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怪盗 時雨桜

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怪盗 時雨桜

31 - いつかの感情論

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2022年02月07日

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〜真冬 side〜

「もし来るなら、ちゃんと気持ちを 整理してから来い」

真冬

(そんなこと言われたって、そんなすぐにできるわけ……っ)

友弥

……もし、あの2人の言ってることが本当だったら、みんなはどうする?

九葉

そんなの、一緒にテロを阻止しに行くに決まってるでしょ?

友弥

じゃあ、今行こうとしないのは何で?

彼方

敵味方の判別ができないからだよ。味方って分かればすぐ動いてる

友弥君にいつもの笑顔はなく、 “凪沙を信じたい”って、 分かりやすく顔に書いてある

真冬

友弥君は、優達の話を信じるの?

友弥

味方の可能性が少しでもあるなら、俺は信じたい。それに、探偵さん達の話、一応ちゃんと筋は通ってるよ

九葉

全部あの2人の早とちりで、あの人の言ってた作戦は嘘だったって可能性は?

友弥

それはっ……

そんなことを考え出したら、 もうキリがない

話も思考も堂々巡りになって、 時間だけが過ぎていく

真夏

っ……ねえ、みんな

不意に、姉さんが話し始めた

真夏

私ね? これまでずっと『彩莉』と『凪沙』として親友でいたから、誰よりも近くにいて、誰よりもあの子を知ってる自信がある。

真夏

きっと凪沙は、今まで『面白いから』っていう理由で、私と関わってないと思うの。

真夏

ファントムに入った理由も、きっと同じ。

真夏

昔のこと、さっきの話で全部思い出したの。あの10年前の事件の日も。

真夏

最初はびっくりしたけど、前にその話と似たような夢も見ちゃったし、みんなの反応も見て、信じるしかないんだなって思った。

真夏

あの時はきっと……ううん。絶対なぎちゃんは、あんなこと思って私と遊んでなかったよ?

真夏

だから、その……あのね? 私が言いたいのは……

真冬

姉さん

そっと説き伏せるような 姉さんの言葉を、ボクが遮った

真夏

……?

真冬

みんな、分かってるよ。

真冬

凪沙も、兄さんや友弥君と同じ。みんな友達だもん。

真冬

だからみんな、凪沙を信じていたいんだよ。

真冬

っ……でもね? そんな人にあんなこと言われちゃったら、たとえ嘘でも辛いんだよ……

彼方

っ……

友弥

…………

そうしてまた、沈黙の時間が流れる

少し遠くの競技場の方からの 歓声が、嫌によく聞こえた

九葉

……ボクも昔、凪沙さんに遊んでもらったことがあるの。

九葉

言いたいことは真夏さんと同じ。嘘ついてる顔じゃなかった。心の底からの笑顔だった

真夏

じゃあ……

九葉

けど、もし本当に敵なんだとしたら、ボクらだって安易に突っ込めない。そんな危険なことをするわけにはいかない。

九葉

第一、動くのは友弥兄と真冬兄だし、安全な場所にいるボクらは、2人に不確実なことをさせて危険に晒せないの。

九葉

お願いだから分かって

九葉の言う通り、もしも動くなら、 ボクらの感情のことだけじゃなく、 現実的な問題も考えないといけない

それが、余計に判断の邪魔をしていた

真夏

……結局みんなは、なぎちゃんのこと信じてないの?

真冬

ちがっ、そういうわけじゃ……

真夏

じゃあ何でそんな悩んでるの!

真冬

っ……!?

突然声を上げた姉さんに びっくりして、思わず顔を上げた

真夏

信じてるなら行けばいいじゃん! 危険なことなんてもうしてるじゃん!

真夏

私は怪盗が何なのかなんて知らない! 実際どれぐらい危険なのかも分かんない!

真夏

けどこれだけは私にも言える!

真夏

信じたいなら信じようよ!

真夏

行く理由なんてそれだけでいいじゃん!!

真夏

この先でなぎちゃんが待ってくれてるかもしれないじゃん!!

真夏

なのに誰も来なかったら、裏切られたってうじうじしてるみんなより、なぎちゃんの方が可哀想だよっ!!

そう言う姉さんの目には涙が 溜まっていて、だけど真っ直ぐ、 ボクらのことを捉えていた

「信じたいなら信じようよ」

どうしてか、その言葉が 頭から離れなくて

真冬

そんなのっ……!

真夏

感情だけじゃどうこうできない問題なのも分かってる。他にももっと重要なことがあるのも分かってる!

真夏

けど、じゃあ何でテロを阻止しようとしたの?

真夏

この少人数じゃできっこない、危険だってみんな分かってるはず!

真夏

なのにここにいるのはどうして? 本当にみんなはその危険さも考えてたの?

彼方

っ……!

違う

このテロ計画を阻止しようとした、 根本は……

彼方

……元は、復讐の為。今日だけじゃなく、怪盗をし始めたのも、全部感情が根底にあった

真冬

ボクが怪盗をしてるのも、姉さんを守る為っ……

九葉

ボクらも、お父さん達が守ってきた、家宝を取り返す為に……!

そうだ、そうだよ

みんな、元々の動力源は感情だった

復讐の為、守りたいものを守る為

自分達に降りかかるであろう 危険なんて、一切顧みずに

自分の求める未来を信じて、 ここまでやってきたじゃないか

友弥

……行こう……!

ウィズ

早く行こうっ!!

ウィズ

時間はある、まだ間に合う!

九葉

どんな危険があるか分からない。生きるか死ぬか、二分の一の危険な賭けになる。

リーフ

それでも行くなら、もし死んじゃっても、ボクは責任取らないよ!

真冬

兄さん。

真冬

……ううん

ユキ

ソラ!

ユキ

ボクらも行こう!

ユキ

たとえ落ちこぼれでも、凪沙の力を借りてたとしても。

ユキ

ボクらはここまでやってこれた!

ユキ

行こう、ソラ!

彼方

っ──!!

彼方

たしかに、そうだな。

彼方

やることは今までと同じ、ファントムへの復讐。

彼方

……俺らなら、できる。

ソラ

行くぞ、ユキ

ユキ

了解!

真夏

みんな……!

ウィズ

ありがとう真夏ちゃん、ナイス喝!

リーフ

そんなこと言ってる場合じゃないでしょうが。

リーフ

でも、ボクからもありがとう、真夏姉

真夏

っ……! うんっ!

姉さんのおかげで、 みんなの心が決まった

これからやることは、ただ一つ……

ファントムへの 復讐だ!!

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