天使サン。

天使サン。

こんちには。突然ですがあなたは死にたいですか？

にんげんは唯一自ら命を絶つ珍しい生き物ですよね

あぁ。こさめが何者かって？

申し遅れました。人の願いを叶える天使です。

そう少女は顔を真っ青にして震え上がりながら喋った

小雨をみると皆怖気付くの。

そんなことされちゃこさめが悪いみたいじゃん。せっかく願い事叶えてあげるって言うのに

正直心が凄く痛む。けれどもそれが仕事だから。

心の依頼主の本音に気づかせてあげるのが仕事だから。

気付かないふりをして見て見ぬふりで目を瞑って今日まで歩んできた

人間とは実に傷つきやすくて繊細だ。

人間の相手するのだって馬鹿らしい

そんな事を心の中でおもう小雨は天使の役目なんかより

悪魔の役目の方がよっぽど似合っていただろう

こさめは相談事も聞く。

まぁ心は悪魔でも事実上は天使だからね。

彼はこさめと真反対の『心は天使仕事は悪魔』の人材だろう

そう。悪魔の仕事は天使と逆で本音を見せないように隠す仕事のため、心の依頼主に傷つける言葉を与えなければならない。

彼は潤んだ瞳で呟いた

もう消えてしまいたい＿

と

そういい、彼は消えた

恐らく彼は生きてた頃、心優しい青年だったのだろう。

優しい人ほど報われない世界。知れば知るほど世界は憎たらしい

こんな古びた建物に十五歳の少年が居るのだろうか。

こさめが少年に触れると八十年ぶんの寿命が少年に引き渡される

やっぱり感謝されるような依頼だと気分が良くてまだ続けたいなと感じる

これを最後の依頼にして終わったら消えてしまおう。

緑の髪を風で靡かせる少年がフェンスに腰を掛けてすわっている

すちくんは目を見開いたけど人生を諦めたような目で首を振った

すちくんは多分今までの心の依頼主の誰よりも自殺願望が強いのだろう。

人間を極限まで追い詰める言葉。

"大丈夫"

すちくんはどうやらこれを使いこなしてるらしい

すちくんは三年前行方不明になったこさめの恋人だ。

すちくんは手を広げてこちらを見て微笑んでいる

すちくんっ…

こさめはすちくんの腕の中で静かにぽつりぽつりと呟いた

こさめの泣き声は屋上に響き渡りこだましていた。

すちくんは頬を膨らませてこさめのほっぺを掴む

今まで下ばかり見ていて気付かなかった空の美しさ。

少しは前を見て歩くもんだな

こさめは涙で視界がぼやける中すちくんに抱き着いて囁いた

死にたいですか？

あなたが死にたいのならいつでも迎えにいきます。

ただし、後悔はしない様な選択をして下さいね

再度聞きますね

あなたは

死にたいですか？

天使サン。

… 𝗍𝗁𝖾 𝖾𝗇𝖽