〇〇県〇〇町で連続殺人事件です
被害者は全員女子高校生であり、遺体の胸元にはメッセージカードが添えられているようです。
メッセージの内容は、依然としてーー
警察は同一犯の犯行として事件を 追っています。
ニュースキャスターの声をぼーっと聞きながら家を出る。
何を隠そう、ニュースで取り上げられていた町はまさに私の住んでいる場所 なのだが
怯えながら過ごす友人たちとは打って変わって、私はそれなりにいつも通りの日常を送っていた。
麻子ちゃん
教室に入ると、席が近い麻子ちゃんが 不器用にはにかみながら 挨拶をしてくれた。
麻子ちゃん
麻子ちゃん
友達と帰ったりして、
気をつけて、ね…!
麻子ちゃんは本当に良い子だ
仕草や話し方からも、それがひしひしと伝わってくる。
ただ、とてつもなく不器用なのだ。
麻子ちゃんみたいな子は、学校という 猛獣だらけの檻の中に入ると
怯えながら逃げ惑うネズミに なってしまう。
友人A
二人の間に割り込むように友人Aが 声を上げた。
ふと麻子ちゃんに視線をやると、
麻子ちゃんは気を遣ったように急いで 私から顔をそらしてしまった。
その様子を見てふっと笑った 友人Aに対して
私は笑顔を保ちながら
心の中でカウントを始めた。
今日は友人Aと二人で帰ることに しよう。
私はそう決意した。
先生
大きく分けて二つ
あります
六限目のぼんやりした頭で先生の 余談を聞く。
先生
〝かわいくて大切に
思うこと〟
先生
して貰おうかな
先生
先生
素晴らしい!
先生
かわいい、だとかプラスの
面で使用されることが
多いですが
先生
を意味する〝厭う〟であり
先生
などのマイナスな面で
使用されていたのですよ
先生
という意味で使うことが
ありますね
先生
号令をかけ、礼をしてから今日最後の 授業を終えた。
麻子ちゃん
麻子ちゃん
んだね…!
授業が終わるなり、麻子ちゃんが 興奮した様子で話しかけてくれた。
ないけど
麻子ちゃんと話していると、自然と 頬が緩んでしまう。
もう帰るの?
麻子ちゃん
ちょっと残るよ
掃除当番なんて、ほとんどやっている人なんていないのに。
麻子ちゃんは果てしなく心が綺麗だ。
友人Aと帰るのは、また今度に しよう…。
「私も手伝う!」
そう、言いかけたとき
友人A
恥ずかしくないの?
友人A
友人A
頭が爆発しそうだった。
私は友人Aの腕を掴み、麻子ちゃんを置いて教室から飛び出した。
帰り際にふと見えた麻子ちゃんの顔は
あんなことを言われたのに、 腹を立てている訳でもなく、 悲しんでいた訳でもなく
ただただ、心底申し訳なさそうな表情をしていた。
友人A
代わりに言ってあげた〜
友人A
あいつ先生に言わないでしょ
友人A
友人Aの腕を掴みながら学校を出て、私はあの場所を目指した
友人A
見ててイライラすんだよね
友人A
友人A
もう辞めたら?
5カウント、貯まってしまった。
もういいよ、残念だけど、さようなら
友人A
腕掴んでるつもり?
友人A
彼女の言葉は無視して、私は 走り続ける。
目的の場所に到着したので、私は 友人Aから手を離した。
友人A
友人A
ぶすっ
彼女の言葉に間髪を入れずに、私は 包丁を突き刺した。
鈍い音と彼女の悲鳴が交わって、 夕暮れの空に溶けていった。
仕方ないこと
過ごしていくために
するんだよ
ちゃんと見てあげた?
分かってあげた?
あなたには存在する意味が
ない
愛しい子
今回も、散った命にメッセージを 贈ろう。
内容を色々考えてはみたけど、やっぱりあの言葉が相応しい。
〝愛しい君に捧ぐ〟
私は彼女の胸元にメッセージを 添え、
橙の夕暮れに背を向け立ち去った。