綾乃
………
一人で帰宅後、綾乃はホシノヨウコの事務所の連絡先が表示されたスマホを握りしめていた…
綾乃
葵があんなに取り乱しちゃうなんて…
綾乃
葵の家族って…そんなにも訳ありなの…?
葵
『あの人、俺のことなんかにあんまり興味ないみたいだからさ』
綾乃
………
綾乃
もしかして葵……傷、ついてたの…?
しばらくスマホの画面を見つめた後、意を決して発信ボタンをタップする
綾乃
(ドキンドキンドキンッ…!)
事務員
お電話ありがとうございます、こちらは「ホシノヨウコ・インターナショナル株式会社」でございます
綾乃
ああああ、あのっ…!
綾乃
すみませんっ、ホシノヨウコさんに…お取り次ぎいただくのって……無理…ですよね…?(←超気弱)
事務員
…ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか
綾乃
ええっと…そ、そのぉ…っ
事務員
取材についてのご依頼でございますか?
綾乃
ち、違いますっ!
事務員
それでは、コレクションに関するお問い合わせでございますか?
綾乃
だ、だから違うって…(イライラ…)
事務員
恐れ入りますが、ただいまホシノ会長は席を外しておりますので、後ほどお掛けなおし下さ───
綾乃
だぁぁっ!あんたは機械かっ!!
綾乃
人間だっていうんなら、人の話をちゃんと聞きながらちゃんと答えなさいっ!!
綾乃
私だって長いことOLやってるけどねぇ!あんたみたいなのっていっちばんお客様をイライラさせちゃう典型なんだからっ!!
綾乃
電話応対は会社の「顔」なのよっ!売り上げにも直接影響するんだから、もう少し人間らしく対応したらどうなの?!
事務員
………
綾乃
……はっ!
綾乃
も、申し訳ございませんん…っ私ったらぁ!(笑)
事務員
い、いえ…(電話応対やってるわりにはめっちゃ口悪いやんあんた…)←実は関西人
綾乃
あ、あの…私、ホシノヨウコさんの…
綾乃
…そう!身内なんですっ!(嘘ってわけじゃないもんね)
綾乃
わ、ワケあって直接連絡が取れないものでして…
事務員
………
事務員
お名前をお伺いしてもよろしいで──
綾乃
桐矢綾乃!!(まだ藤崎だけどね…笑)
綾乃
あの、「桐矢葵」の身内だって伝えてもらえばわかると思いますから!
事務員
あ…!桐矢様ですね!
事務員
承知致しました、お取り次ぎ致しますので、少々お待ち下さいませ
綾乃
え?…あ、はい(あれ?急にすんなり…)
男の声
お待たせ致しました、わたくし、代表取締役社長の…
男の声
桐矢潤と申します
綾乃
(桐矢…潤?)
綾乃
(もしかして…葵のお兄さん…?!)
綾乃
あのっ…突然お電話を差し上げてすみませんっ…!
綾乃
ホシノ…ヨウコさんにお話があるんですけど…
男の声
…申し訳ございません、会長はただいま新作発表会のために国外へ赴いておりまして…
男の声
わたくしが、代理でご用件を承ります
綾乃
そう…ですか…
綾乃
あの、私…会長さんの息子の……葵さんと婚約中の藤崎綾乃と申します
男の声
……葵の…?
綾乃
ええ、それで…お母様であるヨウコ様に、ぜひともご挨拶させていただきたいと思いまして…
男の声
………
綾乃
あの…やっぱり難しいでしょうか…
男の声
…いえ、承知致しました
男の声
藤崎さん…とおっしゃいましたか?
綾乃
は、はいっ
男の声
ちなみに…お住まいはどちらに?
綾乃
えっ…東京〇〇区ですけど…
男の声
…もしよろしければ、後日、会長の別宅にてお待ちいただくのはいかがでしょうか
綾乃
別宅…?
男の声
ええ、会長の本宅は別にあるのですが…お客様をお招きする際などには別宅を使用しているんですよ
男の声
別宅でしたら、藤崎さんのお住まいからさほど距離もないのでご足労されることもないかと…
男の声
もちろん、わたくし自らお迎えにあがりますがいかがなさいま──
綾乃
行きますっ!
綾乃
だって…あの、葵のお兄さん…なんですよねっ?!あなたっ!!(←いきなり興奮)
男の声
…はい、兄の潤です
綾乃
(やっぱり…!)
綾乃
(…すっっごく、会ってみたい!!)
男の声
…弟と一緒に来られますか?
綾乃
あっ……
綾乃
…いえ、私…一人です
綾乃
(葵に話した所で拒否されて、行かせてもらえないのは目に見えてるもんね)
男の声
そうですか……承知致しました
男の声
会長が来られるまでの間、もちろんおもてなしさせていただきますので…
綾乃
ほ、本当ですか?!
男の声
ええ♡それでは、また改めてご連絡致しますのでよろしくお願いします
電話が切れた後も、綾乃は湧き上がる興奮を抑えられずにいた
綾乃
葵の…家族に会えるっ…!
綾乃
ずっと今まで気になって仕方がなかった葵の家族に…っ
綾乃
葵に黙ったまま行っちゃうのは…ちょっと罪悪感はあるけど…
綾乃
先に私がお母さんとお兄さんと話し合って、後からみんなで葵のことを説得してみよう…!
綾乃
そしたら、変なわだかまりみたいなのもなくなって、結婚の話だって前向きに進むかもしれない…
綾乃
やっぱり…私だって、葵の家族から認められたいもん…!
綾乃
……あ
葵
…ただいま