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テラーノベル(Teller Novel)

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────息が苦しくなるほど

人がいるホームを抜けると

かつての故郷が、見えてくる

木陰が揺れ

漣は海に映え

鬱陶しいほどに虫が鳴く

…そんな場所だ

祖母の家

白波 渚

ただいまぁ〜

渚の叔母

あらぁ、渚ちゃんじゃない

渚の叔母

おかえりなさい

渚の叔母

久しぶりねぇ、待ってたわぁ

渚の叔母

背、伸びたわねぇ

白波 渚

あはは…

渚の母

──母さん、荷物どこに置けばいいー??

渚の叔母

あ、奥のお座敷使ってー

渚の母

はーーい

渚の叔母

渚ちゃん、私、莉仔と荷物の整理してくるわねー

白波 渚

はぁーい

白波 渚

(──…ただいま、おじいちゃん)

───ありゃ、もう帰ってきたのかい

白波 渚

白波 渚

あっ、おじいちゃん……

叔父の幽霊

もう夏休みか?

白波 渚

うん、そうなの

叔父の幽霊

はえぇなぁ……

白波 渚

…おじいちゃんはいつ来たの?

叔父の幽霊

あぁ、俺ぁ今朝来たんだ

白波 渚

(もう迎え火したのか…早いなぁ)

渚の叔母

───渚ちゃん?

渚の叔母

誰かお客さん来たー?

白波 渚

あっ、ううん!

白波 渚

何でもないよーっ

渚の叔母

そうー?声がした気がするのだけれどー

白波 渚

大丈夫だよーっ

叔父の幽霊

ははっ、これ以上ここで話すといけねぇなぁ

白波 渚

うん……そうみたい

白波 渚

それじゃぁ、またね

白波 渚

……おじいちゃん

叔父の幽霊

おうよ

叔父の幽霊

───水には近づくんじゃねぇぞ、渚

白波 渚

えっ?水…?

白波 渚

ちょっ…おじいちゃ……

白波 渚

──…消えた……

白波 渚

…水……?

渚の母

渚ーっ

渚の母

荷物持ってきてーっ!

白波 渚

あ、はーいっ

客間

白波 渚

──ふぅ…

渚の母

あ、そうだ渚

白波 渚

渚の母

近場、散歩してきたら?

白波 渚

えっ、散歩?

渚の母

うん、中学校卒業してから来てなかったから久しぶりだし

白波 渚

う、うーん……

白波 渚

なら、行ってこようかなぁ?

渚の母

あと、覚えてたらでいいんだけどぉ

白波 渚

え?

渚の母

…お茶菓子、頼むわね!

白波 渚

えぇ…

渚の叔母

──渚ちゃん、お出かけ?

白波 渚

うん、おつかい頼まれたから…

渚の叔母

そう、行ってらっしゃい

渚の叔母

熱中症気をつけなさいねぇ

白波 渚

はーい

チリン……

ありがとうございましたーっ

白波 渚

(これでいいかな?)

白波 渚

(本当はこれでもう帰って良いんだけど…)

白波 渚

(せっかくだから、散歩していこうかな)

白波 渚

…?

白波 渚

(こんな道、あったっけ?)

白波 渚

(でも、お店とかもあるし…)

白波 渚

(新しくできたのかなぁ?)

白波 渚

(───どこに、繋がってるんだろう…)

少し、ベタついた風が

頬を掠めた

微かに、鴉の鳴き声が聞こえた

西日がチリチリと肌を照らした

──もう、夕方なのだろうか

涼し気な空気が

私を襲った

波の音が聞こえる

───やがて、視界が開けた

そこは──────

白波 渚

……!

──綺麗な海だった

白波 渚

(でも、見た事ない景色の海だ…)

白波 渚

……綺麗…

吸い込まれそうな青と群青が

白い雲によって、成立していた

ただ、目を見開いてしまうのは

この景色が、まるで幻想みたいだったから

白波 渚

……

思わず、心地よい音を立てる波へ近づこうとした時のことだった

───ダメだ、「人間」

白波 渚

──……!

白波 渚

誰……?

振り返ったら

「君」を見つけたのだ

狐のお面を被り

人間とはかけ離れた見た目をしていた

質のいい髪が、サラサラ揺れて

私を、お面越しに見て

確かに、そういったのだ

……水には、近づくなよ

白波 渚

水…

白波 渚

(確か、おじいちゃんも…)

白波 渚

えっと、…誰?

俺が怖くないのか?

白波 渚

怖いっていうか…その…

白波 渚

幽霊、だよね?

身体は透けていても

深い青の装束だけは、はっきりと分かる

幽霊っていうか

神様

…神様って、呼ばれてるな

白波 渚

かっ……

白波 渚

神様っ?!

神様

あぁ

白波 渚

えっ……

白波 渚

(確かに、耳は尖ってるから、普通の幽霊じゃないのは分かるけど…)

白波 渚

──なんの??

神様

神様

─あっはははっ!!

白波 渚

?!

神様

お前、面白いな!

神様

俺が見えても怖がらずに、挙句の果てに「何の神様」だなんて!

神様

…余程慣れていると見える

白波 渚

え…え……?

神様

お前なら知ってると思うが

神様

この辺に神社あったろ

白波 渚

あ、あったね、そういえば…

神様

そこのだよ

白波 渚

え、えぇ…

神様

それにしても、危なかったな

白波 渚

神様

こんな期間に、水辺に近づいたらダメだろ?

白波 渚

それ、おじいちゃんも言ってたんだけど…

白波 渚

どういう事なの?

神様

何だ、知らねぇのか

神様

悪ぅーい幽霊に連れてかれちまうんだよ

白波 渚

悪い幽霊…?

白波 渚

…!

白波 渚

(私、もしかして凄く危なかったんじゃ……)

不意に、息が苦しくなった

まるで、溺れているみたいに

神様

よかったなぁ、俺が通りすがって

冷や汗が背中を伝う

何か、気味の悪い感じが

私の中で渦巻いている

神様

じゃなきゃお前、今頃……──

耐えられない、苦しい

白波 渚

───やっ、止めて!

神様

…!

白波 渚

はぁ……っはぁ…

白波 渚

っ…ごめんなさい

白波 渚

…取り敢えず、ここから離れたいの……

神様

…人間、ついてこい

神様

落ち着く場所、紹介してやるよ

白波 渚

…!

波浪神社

白波 渚

───はろう、神社…

神様

あぁ、ここが俺の神社だ

神様

小さいけどな、御利益はあるぜ

神様

それより、どうしたんだ?

白波 渚

何だか、急に…

白波 渚

…いや、何でもないや

白波 渚

…ありがとう

神様

ぁ゙ー、いいんだよ

神様

御礼なんぞ聞き飽きたし…

白波 渚

そっか…

白波 渚

(神様だとしたら、そうなのかなぁ?)

白波 渚

…でも、私は私で、借りを作ってる

神様

借り?

白波 渚

あの時止めてくれなかったら、…私は死んでたから

白波 渚

君は、「命の恩人」なんだ

神様

…要は、何としても御礼をしたいのか?

白波 渚

…うん

白波 渚

…それに何だか、私……

白波 渚

前にも───────

渚ーーっ!!

白波 渚

?!

渚の母

あーっ、こんな所にいたの?

渚の母

良かった、時間かかってたから何かあったのかと…

渚の母

でも、何してたの?

白波 渚

えーっと…

白波 渚

久しぶりに見る神社だったから

白波 渚

…気になっちゃって

渚の母

「波浪神社」?

渚の母

…あぁ、確かに久しぶりねぇ!

渚の母

なんでも神様は水を司ってるとか

白波 渚

…え!

白波 渚

(あの人が海に現れたのって、そういうこと?)

白波 渚

(私と容姿そんなに変わらなかったよね……?)

渚の母

さ、もう帰りましょ

渚の母

母さん、張り切って手の込んだ料理作ってるみたいよ

白波 渚

え……あ…

渚の母

どうしたの?

白波 渚

う、ううん……

白波 渚

大丈夫…

白波 渚

───あの…

白波 渚

……着いてきたの?

神様

──おう

叔父の幽霊

ほう、こいつぁ神様かい

白波 渚

(…おじいちゃんも馴染んでる……)

白波 渚

神様、好きに動けるんだ…

神様

何でだ?

叔父の幽霊

あぁ、俺ぁ…あまり広い範囲移動できねぇからな

白波 渚

でも、おじいちゃんが行ったところは基本的に移動できるし

白波 渚

それにおじいちゃん写真家だったから、言うほど狭くないんだよね

神様

へぇ、そりゃ凄いな

神様

とはいえ俺も、あの神社周辺でしか移動できないが…

白波 渚

……

白波 渚

(……神様なのに?)

白波 渚

あれ、なら何でここまでは来れるの?

神様

あぁ、この近くに波浪神社があるからな

白波 渚

あ、そうか!

神様

おう

神様

…そうだ、お前は海外とかも行けるのか?

叔父の幽霊

おうよ、これでもプロなもんでなぁ!

神様

へぇ…俺も撮ってもらいたかったな

叔父の幽霊

お、後でやって見るか

渚の叔母

渚ー、ご飯持ってくの手伝ってちょうだーい!

白波 渚

あ、はーい!

白波 渚

えっと…じゃぁ、2人とも

白波 渚

また、後でね

神様

あぁ

渚の叔母

──じゃーん、エビフライ!

渚の叔母

渚好きでしょう?

白波 渚

白波 渚

ありがとう!

渚の母

これほとんど母さんが作ったのよ

白波 渚

(凄いなぁ…)

渚の母

…ところで、母さん

渚の叔母

何かしら?

渚の母

渚が今日、波浪神社に立ち寄ってたみたいで

渚の母

私が迎えに行ったんだけれど……

渚の母

綺麗になったわよね?

渚の叔母

あぁ、そうなのよ

渚の叔母

前に新しくしたみたい

白波 渚

(あんなにひっそり建ってたのに、綺麗だったのはそういう事か…!)

白波 渚

ねぇ、私あの神社のことあまり知らないんだけどさ

白波 渚

何を祀ってるの?

渚の叔母

あそこはねぇ…

渚の叔母

確か、水に関する神様だったかしら?

白波 渚

水……

白波 渚

(お母さんも言ってたな……)

渚の叔母

えぇ、この時期「水に近づいてはダメ」と言われるでしょう?

白波 渚

白波 渚

(神様も、おじいちゃんも言ってた事だ…!)

渚の叔母

そういったことから、水害まで護ってくれるらしいわ

白波 渚

そうなんだ…

それとなく会話を続けていると

少し古い型のテレビから

地域のニュースが流れてきた

──8月16日、お盆の最終日に、

相模原町で海上打ち上げ花火を開催するようです。

今のところ、天気予報では晴れと出ているので、開催が楽しみですね。

花火は19時から、1時間の打ち上げとなるそうです。

相模原町では16時から波浪神社付近で歩行者天国となり……──

波浪祭りも開催される予定です。

これは期待が高まりますね〜。

えぇ、そうですね。

…はい、では次のニュースです─────

白波 渚

(波浪祭り…!)

白波 渚

(お盆最終日かぁ、私も行けるのかな?)

「波浪祭り」

相模原町で昔から続いている伝統行事である

道路に屋台が所狭しと並び

それだけでも充分盛り上がるのだが

大トリはやはり、海上での打ち上げ花火だろう

渚の母

浴衣持ってきて正解だったわね、渚!

白波 渚

う、うん?

渚の母

せっかくなら、行ってきたらどう?

白波 渚

えっと、良いの?

渚の母

全然いいわよ〜

渚の母

久しぶりだもの!

渚の叔母

ふふ、そうね

渚の叔母

着付けは任せてちょうだい?

白波 渚

(行かせる気満々だなぁ)

白波 渚

じゃあ、行こうかなぁ?

渚の母

そう来なくっちゃ!

渚の叔母

えぇ、楽しみだわぁ

白波 渚

あはは…────

客間

白波 渚

(はぁ、色々あった日だったな…)

──祭りに来てくれるのか?

白波 渚

白波 渚

…神様

白波 渚

うん、そのつもり

神様

……へぇ

白波 渚

…?

神様

そういえば、ここには居ないが

神様

母親はどこに行ったんだ?

白波 渚

あぁ、今お風呂かな?

白波 渚

それに、おばあちゃんも下で洗い物してるから、話してても大丈夫

神様

なるほどな

神様

あ、そうだ

神様

お前は幽霊が視えるんだな!

白波 渚

(今更だね……?!)

白波 渚

うん、何か小さい頃から、夏になると視えるんだ

白波 渚

何でかは分からないけど…

神様

通りで驚かなかった訳だな

白波 渚

…そうだね、もう、慣れたかな

白波 渚

(……気味悪がられるのも、ね…)

神様

なぁ、お前さっき俺になんか言おうとしてただろ?

白波 渚

…っあ!

白波 渚

そうだった…!

白波 渚

えっと…───

白波 渚

何か、私に出来ることないかな……?

神様

そいやー、御礼がどうとか言ってたな

神様

そうだなー…

神様

あ!

白波 渚

神様

お前、16日まで居るんだよな?

白波 渚

…うん

神様

なら──

神様

────俺に、色んな事教えてくれよ

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