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リベンジポルノ:ディストリビューション

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リベンジポルノ:ディストリビューション

4 - リベンジポルノ:ディストリビューション 最終話

♥

50

2021年09月28日

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善子

あんたは実に

善子

実に取り返しのつかないことをした

年老いた女は 杖をついたまま

しゃがれ声で むせぶようにおれに語りかけた

善子

あんた

善子

自分のしたことの

善子

罪の重さが自分でわかる?

…おれは

なにもしていない

善子

なにもしてない?

善子

よくそんなことが言えるわね

ほんとう…です

おれが撮影した…

おれが撮った映像ではなく

そこで死んだ男が

盗撮した映像が

老女は 自らの足元に転がった男を見ると

悲壮に充ちた表情で 涙を流しながら

ふたたびおれを見た

善子

この

善子

人でなし!

善子

罪を認めようとせず

善子

逃げるばかり

善子

つぐなうという気持ちがないのか?

だっておれは

その男に…

善子

ああもういいわ

善子

失望した

善子

あんたは殺戮者よ

そしてもう一度 男の死体に目をやる

善子

わたしはこの方に感謝している

善子

だって

善子

犯人を教えて下さった

善子

そして復讐のチャンスを与えてくれた

え…

どういうことだ

善子

あんたに罰を与える

善子

あんたが母親の胎内を出て

善子

愛情をこめて育てられ

善子

しかしそれに気づくことなく

善子

快楽のみを追求して生きてきた

善子

その傲慢な人生を送ったことを

善子

いままで生きてきたことを

善子

後悔させてやる

それは…

善子

この方の遺言のとおりに

善子

あんたに地獄の7日間を見せる

善子

それが終われば

善子

全てが解放されるはず

妄言のようにも聞こえたが 老女の言葉には意志が宿っていた

善子

いい?

善子

これからきっちり7日後

善子

わたしはあんたをここから出す

善子

でも覚悟しな

善子

死ぬより辛い人生を

善子

送ることになるのだから

えっ

ちょっと

どこへ…

老女は身をひるがえし 杖をつきながら部屋を後にした

おい!

なにが

なにがはじまるんだ…?

緊張して震えているうちに 眠りに落ちてしまったらしい

目覚めるとなにやら 芳しい香りが漂っていた

よお

あんたが泰くんか

部屋に入ってきたのは 老女とはちがう

生気に充ちた男だった

いやそれよりも おれは男が手に持っているものに 目がいっていた

湯気のたつどんぶりに 何かが入っている

3日間飲まず食わずだったんだってね

せっかくだからと思って

ラーメン出前とったんだ

…!

匂いの正体はラーメンだ

奥歯の横の腺から 粘つく唾液があふれでる

…ああ

助かった…

男はおれの手前まで歩み寄り

ラーメンの脂と醤油の匂いを おれに嗅がせた

腹部が歓喜におどり 胃がきゅうっと縮んだのが分かった

そりゃ腹も減るよなぁ

男は箸で麺を持ち上げ

宙で麺をすこしだけ冷まし

みずからの口に運び ずるりと啜って見せた

あーうまい!

腹減ったときには

ラーメンに限るよ

な…

あんたも腹減ってるだろう

でもラーメンは

お腹にやさしくないからなぁ?

ああうまい!

このチャーシューだよなあ…

呆気に取られたおれの口元から 次々に唾液が滴り落ちた

手が食欲に誘われて 本能的に器に手を伸ばそうとする

しかし車椅子に拘束された四肢は 動かすこともできない

やせ衰えた腕は まるで枯れ枝のように

枷の中でぎしぎしと鳴るだけだった

男はさもうまそうに 麺をすする音を立て続ける

突き抜けるスパイスの匂いに 意識が飛びそうになる

日本人でよかったよ

あんたもそう思うだろ?

これ

スープも最高だなぁ…

男はどんぶりの中身を すべて平らげてしまった

うっ…

頬を涙が伝うのがわかった

どうして…どうして…

そうだー!

次は何にしようか?

焼肉?それともトンカツかな?

なんで…どうして…

ああそうだな

あんたでも食える

お腹にやさしいのがいいか

またあとで持ってくるよ

ごちそうさん!

男はげふりと噫を吐くと おれに背を向けて

さっさと歩いていってしまった

なんで…うっ…

う…!

あまりの不快感に おれは胃液を吐き出した

ゼラチンのような質感の 酸っぱい液体が

口腔内を刺激し 外にだらりと垂れた

頭が傷んで 肺のあたりが焼けるように熱い

固定された身体が ぐるぐる回っているかのような

変な錯覚があった

おーい!

持ってきたぞー!

あの男だ

おれはいっそ どこかに逃げたかった

だがどこにも逃げることはできない

また食物の匂いを 嗅がされるのだろうか

胃はまるで泣きわめくように ギリギリ痛んだ

ほら

今日は雑炊だよ

野菜もたっぷり入ってるし

あんたに不足してる栄養が

これを食べれば摂ることができる

おれの膝に 盆に乗せられた小鍋を置いた

さあ

食べようかな

うまい!

醤油と半熟卵とのバランスが

最高だなぁ

おれは顔を背けようとするが

出汁の効いた卵の匂いが どうしても身体の奥を刺激してしまう

どうだ?

あんたもこれを食べれば

助かるかもしれないなぁ

そう言うと男は

おれの鼻元に匙を近づけ

抵抗できないおれに たんまりとその香りを嗅がせた

そして 自分の口まで匙を戻して

緩慢に咀嚼する 嚥下すると頬をほころばせてみせる

なあ

あんたも

なにか食いたいか?

食って体力つけないと

身体は辛いままだからな

…く…

なにか…食べたい…

おお!

よう言った!

やっぱりあんたはそうじゃなきゃ

男はまだ雑炊の残った盆を 引き下げると

おーい!

出番だー!

部屋の奥に向かって誰かを呼んだ

するとまた足音が聞こえた

奥からあらわれたのは スーツを着た長身の男だった

黒磯

潔さん、ご苦労さまです

黒磯

あの少年ですか?

ええ

黒磯

ずいぶんとひどいですね

黒磯

ふふふ

とんだ有様でしょう

なにか食べたくて仕方ないんです

黒磯

すぐに取りかかるべきですね

黒磯

ふふふ

続いてマスクをした 白衣の女が入ってきた

女はコロ付きの 銀色のカートのようなものを 押している

彼女はそそくさと手袋をはめた

黒磯

八次

黒磯

インジェクションAを20mlだ

八次

はい

女はシリンダーのようなものを 手に取る

よく見るとそれは 針のついた注射器だ

小瓶のなかに入った 黄色い液体を吸い上げる

黒磯

心配することはない

黒磯

これは君を甦らせる

黒磯

魔法のようなものだ

男はそういうと おもむろにおれの左腕を掴んだ

ひっ

黒磯

心配することはない

女はガーゼで 上腕を2度ほど拭った

注射針を ずぶりと埋め込む

抵抗することはできない 全てがこのふたりに掌握されている

黄金色の薬剤が 体内に打ち込まれていく

いっ…痛…

蛇に咬まれたかとおもうほど ひどい痛みが腕全体にまわる

黒磯

大丈夫

黒磯

この注射は

黒磯

抗生物質と

黒磯

栄養失調に効くビタミン群

黒磯

補水液とアルギニン

黒磯

脳機能増強剤

黒磯

触感度増加物質など

黒磯

きみを元気にするための

黒磯

いろんな成分が一堂に会した

黒磯

まさにきみのための薬だから

黒磯

わたしは…申し遅れたが

黒磯

黒磯理化学研究所の所長です

黒磯

きみの身体と状態を

黒磯

分析することにおいては

黒磯

きみより正確だ

黒磯

では…

台車を押して奥へ行く女に続いて

黒磯は革靴の音を鳴らしながら 部屋を後にした

なんなんだ…

…ぐうっ

餓えた胃が 引き裂かれるように傷んだ

心臓が脈打つたびに 腹部が強烈に痛む

そればかりではない さっき注射を打たれた腕が

内部から破裂しそうなほど 激痛を発している

その痛みが 腕から肩へ首へ

頭部 反対側の腕と臓器

血流を辿るかのように 全身に伝わる

耐えがたい痛みによって 身体が風船のように 膨らんでいるような錯覚を覚える

しかし意識は途絶えることはなく 痛みを感じることに 集中させられる

あ……ぐっ……

くる…しい……

善子

起きて

気がつくと 霞んだ視界の中から

老女が現れた

善子

気分はいかが?

善子

さあ起きて

善子

起きろ

善子

弱ったふりしてるんじゃない!

杖が右腕に振り落とされた

うああーっ!

かつて感じたことのない痛み 杖が当たった箇所が 破裂しそうなほど

ひい…ひいっ!

痛い…

善子

わたしの前で寝たふりしてんじゃない

善子

次ふざけたマネしたら

善子

もっと辛い目に合わせてやる

ぐっ…

なにが望みなんです…?

こんな…

老女はおれを のぞきこむように その顔を近づけた

善子

あんたには

善子

愛する者を失った

善子

遺族の気持ちなど

善子

理解できない

そんな

愛する者って…

善子

ひょっとして

善子

わたしが誰か分からないのかい

誰なんですか

いったい…

善子

お前は勘の悪い男だ

善子

いい?

善子

よく聞いておきなさい

善子

わたしの娘は

善子

1週間前は元気だったのに

善子

突然死んでしまった

善子

自殺だった

善子

あまりにも突然だった

善子

想像できる?

善子

親よりも子が先に逝ってしまう

善子

あまりにもひどい惨劇をうけた

善子

この感情を

善子

善子

わたしの名前は善子

善子

…最初から話しましょう

善子

わたしがこの世に生を受けてから

善子

71年になる

善子

けれど70年間

善子

わたしは常に品行方正な

善子

汚点のない生き方をしていた

善子

後ろめたいものをつくらないように

善子

言い換えれば

善子

当たり障りのない人生を送っていた

善子

でも

善子

それに不満はなかった

善子

波乱万丈の人生よりも

善子

穏やかに日々を過ごすほうが

善子

わたしのあとを生きる者たちに

善子

幸福を与えられると信じていた

善子

わたしのひとり娘

善子

美佐子という名前だけど

善子

彼女にも清く正しく生きろと

善子

わたしは教えた

善子

学校ではそこそこの成績だったが

善子

彼女は正直者だった

善子

わたしの望みどおりの

善子

かわいい娘だった

善子

彼女はわたしの孫を産んだ

善子

名前は璃々子

善子

わたしにとって

善子

世界一かわいい愛すべき子だった

善子

その子がまたわたしに

善子

よく懐いて

善子

わたしの教えをちゃんと守った

善子

読書が好きで

善子

明るい子だった

善子

誰に対してもやさしく

善子

大事なものを守りたいという思いは

善子

わたしにそっくりだった…

善子

でも

善子

何事もなかった70年間は

善子

たった1週間も経たないうちに

善子

ひとりの男にぶち壊された

善子

男が撮影したひとつの動画

善子

璃々子に卑猥なことをさせている

善子

忌まわしい忌まわしい動画

善子

わたしは最後まで見ることに

善子

耐えられなかった

善子

それがネット上にはびこり

善子

汚らわしい男たちに

善子

何度も犯されている

善子

何度も

善子

何度も何度も

善子

その末に

善子

現実に耐えられなくなった璃々子は

善子

みずから車に轢かれて命を絶った

善子

それがあとからわかったときの

善子

わたしの心の虚しさ!

善子

絶対に犯人を突き止めてやる

善子

わたしはそう決めた

善子

犯人が誰であれ

善子

ただで許しておくわけにはいかない

善子

そんな折

善子

わたしの携帯電話に電話があった

善子

元県警察デジタル性被害対策課の

善子

永井ユウトという方からだった

善子

永井さんはほんとうに

善子

わたしたちの被害の実情を

善子

ようく知っていて

善子

わたしたちに寄り添おうとした

善子

永井さんは言っていた

善子

当事者ももちろん辛いですが

善子

いちばん辛いのは

善子

それを支えようとする人ですと

善子

永井さんは

善子

犯人が誰かつきとめた

善子

犯人を連れてくるといった

善子

言う通りにしてくれと

善子

そうすればあなたが思い描く

善子

最高の復讐を

善子

成し遂げることが出来ると

善子

彼は言っていた

善子

ぼくはぼくにできることを

善子

全てなしとげたと…

善子

あとはあなたが

善子

直接断罪するのだと

善子

だから

善子

わたしは永井さんのあとを

善子

継がなくてはならない

そんな…

話がまったく違う

だってそいつが語ったのは 璃々子に対する

変態みたいな欲情だ

まさか

ありったけの金を使って

好き放題させるというのか

善子

理化学研究所のスタッフを2名と

善子

大柄な老人を雇い

善子

わたしに復讐をさせる

善子

彼もあんたのことを憎んでいた

善子

あんたを虐げれば

善子

必ず

善子

必ずこうした犯罪は減ると

善子

そう電話で話してたわ

…ま

待ってくれ!

お…おれに

もう一度時間をください…

善子

ええ?

善子

なんだ

その…璃々子の

璃々子の…ぐっ…

璃々子のお母さんを呼んでください!

そうすれば

そうすればさっきの話が

全部間違いだと証明できる

善子

…は?

老女はにっと喜色をうかべると 大きな口を開いて笑い出す

善子

は…はは……

しかしその両目から 涙がつぎつぎにしたたる

えっ…

善子

美佐子かい?

善子

美佐子は…

善子

美佐子も死んだんだ!

善子

なり止むことのない電話

善子

アバズレを産んだ女と

善子

罵られ蔑まれ

善子

その果てに耐えきれなくなり

善子

璃々子のあとを追うように

善子

包丁で喉をついた

善子

あんな死に方して

善子

痛かったろう

善子

苦しかったろうね…

善子

でも

善子

もうわたしの決心は

善子

揺るがないよ…

老女は杖を握りしめた

おれはまた腕を叩かれるかと思ったが そのまま老女は引きさがる

善子

うっ…うっうっ…

老女は苦しげに泣き声をあげながら

もう一度血走った目をこちらへ向けた

善子

あんたは

善子

毎日殺されても殺され足りない

善子

呪われた人間だ

善子

自分が他人にしてきた底なしの苦しみを

善子

思い知れ

そこまで話し終えると

冷酷な表情が ふたたび戻った

そして

部屋の奥からまた足音が 近づいてくる

台車の車輪が 転がってくる音も

寒気がしてきた まさかまたあの注射だろうか

黒磯

こんにちは

黒磯

お世話になります

善子

黒磯さん

善子

ありがとうございます

善子

すべて計画どおりに進んでいます

黒磯

こちらこそありがとうございます

黒磯

しかし

黒磯

ほんとうにこうした行為が

黒磯

明るみに出ることはないのですか?

善子

ありえません

善子

誰もこの復讐を

善子

白日のもとにさらすことは

善子

ないのですから

善子

それにわたしたちがやっているのは

善子

正当な行為です

善子

それを咎めるほうが間違っています

黒磯

ですが…

善子

いいえ

善子

あなたがたはなにも心配しなくていい

善子

このことに関しては口を封じ

善子

3億円の報酬を受け取ったら

善子

静かに身を引けば

善子

なにも恐れることはない

黒磯

そうですか

黒磯

承知しました

彼らは 一斉に好奇の目を おれに向けた

黒磯

よし

黒磯

では八次

黒磯

インジェクションAの投与を

八次

はい

注射器が薬品を吸い上げている

や…

やめてくれ!

おれは

おれがなにをしたって言うんだ!

おかしい!

なんでおれだけが!

体力はほとんど残っていないはずなのに

逃げたいという意志による 叫び声だけは 渇いた喉から否応なく発される

やめろ!

やめてくれ!

黒磯

さて

黒磯

今日は左腕かな…

黒磯

静脈から全身に鮮やかにまわる

黒磯

人体で使うのは

黒磯

きみが初めてだ…

黒磯

おい八次

黒磯

きちんと押えておけよ

八次

はい

やめろー!!

こんなことして

なんになるってんだ!

腕が押さえつけられ

注射針が 筋張った腕に浮いた血管に つきささった

視線を上げると

老女と目が合ってしまった

善子

もっと

善子

もっと苦しみなさい

やめ…!!

あーっ!

痛いっ!痛いっ!

うがが…ああっ!

うぉぉ…おおっ!!

どのくらい 時間が経ったのだろう

全身がひどくだるく いまにも意識が飛びそうになる

だが身体中をめぐる熱と痛みが 有無を言わせず

意識をここに 繋ぎとめている

恐怖と苦痛だけが増大し あとの感覚は果てしなく薄れていた

つまり皮肉にも この拷問を耐え抜く力のみが おれに残されていた

どうする おれはどうなるんだ

戦慄に支配された思考は 全ての可能性をはぎとり

不可逆性のみを 脳に上塗りしつづける

これが地獄だというのか

そのとき

また扉が開く音がした

あの台車が入ってくる音だ

あの注射を打たれるのだろうか

ふたりがはいってきた その後ろに老女が

黒磯

どうだい

黒磯

辛いか?

……

言葉が出てこない なにを喋ればいいのかすら 分からない

黒磯

とうとう言語野も衰弱したようだ

黒磯

これで「最終段階」に進めるかな?

八次

これまでのデータをまとめると

八次

平均体温39.7℃

八次

脈と血中酸素濃度はやや低めの正常値

八次

ヴァイタルも正常

八次

特措フェーズはレベル4に該当

八次

「最終段階」は実行可能な閾値内です

黒磯

なるほど

黒磯

確かに脳波も

黒磯

見立てどおりに変化している

黒磯

つまりいま

黒磯

「最終段階」に適切な材料は

黒磯

全て揃ったということだ

黒磯

じゃあやろう

黒磯

八次

黒磯

雑剪を

八次

はい

白衣の女は 台車からきらめきをはなつ ハサミを取り出した

黒磯はマスクをして 薄いゴム手袋を両手にはめ ハサミを受け取る

するとおれの着ていた シャツの裾をつまんで

ざしざしと音を立てながら シャツを切っていく

な…なんだ

なにをする…!

黒磯

きみがこれまでに受けてきた施術は

黒磯

すべてこのためにあったんだよ

黒磯

仕上げ…いや

黒磯

本番、というべきかな

いっきにシャツを切り開いて

おれの胸部が顕になった

なんだよ…

なんなんだ…

黒磯

八次

黒磯

ヴァイラルヨードを

八次

はい

女は小さな瓶を取り出す

黒磯は両手で受け皿をつくる

そこに薬瓶の中身が トポトポと注がれた

褐色のどろっとした液体だった

これは…

黒磯

きみにもすぐわかるさ

黒磯は両手に 液体を馴染ませていくように 塗りたくった

ふいに 先程の行為と

これから行われるであろう行為が

頭の中で繋がった

……まさか

やめろ

するな

お願いだからしないでくれ!

黒磯

その願いは

黒磯

聞けないなぁ

黒磯

すべて計画どおりに行わなくては

黒磯は液体でてらてらした両手を ゆっくりおれの両胸に当てた

うあっ!

うああーっ!!

お前…なんてことを…

ひぃっ!やめてくれ!

いますぐ…その手を離せ!

円を描くように 両手が動く

これ以上なく不快な感触が 肌に刷り込まれていく

この野郎!

このホモ野郎!!

やめろ!

もうしないでくれ!

執拗に ローションをぬりこむように 黒磯は撫でまわす

黒磯

どうかな

黒磯

あああー!!

やめろっ!

黒磯

八次

黒磯

こんなもんか?

八次

準備できています

八次

全身へのディストリビュートは

八次

いつでも可能な状態です

ようやく黒磯が手を離した 液体は糸を引きながら おれの胸にべったり着いていた

うっ…ぐ……

黒磯は老女を手招く

黒磯

善子さん

黒磯

準備は整いました

黒磯

八次

黒磯

針を消毒しておけ

老女はゆっくりとこちらに 歩み寄ってきた

黒磯

では最終段階をはじめましょう

黒磯

最後は善子さん自身の手で

黒磯

この哀れな少年を

黒磯

生まれ変わらせるのです

黒磯

さきほどわたしが彼に塗布したのは

黒磯

逆性拡散剤という

黒磯

プログラミングされたウイルスです

黒磯

このウイルスが傷口から体内に入り込むと

黒磯

体内で拡散する

黒磯

普通の人間にこのウイルスの影響は

黒磯

ありません

黒磯

ですが彼はインジェクションAの投与によって

黒磯

このウイルスの侵食を受け入れる

黒磯

という性質を持っている

黒磯

このウイルスが体内に入るだけで

黒磯

彼の身体は変異を起こす…

黒磯

それが前段階と本番によって

黒磯

もたらされる

黒磯

驚異のテクノロジーなのです

黒磯

さあ

黒磯

前置きが長くなった

黒磯

善子さん

黒磯

あとは彼に2本ほど

黒磯

針を打ち込むだけです

黒磯

両端の乳腺に

黒磯

つまり乳首に1本ずつ

なんだと!?!?

黒磯

そうすれば全身の感覚が

黒磯

性感帯を通じて

黒磯

狂い始めますから

善子

わかりました

老女は黒磯から 2本の長く細い針を受け取る

やめろ…!

なんでこんな

こんな目に合わせる…!

善子

これでわたしも

善子

気が晴れるかしら

善子

いいえ

善子

少しも晴れない

善子

でもこうするしかないわ…

やめろ…

やめろやめろやめろ!

ひどすきる!あんたは悪魔だ!!

善子はやさしい笑みを浮かべ おれに針を見せつけた

それからその針を おれの胸部に運んだ

ああああああああああ!!

やめろおお!!!!

善子

……え……え

黒磯

あ………ざ…………

善子

……は………ど………

銃声

善子

…………い…………

黒磯

……で………

足音

善子

………………………あ…………

………………

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