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呪讐の館

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呪讐の館

7 - 呪讐の館 最終話

2022年04月17日

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冬原さんは気が触れたように ケタケタと笑い声をあげた

美夜

あんたら、ほんと馬鹿だよねぇ

美夜

バレてないとでも思ってたの?

瑠衣

えっ、ち、ちが

瑠衣

ねぇ、ホント違うから

美夜

黙れ、人殺し!

美夜

言っとくけど、知ってるのは私たちだけじゃないよ?

美夜

決定的証拠がないから泳がされてるだけで、捕まるのは時間の問題だから。

瑠衣

ハアァ!?

瑠衣

ウ、ウソっ!?

美夜

本当だよ。

美夜

呪いをかけ切る前にあんた達が捕まるんじゃないかって不安だったから、こんなものまで仕込んでたけど……

美夜

間に合ってよかった。

美夜

じゃーん、盗聴器。

彼女はそう言って、床板の隙間から 小さな機械を取り出した。

美夜

私、この家の所有者だからね。

美夜

現場検証の後につけておいたの。

美夜

お陰で警察の捜査方針と進捗もある程度把握できた。

美夜

ここが無人になる時間もね

瑠衣

じゃあ、本当に……

私は、目の前が真っ暗になった

美夜

復讐なんてしなくても、あんたらの人生が終わりだってことは分かってた。

美夜

バレないようにお互い監視し合って

美夜

必死に取り繕ってるあんた達は滑稽だったよ。

美夜

1人でも吐かせれば芋づる式に全部分かるだろうって刑事さんもいってたし、

美夜

証拠が見つかるのも時間の問題だった……

冬原さんの嘲笑がやけに遠く感じる。 現実感がまるでないのだ。

瑠衣

(これは、夢……)

瑠衣

(悪い、ゆめ…………)

美夜

またお得意の現実逃避?

美夜

ちひろちゃんを殺した次の日もそんな風に泣いてたよね。

瑠衣

(私、泣いてるの……?)

美夜

……気持ち悪い女。

瑠衣

……な、んで

酸素が無くなったように息苦しい。 呼吸が上手くできないのだ。

瑠衣

なん、で呪いなんて……

美夜

どうせ捕まるのが分かってたのに何で呪殺なんてしたのかって?

美夜

納得いかなかったから。

美夜

ちひろちゃんは何も悪いことしてないのに人生全部奪われて

美夜

未成年のあんたらはせいぜい数年刑罰を受けるだけ。

瑠衣

……し、知り合って、3ヶ月の友達のためにそ、そこまでするんだね

瑠衣

冬原さんって、やさしい、ね

瑠衣

は、ははは、はは

私は泣きながら 乾いた笑い声を上げた。

冬原さんは、その時初めて苦しげな顔を見せた。

美夜

……私のせいだから。

美夜

私が、復讐しようって言い出さなければ良かった。

美夜

ちひろちゃんがいじめを受けてるって聞いた時に

美夜

やり返そうなんて言わなければ

美夜

ちひろちゃんが殺されることも……

瑠衣

……ああ、あれか

瑠衣

冬原さんが入れ知恵したんだね。

瑠衣

あははっ

瑠衣

それで私たち、こんなことになってるんだね

冬原さんは私達を嘲る笑みを口元に残したまま、悲しみを堪えるように顔を両手で覆った。

美夜

こっちにきて最初にできた友達があんたら4人に陰でいじめられてるって知って

美夜

徹底的にやり返そうって言った。

美夜

証拠を残して、弁護士を雇って

美夜

全員の進学が決まるタイミングで訴訟してやろうって。

美夜

努力したことも全部台無しにしてやればいいって、自業自得だって

美夜

そしたらちひろちゃん、今は耐えて証拠を集めるって言って……

美夜

…………

美夜

もっと早く潰しておけばよかった!!

美夜

1番ダメージを与えられる時期を待ってる間に、加賀綾奈にバレるなんて……

美夜

……そして、殺されるなんて。

私を見据える彼女の目は、 激しい怒りを宿していた。

それは、2週間前のことだった

あーやな

ねぇ、ヤバいよ

あーやな

ちひろの奴、証拠集めてた

あーやな

しかも、弁護士事務所に出入りしてるの見たって後輩が言ってる

まりぃか

は?

ななみん

証拠って?

ななみん

いじめられてましたーとか言うの?

ななみん

あいつが?

まりぃか

マジでありえないんですけど

ルイ

弁護士事務所ってどういうこと?

ルイ

裁判とかする気ってこと?

あーやな

結構よくあるみたいなんだよね

あーやな

相手の就職とか決まったタイミングで訴訟起こして、人生メチャクチャにするの。

あーやな

最悪じゃない?

まりぃか

うざっ

ななみん

そういうのマジで困る

ななみん

この期に及んで推薦取り消しとかになったら親に殺されるって

まりぃか

てか、あの程度でいじめとか大袈裟すぎない?

まりぃか

金目当て?嫌がらせ?

ルイ

どうしよう、慰謝料とか払えば親や学校にバレずにすむ?

あーやな

今ネットで調べたら、いじめの慰謝料って最低100万とからしいよ?

あーやな

瑠衣1人で払えんの?

ルイ

ごめん、無理……

まりぃか

デスヨネー

ななみん

弁護士巻き込んでるなら、この4人だけでなんとかするのは無理でしょ

ななみん

あー、あの女マジで最悪

ななみん

死んでくれないかなぁ

まりぃか

ほんとそれ

まりぃか

自殺とかしないかな

あーやな

裁判の準備なんてしてるくらいだし、自殺はしないでしょ

あーやな

ありうるとしたら、事故死とか?

ルイ

え?

あーやな

いやだからさぁ

あーやな

あいつが事故死してくれたら、問題一気に解決するじゃん

ななみん

そうだね

まりぃか

だねー

あーやな

私の言いたいこと、分かるでしょ?

ルイ

え、それって

ルイ

それって、つまり……

ルイ

事故に見せかけて…‥

綾奈

じゃあ、打ち合わせ通りね

瑠衣

……うん。

綾奈

肝試しってことであの廃墟に誘き寄せる

綾奈

その時に上手くスマホをパクって、証拠のデータを消しといてね

茉莉花

りょーかい。

奈々美

それで、スマホがないのを指摘してちひろが戻るよう仕向ければ良いんだよね?

綾奈

そうそう。で、一旦解散したフリで瑠衣の家に集合。

綾奈

家にいるふりをしてアリバイつくって、瑠衣の親にバレないように抜け出すよ。

茉莉花

……私たちは肝試しに行った後、瑠衣の家に集まってから帰った。

茉莉花

ちひろは1人で忘れ物を取りに行って、事故死した。

茉莉花

そういうことだよね?

奈々美

そうだね。

奈々美

明日私たちは、大切な友達を亡くしたばっかりってふりをしなきゃいけない

奈々美

瑠衣、できるよね?

瑠衣

う、うん

瑠衣

頑張る、頑張るよ……

綾奈

分かってると思うけど

綾奈

4人全員が共犯だからね?

綾奈

下手にビビって余計なこと言ったりしたらどうなるか……

綾奈

忘れんなよ?

瑠衣

わ、わかってる。

茉莉花

やらなきゃこっちの人生が終わるからね。

茉莉花

いわば正当防衛だよ。

奈々美

証拠さえ残さなきゃ絶対大丈夫だから。

奈々美

アリバイも、ちゃんと打ち合わせて全員できっちり口裏合わせよう。

綾奈

……じゃあ、そういうことで。

綾奈

9時に廃墟で集合ね。

そうやって、私たちはちひろを 殺した。

美夜

あの日の夜、私は嫌な予感がしてちひろちゃんに電話をかけた。

美夜

電話に出たちひろちゃんの声は、明らかに普通じゃなかった。

美夜

かつてここで私が死にかけた時のような、嫌な音が聞こえた。

美夜

それと、笑い声。

美夜

何が起きてたのかすぐに分かったよ。

美夜

駆けつけようにも手遅れだった。

美夜

けどね、ちひろちゃんの最後の言葉で、あんた達4人の名前を聞いたんだ。

美夜

ああいうの、ダイイングメッセージっていうのかな?

美夜

おかげで躊躇わずに済んだよ。

美夜

まぁ、それがなくても、日頃の行いと態度でバレバレだったし

美夜

笑っちゃうくらい浅はかな計画だったよね。ほんっと馬鹿だなぁ

美夜

理不尽だよね。クズで馬鹿なあんたらが学校では中心人物って顔してて

美夜

ちひろちゃんみたいな良い子が傷付けられて蔑まれて何もかも奪われて

美夜

そう思わない?

美夜

ねえ!!!!!

耳元で怒鳴られて身体がすくんだ。

誰かから全力の怒りや、憎悪や、殺意を向けられたのは生まれて初めてだった。

瑠衣

ごめっ

瑠衣

ごめん、なさい……

瑠衣

ぐすっ

美夜

…………

冬原さんは凍てつく目で私を見下ろしている。

瑠衣

おねっ、がい……殺さないでぇ

瑠衣

し、死にたくないの

美夜

…………

瑠衣

私のことも、呪ったの?

瑠衣

私も、み、みんなみたいに死ぬの?

瑠衣

私ね、本当はあんな事したくなかった

瑠衣

あ、綾奈が怖くて

瑠衣

わたしが殺されるかもって

美夜

…………

瑠衣

で、でも、殺したのは私じゃない

瑠衣

殴ったのは綾奈だから

美夜

……知ってる。

美夜

…………だから?

瑠衣

ごめんなさい

瑠衣

許して、ください……

私は床に膝をつき、額を擦り付けて土下座した。

瑠衣

死にたくない、死にたくない………

美夜

…………

美夜

……おかしいと思わない?

瑠衣

……え?

美夜

何で私がわざわざ呪いのシステムを明かしたと思う?

美夜

てか、さっき話したルールに則れば、あんたの呪いはもう発動してるはずだよね。

美夜

何ともないでしょ?

瑠衣

あ、あれ?

瑠衣

そういえば……

美夜

呪われてないのよ、あんただけ

瑠衣

!?

美夜

足りなかったの。呪詛の詠唱回数が。

美夜

呪詛は呪いたい人数分だけ唱えきらなきゃいけないんだけど、

美夜

ちひろちゃんのお母さんは4回目の途中で力尽きちゃったの。

美夜

だから、この家の呪いは3人までしか殺せない。

美夜

あんたら4人の内、誰か1人は見逃す必要があったってこと。

瑠衣

それが、私だったの……?

瑠衣

でも、どうして?

美夜

……別に。

美夜

実行犯で主犯格の加賀綾奈には、1番長く苦しんで死ぬ「おばあちゃんの呪い」をかけるとして、

美夜

他は適当に決めようと思ってた。

美夜

それだけ。

瑠衣

偶然、ってこと……?

美夜

あとは、まあ気になることもあったし……

瑠衣

な、何?

美夜

あんたとちひろちゃんってさ

美夜

昔、友達だったの?

瑠衣

!!

私は無意識のうちに、鞄につけていたパンダのマスコットを握りしめていた。

美夜

それ、ちひろちゃんとお揃いで買ったって本当?

瑠衣

そ、そう、だよ…………

瑠衣

私たち、元々友達で……

瑠衣

でも、綾奈達のグループに入ってからどんどんおかしくなっていって……

瑠衣

ごめんなさい

瑠衣

仲間外れが怖くて、逆らえなくて

瑠衣

酷い裏切りだったと思う……

瑠衣

本当に、最低だった……

美夜

…………

美夜

……もういいよ。

冬原さんは呆れたような顔でため息をついた。

美夜

相手にしてられないわ、馬鹿馬鹿しい

美夜

あんたを呪うには私が死ななきゃいけないけど、そこまでする気にはなれないし。

美夜

……わざわざ殺してやる価値もない。

気づけば、ひび割れた窓から朝日が差し込んでいた。

夜が明けたのだ。

瑠衣

(綺麗……)

瑠衣

(こんな恐ろしい場所にも、朝は来るんだ……)

私は安堵感を覚え、泣きたくなるような気持ちで空を見上げていた。

美夜

…………

冬原さんはただ虚空を見つめていた。

美夜

ちひろちゃん………

瑠衣

あ、あの

瑠衣

私、自首します!

瑠衣

今までしてきたことも含めて全部打ち明けて、

瑠衣

みんなの分まで、罪を償います!

美夜

………………ハァ……

美夜

どーでもいいよ、マジで

彼女は疲れ切った顔で深くため息をついた。

美夜

……私が手を汚す価値もないよね

美夜

こんな臆病で、弱虫で、

美夜

どうしようもない

美夜

最っ低の嘘つき女。

瑠衣

う、嘘つき女?

瑠衣

何のこと?

美夜

しかも、泥棒だもんね?

美夜

救いようがないなぁ

そう言って、白い手が私の鞄を指差した。

美夜

そのマスコットさ、誕生日プレゼントなんだよ

美夜

私が!

美夜

ちひろちゃんに!!

美夜

あーげーたーのっ!!!!

美夜

ほんっっと、馬鹿でクズだよねぇ

美夜

人のものを無理矢理奪っといて

美夜

「お揃いで買った」とかさ

瑠衣

ちっ、違

瑠衣

これは偶然、

瑠衣

そう、偶然なの。偶然、同じのを買ったの

瑠衣

ちひろもこういうの好きだったでしょ?

美夜

「こういうのよく知らないんだよね」

美夜

「あんまり興味なかったから」

美夜

「でも、プレゼントしてくれて嬉しい」

美夜

「大事にする」

美夜

って言ってくれた翌日だったかな?

美夜

あんたに無理矢理取り上げられて、ちひろちゃん泣いてたけど?

瑠衣

そ、それは……

美夜

あははっ

美夜

まあいいや。

美夜

嘘つきはお互い様ってことで!

妙に明るい笑い声が耳障りだった。

瑠衣

えっ

瑠衣

お互い様って?

瑠衣

さっきの話、嘘だったの?

瑠衣

私だけは呪われないって、言ったよね?

美夜

安心して?あんたには嘘ついてないから。

美夜

あんたにはね。

瑠衣

ど、どういうこと……?

震える声で問いかけると、 赤い唇は不気味な弧を描いた。

美夜

言ったでしょ?加賀綾奈には1番長く苦しんで死ぬ呪いをかけたって。

美夜

あの3人にかけたのは、この家で死んだ人間と同じ死に方をする呪い。

美夜

おばあちゃんは、井戸の中で苦しみながら3日目に死んだ。

美夜

だからね、あいつまだ生きてるの。

美夜

それで、メールでちゃんと教えてあげたんだ。

美夜

どうやったら呪いが解けるかって。まあ嘘なんだけど。

瑠衣

な、何……なんなの…………

美夜

あんたを殺せば呪いは解けるって伝えといたよ♡

瑠衣

は、はぁ!?

美夜

じゃあね。

美夜

ちゃんと刑務所に行きなよ?

美夜

ここから生きて出られたらね!!

去っていく背中を追おうとして立ち上がった時だった。

ガッ!!

不意に、後頭部に激痛が走った。

綾奈

…………ハアッ、ハァ、ハァッ……

綾奈

ご、ごれで、わだじ……

綾奈

だ、ずかる………

綾奈

アッハハッハハハハッ

綾奈

死ねっ死ねぇッ!!

綾奈は鈍器を振りかぶり、私の頭に何度も何度も振り下ろした。

綾奈

ギャハハハハハハハッッ!!!

薄れゆく意識の中、 私が最後に見たものは

笑いながら走り去ってゆく、 血まみれの少女の後姿だった……

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