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人魚姫

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人魚姫

1 - 人魚姫

♥

24

2021年02月28日

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私はとある動画の配信者でした

内容はゲームだったり雑談だったり

まぁ、色々です

顔出しはしてませんでしたよ

そんなの、怖いじゃないですか

・・・

今ですか?

今はそうですね、この通りです

何故かって、聞きたいですか

そうですよね

その為のインタビューですから

私の過去については

皆さんは周知の事実のようですし

ああ、あの事もですね

わかりました
お話しましょう

・・・

私はごくごく普通の子供でした

学校が終われば友達と遊び

家に帰れば家族と団欒

朝起きてまた学校へ行く

その繰り返しをしている
普通の子供でした

過去形?そうですね

それは私が小学三年生まででした

・・・

まぁ よくある話です

両親が離婚したんです

まだ子供の私は信じられませんでした

ちょっと前まで幸せな家族だったのに

今思えば、正確には
演技だったのかもしれませんが

それが突然終わりを告げられて

純粋な子供だった私は
理解できませんでした

そんな私の心情なんてお構い無しに

アッサリと離婚は成立しました

理由?

聞いたところで何になるんですか

終わったものは終わったんです

どうしようも無いとはこの事だと

子供ながら悟りましたね

・・・

それから私は塞ぎ込んでしまいました

母とは離婚してから
上手く行かなくなり

母は男の元へ入り浸るようになり

私は家で一人でいることが増えました

それでも

学校の友達さえいれば大丈夫

私はそう考えてました

しかしですね

子供って想像するよりも残酷なんです

分かりますか?

私の両親が離婚した事実は
瞬く間に学校に広まっていきました

私はわざわざ話してませんよ

どこからか 意図的に

無邪気を盾にした純粋な悪意が

私の学校生活も奪っていきました

それからというもの

「皆と違う」私は腫れ物扱いでした

先程も言った通り

離婚なんて珍しいことではありません

私の住んでいた場所は
特別閉鎖的だったのか

「たまたま」大事になったんです

唯の同情なのか好奇心なのか

いずれにせよ

崩れた関係が元に戻ることはありません

学校でも家でも居場所がない

いつしか狭い世界に
引き篭るようになりました

そんな私を

そんな私を救ってくれたのは
あの動画サイトでした

大袈裟に聞こえるかもしれませんが

私の世界を照らしてくれたんです

あの小さな画面の中で

面白可笑しく楽しみを届けてくれる

誰も邪魔する人はいません

ただ見ているだけ

それでも人の話し声や言葉って
聞くだけで結構安心するんです

画面の中の人は私を裏切らない

純粋に楽しみだけを届けてくれる

私は毎日それを拠り所にして

学生生活をなんとか遂げました

腫れ物扱ですか
最後まで治りませんでしたよ

それでもよかったんです

もうあの人達とは違いますから

・・・

前置きが長くなりましたね

私はそんな人生を送る中で

私も誰かに声を届けたいと思うようになりました

声だけは自信があったんです

そう
声だけは

私は醜い子供でした

そうだったと思います

少なくともお世辞にも
可愛い とは言えなかったですね

両親も周りもよく褒めてくれました

声は本当に綺麗だって

だから始めてみたんです

・・・

まぁそこからは
ご存知ですかね

そこそこ上手く行きました

大手とは言えませんが

私を求めて見てくれる人はいました

両親からも友達からも
捨てられた私を

求めてくれる人がこの世界にいたんだ

そう思った時は幸せでしたね

でもそんなの長く続きませんでした

だって 声だけですから

私は私を救ってくれた
憧れの様にはなれなかったんです

いつしか飽きられたコンテンツに

足を運ぶ人は
みるみる減っていきました

そんな時ですね

あの事故が起きたのは

酷い事故でした

横断歩道にトラックが
突っ込んできたんです

私は建物の間に挟まれて

顔を潰してしまった

赤くて

身体が動かなくて

前も見えなくて

寒かった

恐怖に震えているのかも
自分が生きてるかも分からないまま

私は病院に運ばれました

目が覚めたら病院でした

傍には誰もいませんでした

私は激痛に悶える身体を鼓舞させて

真っ先に洗面所に向かいました

そこには顔全体が
包帯で巻かれた自分が立っていました

驚きで声を出そうとして

声が潰れてる・・・って

・・・

私は震えました

そして思ったんです

成功した

って

これで私はもう一度やり直せる

もう一度 憧れを目指せる

そう思いました

ああ、そうです

わざとでした

わざとトラックの前に飛び出しました

一瞬の判断でした

赤信号を無視する
トラックを見つけた時

これだ って

何故かって

さっきも言った通り

私をやり直すためです

私が話したこと覚えてますか

声だけは自慢だったって

唯一自分が誇れるものでした

それが全く役に立たなくなったんです

だから

全部交換しようって

私は顔も声も無くしました

何度も何度も手術をやり直して

私は生まれ変わりました

声はもう、綺麗ではないですが

自分で言うのもなんですが

美しい顔でしょう

・・・

ええ そうです

それがあの報道です

・・・
でもそれの何が悪いのでしょうか

だってもう元の私は存在しません

私は声と過去を犠牲に

新しい自分を手に入れんです

この世界で再び生きていく自分を

全てを失った女が幸せを手に入れる

美しい声を犠牲に
新しい人生を手に入れる

美しい顔に隠された秘密

本当の私

全部、世間が好むような

素晴らしい感動的なストーリーだと
思いませんか?

だってあなた達も

私の秘密を今日聞きに来たんですから

あれから私は

顔を隠す必要も無くなりました

だって今の私は美しいですから

事件の内容を話せば
同情した視聴者は集まりました

そして私を高みに導いてくれました

そうして今があるのです

・・・

どうでしたか?

これが私の全てです

嘘は無いですよ

作り話だと思うならそれで結構です

でも私は自分を犠牲にして
私の人生を手に入れたんです

・・・

今ですか?

とても幸せです

死んでもいいくらいには

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