはその人を知ることも選択肢の一つだ

ザック先生、どうしたの?

鬼塚先生

どうしたの?というか……

鬼塚先生

授業の時間、だいぶ過ぎてるよもう

愛斗

なんかハクネツしてたから、外から見守ってたんだよ

勝手に使って、迷惑だよ

まあまあ優くん

健くんも、陽子と話せてよかったよ

ザック先生

陽子、お母さんのことを知りたいって言ったね

ザック先生

ついてきてごらん

鬼塚先生

……ザック先生、あれを見せるんですね

鬼塚先生

……

鬼塚先生

わかった、他の先生たちには私から伝えとく

鬼塚先生

陽子、無理しないでね

陽子

……

陽子は鬼塚先生に会釈して、ザック先生とその場を離れて行った。

 

 

ザック先生は、職員室に私を連れてきた。

普段園長先生が座る席の、一番上の引き出しを開けると

古びた手鏡が出てきた。

ザック先生

陽子、持ってみてごらん?

ザック先生

この鏡は、持った死者周辺の

ザック先生

現世の様子を覗くことが出来るんだ

ザック先生

この鏡を使えば、お母さんのことを知ることが出来るだろう

そう言って先生は、私に手鏡を差し出した。

陽子

……

陽子

……

陽子

(でも、怖い)

陽子

(もし、お母さんが私を疎ましく思ってたら?)

陽子

(もし、私のことなんてすっかり忘れていたら?)

ザック先生

……

ザック先生

現世の体を諦めて、次の縁を待つ事もできる

ザック先生

現世の様子を見た後で、「やっぱり帰らない」と言う選択をしたとしても

ザック先生

それも大事な陽子の意志だ

ザック先生

……でも、後悔はしないかい?

陽子

……

陽子

わかった。

陽子

先生、見せて?

ザック先生

……うん、いいよ

ザック先生

さあ、そっと中を覗いてみて?

 

 

 

手鏡越しに見えたのは、小児病棟らしく壁に装飾のされた病室だった。

そこのベッドに寝ていたのは、私の体。

それに縋って、シクシク泣いているのは……

陽子の母親

陽子、今日も目を覚ましてくれないね

陽子の母親

あれから年をいくつも越して

陽子の母親

小学校のみんな、高校生になっちゃったよ?

陽子の母親

寝坊助は私似なのかな、ぐすっ……

陽子

(眠ってる間に、そんなに時間が……)

陽子の母親

陽子の母親

いや、違う

陽子の母親

この小さい体に無理に無理を重ねさせて

陽子の母親

限界まで我慢させちゃったんだよね

陽子の母親

全部、全部お母さんのせい

陽子の母親

私に余裕無いせいなのに、全部陽子に当たり散らして

陽子の母親

母親失格だよね、ひっぐ……

陽子

(お母さん……)

陽子の母親

……病院の先生が言ってた

陽子の母親

これ以上意識が戻らずに病気が進んだら

陽子の母親

脳死って認定されちゃうかもしれないんだって

陽子の母親

嘘だよね、もう陽子と会えないかもしれないって

陽子の母親

……ねえ、目を覚ましてよ

陽子の母親

全部やり直そうよ、お母さんと

陽子の母親

こんな形でお別れなんて嫌だよ

陽子の母親

えっぐ、えっぐ……

陽子

(…‥こんなに泣いてる所、初めて見た)

陽子

(お母さんはおばあちゃん達とも仲が悪かったし)

陽子

(一人ぼっちだったんだろうな)

陽子

(なんだか、可哀想)

 

  

ザック先生

陽子、お母さんはどんな様子だった?

陽子

……泣いてた

陽子

それと、もう少ししたら私の体

陽子

本当に死んじゃうんだって

ザック先生

うーん、そっかあ

ザック先生

じゃあ、決断するなら早めにしないといけないね

陽子

陽子

私、戻りたい

陽子

でも、その前に……

陽子

やりたい事があるの

Re grow ━よいこの賽原保育園━

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