TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

入店後

少女は最初に皿に取ったケーキを見つめたまま、食べようともしていない。

久留間悟

どう? 彼女

久留間悟

俺はねー、すげーよー

久留間悟

見て見て渋の字

久留間悟

こんなに取って来ちゃったよー

渋谷大

……お前さぁ

渋谷大

なんでケーキ屋に来ると見境ないんだよ

渋谷大

ホールケーキの半分ごっそりじゃねぇか

渋谷大

ガッツリ取りすぎだよ

渋谷大

なんでもっといろんな種類のを取らないんだよ

渋谷大

他のお客さんが困るだろ

久留間悟

お前に言われたくなーい

久留間悟

お前なんて全種類集めてきたと思ったら、秒でかきこんでヘビロテじゃん

久留間悟

それに大丈夫だって

久留間悟

俺たちが来たのを見た途端、店員さん、必死の顔して厨房走ってったから

渋谷大

……え、俺もヤバい奴扱い?

渋谷大

それ、近日中に出禁食らわね?

渋谷大

ガチめにカロリー摂取の危機に貧してないか?

久留間悟

え、そっかな

久留間悟

今回ちょっとお手柔らかにする?

久留間悟

そんなことになったら俺マジ死んじゃうんだけど

青ざめる久留間に真面目にうなずきを返しつつ、渋谷の目が再び少女を注視する。

少女は周囲に怯えた視線を向けていた。

渋谷大

あの子、結構ヤバいな

渋谷大

周囲の奴らのことも見えてるらしい

渋谷大

小さい声だけど、会話もしてるっぽい

渋谷大

どう見ても憑きまとわれてるな

渋谷大

常識じゃ理解できない状況にビビりつつ、アレらに流されてる感じだ

久留間悟

うん、ちょーっとマズいね

久留間悟

あのテのに流されるのは良くない

久留間悟

軽く行っとくかー

久留間悟

突然ごめんよーお嬢さん

久留間悟

大丈夫? 気分悪そうだね?

……え?

久留間悟

あ、ごめんねー、ナンパじゃなくってね

久留間悟

顔色悪いから、ちょっと心配でさー

渋谷大

(……いや、どう贔屓目に見てもナンパだろ)

渋谷大

(あいつインドアでオタクのクセに、なんであんなにチャラいんだ)

渋谷大

(……でもまぁ、ただのナンパならよくあることだし)

渋谷大

(客の興味もひかなくてすむから、楽は楽か)

渋谷大

(あとは)

久留間の隣に、渋谷が無理やりに割り込む。

それは少女に憑きまとう、複数の霊を押しのけていた。

渋谷大

(小声)お前ら、こんなとこで群れられると迷惑なんだよ

渋谷大

(小声)ほか当たれ

小さく、はっきりと言い放つ。

少女は驚愕した表情で渋谷を見た。

私に……じゃ、ない?

もしかして、みんな……

霊1

――なにコイツ

霊2

――今あたしら、押された……よね?

鳥肌の立つような、密やかなざわめきが空気を揺らす。

渋谷大

(小声)ケーキバイキングは一人1500円

渋谷大

(小声)払ってないなら出て行けよ

渋谷大

(小声)ここの店は、テーブルで一括の参加だ

渋谷大

(小声)この子と同席したいんなら、ちゃんと料金払うんだな

霊3

――ッ、ンだよオッサン! ウゼぇよ!!

霊2

――行こ、もう!

霊4

――ケチついちゃったし、どっか遊びに行こう!

霊1

――じゃあね友理奈、また明日ね!

よどんだ空気が、ぞるりと外へ過ぎ去っていく。

それをため息ひとつで見送り、しっしと手で払った。

渋谷大

……女の子なのに口が悪いったらねぇなぁ

久留間悟

ごめんねぇビックリさせちゃって

久留間悟

あ、ちょっと顔色戻った?

渋谷大

急に悪いね、さすがに見過ごせなかったもんだから

渋谷大

ちょっと話を聞かせてもらいたいんだけど、いいかな?

あの、えぇと

話をするのは構いませんけど

お兄さん達、いったい

久留間悟

んんー、それ聞かれちゃうと難しいんだけどねー

渋谷大

カタヅケ屋ってんだ

カタヅケ屋?

お掃除やさんですか?

渋谷大

あー、いや

久留間悟

神仏心霊、妖魅に関する事件をカタヅケる人

久留間悟

分かりやすく言うと、お祓いかな

お祓い……

渋谷大

胡散臭いだろうけどね

渋谷大

さっき君にくっ憑いてるのを追っ払ったってことで

渋谷大

それなりの力がある点は、信用してくれるとありがたいんだけど……

はい、それは充分、その

そういった人なんだってことは、分かりました

だけどなにを話せば……?

渋谷大

とりあえず、さっきの連中のこと

久留間悟

見えて、話して、名前で呼ばれてたよね

久留間悟

あの子達からはよくない気配しかしないから、ちょっと情報仕入れておきたくて

渋谷大

なんでもいいんだ、食べながら話そう

渋谷大

俺もなんか取ってくるから、キミも少し食べて

渋谷大

あ、ついでに席移るって、店員さんに言ってくるわ

久留間悟

そうそう、カタッ苦しい話もケーキがあれば空気一変!

久留間悟

あー! 大事件!

久留間悟

渋の字ー! フォーク忘れたー!

久留間悟

あとコーラも持ってきてー!!

渋谷大

るっせぇ馬鹿! 大声出すな!!

久留間悟

まずは名前から聞いとこうか

久留間悟

ゆりなちゃん? ゆりあちゃん?

スピードを緩めることなくケーキを食べ続ける久留間を前に、少女は気後れした様子で口を開く。

崎本友理奈

友理奈です。崎本 友理奈

崎本友理奈

まさかみんなが見えるだけじゃなくて、触れる人がいるなんて

崎本友理奈

驚きました

渋谷大

そりゃ、そうそういないだろうしなぁ

片や渋谷は、皿の上に積み上げたケーキの山をするすると飲み込んでいく。

店員が慌ただしく新しいケーキを品出ししているのに気づかず、二人はにこやかに笑んだ。

渋谷大

俺は渋谷 大

久留間悟

俺は久留間 悟ー

久留間悟

よろしくね

久留間悟

それにしても、みんな、かぁ

久留間悟

友理奈ちゃん

久留間悟

単刀直入に聞くけど、アレって友達?

崎本友理奈

友達……

崎本友理奈

友達、だったんでしょうか

久留間悟

うん?

渋谷大

歯切れが悪いな

渋谷大

でも確かに、あの子らと友理奈ちゃんじゃ雰囲気が違うよな

渋谷大

あいつら、周りの人間をみーんな馬鹿だと思ってるタイプだろ?

久留間悟

遅れてきた中二病って感じかー

久留間悟

あれって遅れれば遅れるほどこじらせるらしいからねー

久留間悟

中二病は早めにかかるに限るよ、ホント

渋谷大

……お前、当たり前みたいに言ってるけどな。なんだその中二病って

渋谷大

そんなヤバい病気?

崎本友理奈

そうです

渋谷大

うん?

久留間悟

んん?

突然の肯定に、揃って首を傾ぐ。

崎本友理奈

あの、彼女たち。まさに、その……中二病、だったんです

恥ずかしそうに肩身を狭める友理奈に、二人は顔を見合わせる。

それが意味するところがなんなのか、まだ見当をつけられずにいた。

カタヅケ屋霊異記【完結】

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

2,730

コメント

19

ユーザー
ユーザー

ううん……久留間くん好きぃ…()

ユーザー

みんなが言ってる通り久留間くん好きなんだが(((((

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚