短編

今まで1度も

生きてて良かったなんて

思えなかった

何回も何回も何回も

否定される言葉を吐かれて

それに対して

薄っぺらい｢ごめんね｣だけが帰ってくる

そんな、人生だった

……本当は、きっとそんな人生でも

良かったのかもしれない

それが、平穏だと理解出来れいれば

それはきっと、幸せだった

でも、無理だった

分かり合えない人間の1人や2人

居たところで何も変わらない

だったら、消えてしまっても

多分、同じだ

そう思った頃にはもう遅くて

父親を刺して、立ち尽くした

こいつのせいで、お母さんが死んだのに

こいつが、笑って生きてるのなんて

許せない

お母さんは帰ってこないのに

その鬱憤を、私に投げないで

……もう、疲れた

お母さん、ごめんなさい

あの世で自慢できる娘でありたかった

……でも、ありがとう

お母さん

私に、復讐をさせてくれて

私を、産んでくれて

……ありがとう

お母さんの、娘で良かった

……お母さんは

こんな親殺しの娘、要らないかな

……ごめん、ありがとう

心の中で繰り返して

気がつけば仏壇の前にいた

｢……ごめんね、お母さん｣

｢産んでくれて、ありがとう｣

｢私、お母さんの娘で幸せだよ｣

｢……お母さんは、こんな娘要らないかな？｣

｢誇れない娘で、ごめんね｣

顔を上げて、仏壇に背を向けた

きっともう、ここには帰って来れない

｢最後の言葉が、懺悔でごめんね｣

いいよ。胸を張りなさい。自慢の娘よ

……そう、聞こえた気がして

お母さんの声が、聞こえた気がして

振り返った

……でも、そこには微笑んでいるお母さんの写真しか無かった

……そんなこと、言ってくれたら

それはなんて、いい夢だ

行ってきます、お母さん

もし、私がそっちに行ったら

……あわよくば、褒めてくれないかな

えぇ、もちろん

強く生きなさい

例えこの世界の全てが貴女の敵になったとしても

私だけは、貴女の味方でいましょう

胸を張りなさい

私の、自慢の娘だよ

好きなように、生きなさい

人生を、謳歌して

そしたら、それほど嬉しいことなんて無いわ

そんなに早くこっちに来るんじゃないよ？

……でも、もし苦しくなったら

……いつでも、逃げていいよ

その時は、受け止めるから

ちゃんと、胸を張れる人生を歩みなさい

…それで、こっちに来たら

たくさん、お話を聞かせてね