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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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トーマ

語らなかった過去って

進次郎

きみは気づいていなかったのかい

進次郎

自らの罪を過去に葬って

進次郎

無実を装うつもりかい?

トーマ

なにを言っているんだ

進次郎

じゃあ

進次郎

ひとつヒントをやろう

進次郎

「自殺した彼女」

進次郎

どうだ

進次郎

思い出せることはないか

おれは 右拳を固く握っていた

進次郎

自分は関係ない

進次郎

そう思ったんだろう

進次郎

しかしだな

進次郎

きみが思っている以上に

進次郎

この問題は重大だ

トーマ

それを話せってのか

進次郎

ああ

進次郎

それがこのゲームの攻略の鍵を

進次郎

握っているのだからな

トーマ

トーマ

おれは…

いつの間にか 立ち上がっていたおれは

その場にしゃがんで 話を始めた

熱を帯びた身体

額に浮き出た ベタベタとした汗を拭う

彼女が亡くなる少し前だった

彼女は大学を休むようになり

おれとのメッセージも なんだか味気なくなってしまった

おれは実際彼女に会いに行って 訊いた 「最近元気ないけど、なにかあったの?」と

しかし彼女は作り笑いばかりで なにがあったか

話してくれない

そして随分 痩せ細っていた

「浮気とかしてるわけじゃないよね?」

おれが冗談めかして言うと

彼女は泣き出した

そして言った

「そんなんじゃない」

「でももう 耐えられない」と

おれには意味がわからなかった

数日経って

彼女の両親から連絡があった

彼女が死んだという 連絡だった

あまりにも唐突な死

到底受け入れられなかった

だから数日間は 彼女と撮った写真を見ながら

悲しみと懐古に耽った

だがそれから少し経った時のこと

偶然彼女のポルノ動画が

動画投稿サイトにアップロードされていたことを 知った

誰が? なぜ? なんのために?

おれは断じて それに関与していない

まさか ポルノ業者が撮影したのか

それを苦にして死んだのか

ともかくにも おれはその動画を

見ることが出来なかった

あまりにも恐ろしいことのように 思われたからだった

そしてそれは 爆発的な広がりを見せていて

日本のみならず

海外のサイトにも広まっていた

つまり

もうネットから 消すことができないぐらい

拡散されていたのだった

彼女はそれに耐えられなくなって 自ら命を絶ったのだ

そうとしか考えられない

それを聞いた進次郎は がっくりと項垂れていた

トーマ

これが

トーマ

お前が知りたいと

トーマ

願っていた過去か?

進次郎は時々 肩を上下に震わせながら

泣きじゃくっているように見えた

進次郎

うっ…うっ…

進次郎

うっ

トーマ

これがお前の

トーマ

知りたかった過去か

進次郎

うっ…う

進次郎

ううう…ふ

進次郎

ふ…ふ…

進次郎は少しずつ 顔を上げた

進次郎

ふは…ははは

進次郎

はははは

進次郎

あはは、はははは

進次郎は腹がよじれるぐらいの 大きな笑い声を発していた

進次郎

はー、はー

進次郎

なんだ、お前の話は

進次郎

あははは

進次郎

まだ本質の20%ってとこだな

トーマ

本質って

進次郎

あはははは

進次郎

きみは知らないふりを決め込んだつもりだろう

進次郎

でも真実がある以上それは変えようがない

進次郎

きみはここに来る前も

進次郎

もしかしてパソコンの画像で抜いてたのかもな

進次郎

汚ねえ男だなあ、ははは

トーマ

違う…

進次郎

違う?

進次郎

おいしい思いをしておいて

進次郎

しかも人を死なせておいて

進次郎

よくそんなことが言えるな

「負けた」という言葉が 頭の中で培養され増殖する

頭皮が痒くなり 爪を立ててガリガリとかく

トーマ

違うんだよ

トーマ

おれはネットに流したりなんてしてない

進次郎

でも

進次郎

彼女の死に拍車をかけたのは

進次郎

きみ自身なんだろう?

進次郎

さあ、もっと本質を語りなよ

進次郎

おれがゲームオーバーを宣告する前に

進次郎

「本質」を語れば

進次郎

スマホは返してやるよ

おれの両手は震えていた

トーマ

くそ…

トーマ

くそ!

進次郎

どうする?

頭の中に 熱い血がカーッとのぼる

トーマ

ああ

トーマ

喋ってやるよ

トーマ

おれの彼女の名前は——

彼女の名前は 植村詩乃

おれが大学3年になった時に

入学してきた子だ

授業で一緒になったとき たまたま隣に座っていた

彼女はなんの気なしに おれに話しかけたようだが

気づいたらおれも 詩乃に興味を持ち始めていた

何度か話しているうちに おれはもっと詩乃に近づきたいと

思うようになった

確かカフェに誘って

最初のデートをしたとき

彼女はおれに 「付き合ってください」と言う 申し出をした

断る理由などどこにもない 受け入れる以外に思いつかない

おれは即座にこう言った

「おれでよければ 付き合ってください」

「おれも詩乃ちゃんのことが 好きだったよ」と

こうして おれと詩乃の交際が

始まることになる

付き合い始め2週間ぐらい 経った頃だろうか

度々デートを重ねていた おれと詩乃は

はじめて 「家デート」を することになった

詩乃が おれのアパートに来たのだった

詩乃

わー!

詩乃

ここで暮らしてるんだあ

トーマ

あんまりいいとこじゃないけど

トーマ

あんまり外の音が聞こえないから

トーマ

住み心地はいいんだ

詩乃

わたしも一人暮らし

詩乃

してみたいなあ

詩乃は おれのシングルベッドに

ごろりと 横たわった

詩乃

ねーえ

トーマ

どうした?

詩乃

トーマってさ…

詩乃

あのさ…

トーマ

んー?

詩乃

興味、ないの?

詩乃

エッチなこととか…
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