セントラル・アーカイブ/外緑区:改変波 監視室
日向 涼
(記録端末を睨みながら)
日向 涼
....改変波、やっぱり6件以上に拡がっている。
‘‘イレーネを犯人とした物語‘‘を崩しただけで、この影響か....
‘‘イレーネを犯人とした物語‘‘を崩しただけで、この影響か....
イレーネ
涼....この数字、中央都市歴史年表にも揺らぎが出てる。
イレーネ
‘‘あの事件‘‘を契機に生まれた別の法案が消滅している。
日向 涼
....一つの‘‘物語‘‘が、人の行動も、政策も変えてたってことか。
イレーネ
それが記録局の怖さ。事実じゃなくても、物語が‘‘信じられてきた‘‘なら、それが次の現実を生んでいく。
アーカイブ中層・認可外通路
日向 涼
(隠し階層の扉を開ける)
日向 涼
これが....セントラル・アーカイブの‘‘深層記録層‘‘――
日向 涼
....物語の原型が眠る場所。
イレーネ
誰も触れられないはずの場所よ。
イレーネ
あなたがなぜ、ここにアクセスできるの?
日向 涼
分からない。でも....最初に‘‘編集権限‘‘が付与された時、アクセスログの発信元がこの階層だった。
イレーネ
つまり、あなたは――
‘‘この場所から送りだされた存在‘‘の可能性があるってことね。
‘‘この場所から送りだされた存在‘‘の可能性があるってことね。
深層記録層:第零記述室
システム
【記録タイトル:世界原初伝 第0章】
システム
「この世界は‘‘語られし者‘‘によって作られた。だが彼は、やがて物語の中に溶けた。」
システム
「彼の意思を継ぐ者は、記録を書き換えることなく、語り直すことで世界を変える力得る。」
イレーネ
....これ....物語の始まりが、‘‘語り手‘‘だった?
イレーネ
じゃあ‘‘記録‘‘より‘‘物語‘‘の方が、先に生まれたってこと?
日向 涼
‘‘物語が記録を作った‘‘....?
日向 涼
今まで逆だと思ってた。
同時刻:記録局 本部
謎の人物(語り部)
....彼が‘‘深層‘‘に入ったか。
謎の人物(語り部)
――だが、それもまた‘‘予定通り‘‘。
謎の人物(語り部)
記録は確かに絶対だ。
だが、人は記録など見ない。人を信じるのは、常に‘‘語られた物語‘‘の方だ。
だが、人は記録など見ない。人を信じるのは、常に‘‘語られた物語‘‘の方だ。
謎の人物(語り部)
私はこの世界に‘‘完全な語り‘‘をもたらす。
謎の人物(語り部)
選択も、自由も、真実も――
謎の人物(語り部)
全て、美しく整った物語へと変えてやる。
アーカイブ最下層:凍結された記録書庫
日向 涼
....これ....‘‘誰も読まれていない記録‘‘....?
日向 涼
名前もない、存在もしない。
けど、‘‘存在したことにされる前の世界‘‘が、ここにある。
けど、‘‘存在したことにされる前の世界‘‘が、ここにある。
イレーネ
それは――世界‘‘語られる前‘‘の姿....
まだ物語になっていない‘‘本当の世界‘‘よ。
まだ物語になっていない‘‘本当の世界‘‘よ。
日向 涼
....俺たちが戦っている相手は、この‘‘語られていない真実‘‘を――
日向 涼
完璧な‘‘嘘の物語‘‘に書き換えようとしているんだな。
謎の人物(語り部)
....この世界の矛盾を止められるのは、‘‘語り手‘‘だけだ。
謎の人物(語り部)
君も‘‘選ばれし語り手‘‘ならば、見せてみろ――
謎の人物(語り部)
‘‘君自身の物語を。‘‘