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103号室

決して広いとはいえない密室に大柄な男が2人─────正確には人間ではないが、座っていた

────見慣れない顔に若干戸惑いながら

イヴァン

えっと…その、君の名前を聞いてもいいかな?

一文字則宗

ああ、僕か?
僕は一文字則宗、所謂刀の付喪神ってやつさ

一文字則宗

お主は?

イヴァン

僕はイヴァン・ブラギンスキ
ロシアだよ

イヴァンがそう言うと、則宗は首をかしげた

一文字則宗

ロシア…って国じゃないか、もしかしてお主は国の付喪神的なやつか?

イヴァン

う〜ん…説明が難しいなぁ…
でも付喪神ではないよ

一文字則宗

ほぉ…世の中にはまだまだ妙なことが沢山あるんだなぁ…

一文字則宗

で、その手に持っている棒はなんだ?

光で照らされて銀色に輝いているそれを指差した

イヴァン

これは蛇口
別に僕、これでヒトを56している訳じゃないから安心してね

いつものような笑顔を見せると、則宗は豪快に笑った

一文字則宗

うはははっ蛇口か、持ち歩いている奴は見かけたことないな

一文字則宗

何回も質問して申し訳ないが、マフラーしていて厚着しているの、暑くないか?

一文字則宗

最初のときからずっと着込んでいるじゃないか

外は風呂と同等の気温で、太陽がギラギラと街中を照りつけている

各部屋には冷暖房が完備されているとはいえ、多少は蒸し暑い

イヴァン

そうだね、コートは脱ごうかな

クリーム色のコートを脱ぎ、壁にあった年季の入ったハンガーにかけた

一文字則宗

マフラーは外さないのか?

イヴァン

うん、外したくないかな

一文字則宗

何か事情があるのか
過去の戦いの傷か何かがあるのか?

イヴァン

う〜ん…

一文字則宗

あ、答えたくなければ答えなくていいぞ?

考えるイヴァンに慌てて則宗が一言つけたした

その言葉の意図を汲んだのか、イヴァンはすぐに言葉を返した

イヴァン

うふふ、秘密だよ(^し^)

一文字則宗

ご想像にお任せします、ってか!うははっ
これは何だか秘密を暴いてみたくなるなぁ

イヴァン

そんなに見たいなら見せてあげなくもないよ?

一文字則宗

いや、どうせなら考えさせてくれないか?

イヴァン

勿論、君に当てられるかな?うふふ…

ニカッと悪い顔をして笑うと、則宗はまたまたいつものように豪快に笑った

一文字則宗

やっぱりおそロシア…なんてな、うはははっ!

ひとしきり笑った後、イヴァンは悪い顔から普通の顔に戻して則宗に尋ねた

イヴァン

則宗君、今度は僕から質問してもいい?

一文字則宗

勿論さ、何でも聞きな

イヴァン

…僕のこと怖くないの?

部屋に沈黙が流れた

先ほどまで差していた陽は別の場所を照らし始めた

イヴァン

なんてね、なんかいきなり暗い話みたいになってごめんね
でもこれだけはどうしても気になっちゃって─────

一文字則宗

うははは、お主やっぱり気になるか

イヴァンが顔を上げると、予想とは裏腹にそこには先程とは変わらない則宗の姿があった

一文字則宗

僕は怖くないよ、むしろ面白い坊主だなって思っているさ

一文字則宗

数百年生きてきたじじぃだから分かるさ、お主が良い奴だってな

一文字則宗

…って、泣くな…僕までつられちゃうじゃないか

イヴァン

え…?僕泣いてるの…

溢れた雫は頬を伝い、首へと落ちる

その時確かに泣いているのだと感じ、とめどなく涙が流れた

イヴァン

僕……友達少ないし、ずっと怖がられてばっかりだったのに…

イヴァン

則宗君は…

一文字則宗

無理をするな、落ち着きたまえ

則宗は流れる涙を手ぬぐいで優しく拭い、肩を抱いた

イヴァン

僕…こんなに優しい人を撃つだなんてできないよ…!

一文字則宗

…ああ、そうか
僕達のうちの1人しか出られないのか

ふと扉のほうを見ると、制限時間の示されたタイマーは残り3分を切っていた

またしばらく静寂に部屋は包まれた

しかし、制限時間が残り1分30秒を切った頃、則宗が突如口を開いた

一文字則宗

……ならば、僕が殺されよう

イヴァン

………え?

則宗は自身の本体の刀を抜き、両手で持った

一文字則宗

こればかりは仕方ないからな、制限時間というものがある以上、早くどちらかが死ななければ何が起こるか分からない

イヴァン

いや、でも─────

一文字則宗

譲ろう
この命、お主の国の未来に預けるとしよう

イヴァン

え、でも君の国と僕の国は…

イヴァンが伸ばした手を則宗は止めた

一文字則宗

敵国とか友好国とか関係ない、それはあくまでも君の意思ではないだろう?

一文字則宗

それに僕みたいな老いぼれはどうでもいいから、若い奴が生き残って未来を守ってくれ

イヴァン

僕もそんなに若くないよ、だから…

一文字則宗

刻限が迫っている、今回は申し訳ないが諦めてくれないか…?

イヴァン

……

残り30秒になり、カウントダウンの音が鳴り始める

一文字則宗

……ただし、忘れるな
生き残るということは、ただ生きるよりも遥かに重くて辛い

一文字則宗

僕のことは早めに忘れた方が良いかもな

一文字則宗

じゃあ、いつか会う日まで─────

イヴァン

……っ

部屋に鉄の折れる音が響いた

それと同時に、扉のほうから鍵の開く音がした

タイマーは残り10秒を示している

イヴァン

じゃあ、僕が…生きるよ

イヴァン

君の分までじゃない、「君が選んだ分として」生きるよ…

扉を開けると残り香が微かに香った

推し(&その他周辺キャラなど)を集めてデスゲームしてみた

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