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#読み切り
雨宮莉乃(あまみや りの) 小学五年・姉
朝。
莉乃は自分の髪をとかしながら ため息をついていた。
雨宮 莉乃
教室で話す相手はいない。
休み時間は、机に突っ伏して 時間が過ぎるのを待つ。
誰かに話しかけられても
返事はうまくできない。
家にいる時だけ、 “自分の居場所”がある気がした。
凪が泣くのを見ていると、 胸の奥が少し軽くなる。
雨宮 莉乃
雨宮 莉乃
そんな自分に薄く嫌気は差す。
でも――
誰にも見せないでいられるなら それでいい。
鏡の前で、莉乃は表情を整える。
親に見せるための「いい子」の顔。
雨宮 莉乃
誰にも気づかれない。
誰にも責められない。
そう思いながら、家を出た。
雨宮直人(あまみや なおと) 小学三年・兄
直人は、朝ごはんを食べながら
昨日泣いていた凪の顔を 思い出していた。
雨宮 直人
嫌い、というより――
扱いにくい。
凪が泣けば、莉乃がイラつく。
家の空気が悪くなる。
直人は、それが嫌だった。
凪を泣かせるたびに怒られるのは “自分じゃない”から。
だからつい、手が出てしまう。
雨宮 直人
昨夜押した時も、 大した力じゃなかったと思っている。
泣くほどのことじゃない、と。
でも直人は分かっていない。
自分の“普通”が
凪には普通じゃないことを。
食器を片づけると
直人は玄関で靴をはいた。
家では居場所がある気がして
学校では自分が薄くなる 気がして――
どちらが本当の自分か 分からないまま。
雨宮 直人
誰にも聞こえない声でつぶやき
学校へ向かって歩き出した。
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