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体育館 用具室

ツヨシ

廃校になったとはいえ、それなりの備品が残っているとは思ったけど、これ――どれだけ前のやつなんだよ。

体育用具室に乱雑に取り残されていた遺物。

何がどうなってそこに置かれたのかは分からないが、今のツヨシ達にとって、これほどありがたいものはなかった。

カシン

いにしえの剣道着ですか――。

カシン

よく、着れますね。

ツヨシ

仕方ねぇだろ、贅沢言っていられるほど時間もねぇんだ。

剣道着で身を包んだツヨシは、面を被ると顔をしかめた。

年季――というやつか。

カシン

私はこれでいいでしょう。

カシンは比較的綺麗目な、エンパイアプロテクターを身につける。

ツヨシ

剣道と野球の審判かよ。

ツヨシ

なんでもありだな。

カシン

贅沢を言ってはいられないのでしょう?

カシンの言葉に腕時計へと視線を落とす。

残り時間は5分を切っていた。

ツヨシ

そうだな、行くぞカシン。

2人は体育館へと戻る。

ツヨシ

いいか、作戦はこうだ。

ツヨシ

比較的、俺のほうが銃弾を受けても大丈夫そうだから、俺が前に出る。

ツヨシ

で、隙を見てカシンがあいつにタックルだ。

カシン

――あの、それって作戦って言えます?

ツヨシ

うるせぇな、とにかく時間がねぇから、一気に突っ込むぞ。

渡り廊下の向こう側に視線をやると、まだ人影が立っている。

微動だにもせず、こちらをじっと見つめている。

カシン

ツヨシ、ちょっと待ってください。あれってもしかして――。

ツヨシ

行くぞカシン!

カシンの言葉を完全に無視して、ツヨシは駆け出した。

着慣れていない道着のせいか、思っていたよりもスピードが出ない。

それでも、いつ発砲があっても大丈夫なように、ツヨシは身構えつつも前進。

幸いなことに、あちらからの発砲はなかった。

ツヨシ

おらぁー!

叫びながらも人影にタックルすると、そのまま床へと転がり込んだ。

ツヨシ

え、これって――。

カシン

やれやれ、だから待てと言ったんですよ。

少し遅れて到着したカシンが、呆れたかのように呟く。

ツヨシ

ハリボテかよ――これ。

そう、ツヨシと共に床へと倒れ込んだもの。

それは、等身大のパネルだった。

軍服を着て、ガスマスクを被った人物のパネル。

カシン

おそらく、最初の発砲は本物。

カシン

私達を牽制してから、等身大のパネルを置いて時間稼ぎをしたのでしょう。

ツヨシ

くそ、わざわざこんなものまで用意していたのかよ。

カシン

まぁ、うまく行けば私達を足止めすることができるでしょうしね。

カシン

そもそも、私達がここを突破できなければ、正面玄関も開けられないわけで――。

ふと、カシンの言葉を遮るかのように、複数の足音が聞こえる。

ツヨシ

――誰だ?

ツヨシ

マドカ達はまだ正面玄関で待ってるはずだろ?

反射的に腕時計を見る。

もう時間は数分程度しか残されていない。

カシン

とにかく正面玄関へ。

ツヨシとカシンは正面玄関へと駆ける。

正面玄関でマドカ達と再会。

マドカ

あんた達、なんていう格好してんのよ。

ツヨシ

説明は後だ。

ツヨシ

ってか、なんでマドカ達がもう中に入ってんだよ?

ヒメ

イチカのお父さんが市役所の人で、イチカが学校の鍵を借りてきてくれたんだ。

ツヨシ

――人間って改心するもんなんだなぁ。

イチカ

うるさい、それより時間がないんじゃないの?

カシン

えぇ、このままだと間に合わなくなります。

ヒメ

だ、誰でもいいから3年D組の教室へ!

ツヨシ達は競うようにして階段を駆け登る。

ツヨシ

(教室にたどり着くのは、あくまでも大前提)

ツヨシ

(問題は誰が教室にたどり着いたほうが、セイヤの勝率が上がるかだ)

道着を着たまま階段をのぼるのは厳しく、最後尾を走るツヨシ。

階段を登りきると、後は廊下をストレートに走り抜ければいい。

一番奥が、かつて事件のあった3年D組の教室。

ツヨシ

(誰が教室に飛び込むべきか)

ツヨシ

(まず、カシンとイチカは真っ先に除外する)

ツヨシ

(クラスで浮いてたカシンと、あの事件の言わば発端となった中心人物のイチカ。この2人が教室へセイヤのためにやってくるとは考えないだろう)

ツヨシ

(となると、俺かマドカかヒメ)

ツヨシ

(やっぱり、ここは俺が教室に飛び込むべきだろう)

ツヨシ

みんな聞いてくれ!

先を走るみんなに声をかけるが、しかし体力を思っていた以上に消耗し、また面を被っているせいで声がくぐもっているのか、誰にも声は届かなかったようだ。

カシン

もう時間がありませんよ!

確かに時間はない。

けれども、教室に飛び込むのが誰でもいいというわけではない。

ツヨシ

待ってくれ、教室には俺が!

声は虚しく面の中だけで反響し、そして誰かが教室に飛び込む姿をツヨシは見た。

ツヨシ

マジかよ……。

ツヨシ

それ、絶対にセイヤには予測できねぇよ。

ようやく状況を理解したのか、教室の手前で立ち止まるカシン、マドカ、ヒメ。

マドカ

え、よく考えたら、これってまずいんじゃない?

ツヨシ

あぁ、かなりな。

ツヨシ

セイヤが事前に何かしらの手を打っていなきゃ、多分これは予測できない。

ツヨシ

イチカが真っ先に教室に駆けつけるなんてな。

教室へと誰よりも早く駆けつけた人物。

それは、まず誰も予測できないであろう【ナンバーズ】の中核。

イチカであった。

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